あなたのクローゼットの中身はいくら? 広がるリユースの可能性【中編】

  • 上場企業の社長に聞く! 夢とお金の本質・SOU 嵜本晋輔社長 / 嵜本 晋輔

ブランド品の買取専門店「なんぼや」を展開するSOUが、2018年3月、東証マザーズに上場した。2011年の創業から、わずか6年のスピード成長だ。率いるのは、Jリーガーからビジネス界に転身した、嵜本晋輔(さきもと しんすけ)社長。リユース業界の革命児として注目される、36歳の嵜本社長が目指すものとは。
ブランド買取をもっとポジティブに。「なんぼや」が目指すWin-Winの道【前編】

価格を決めるのは、顧客自身

前回は、当社がリユース(中古)業界に、「接客スキル」を取り入れたお話をしました。業界では長らく、「店側が上、顧客が下」という理不尽な接客がはびこっていました。しかし、それではお客様に満足いただけないし、こちらも楽しくない。そう思って、お客様をしっかりおもてなしするブランド買取専門店「なんぼや」を作ったのです。

通常のブランド買取では、お客様がお持ちになった品物に対し、元の値段、ブランドの人気度、購入からの年数、汚れや傷の状態などから価格を査定します。次に売ることを念頭に置いて、鑑定士がスペックを見極めるのが一般的です。

しかし、「なんぼや」では、品物のスペックだけを見た値付けは行いません。「コンシェルジュ」と呼ぶ鑑定士にはいつも、「お客様の品物との出会いから、別れまでのストーリーも伺った上で値段をつけなさい」と言っています。

店頭で接客をするコンシェルジュ

例えば、お客様が社会人1年目からコツコツとお金を貯めて買った、10万円の時計をお持ちになったとします。事情があって手放すことにしたけれど、愛着がある時計なので、「7万円くらいの価値はあるだろう」と考えています。

一方、好きでもない異性からもらった、10万円のジュエリーをお持ちになったお客様がいたとします。この方は、「2〜3万円でも、お金になるならラッキー」と思っています。この両者では、同じ10万円の品物といっても、思い入れが全然違います。

大切な品物であれば、その価値を認め、高く買ってもらいたいと思うのが人情です。逆に、大して思い入れがない品物なら、多少安くても値段がついただけで感謝するでしょう。極端な例ではありますが、この両者それぞれが納得する金額は異なります。お客様との会話を通してその想いを汲み取り、金額を提示するようにしています。

こういうやり方に対して、「足元を見ている」というご批判もありますが、私はそんな風には思いません。まだまだ足りないところはありますが、お客様と品物のストーリーを重視するという考え方は、間違っていないはず。コンシェルジュにも、そういう風に伝えています。

結局、ブランド品買取において、どの価格で納得するかを決めるのは、お客様ご自身なのです。コンシェルジュの仕事は、それを手助けすること。お客様とお話し、品物に対する思い入れを引き出し、どこで納得いただけるかの落とし所を探る。コンシェルジュがコミュニケーション・スキルを高めるのは、そのためです。

「なんぼや」の値付けは、マニュアルではなく、コンシェルジュ個人の力にかかっているのです。

日本一の「売買データベース」が強み

「なんぼや」の特徴は接客スキルの高さですが、それだけでは勝てません。どんなにリアルのサービスを充実させても、デジタルの力がないと結果を出せないのが、いまの時代です。2007年に「なんぼや」1号店を出したころから、私はITに力を入れてきました。業界全体がIT化に乗り遅れているのを見て、あえて差別化しようと考えたのです。

ITを使った強みとして、まず「集客」があります。お客様がブランド品を売りたいと思い、ネットで検索したときに、上位に当社が出てくることが大事。そのためのSEO対策などを早い段階から意識し、ノウハウを蓄積してきました。おかげで、いまはネット上の陣取り合戦で、かなり優位に戦えています。

また、買取や販売についてのデータベースを独自に持っていることも、大きな強みです。当社は買取品を販売する手段として、2013年から「STAR BUYERS AUCTION(スターバイヤーズオークション)」を開催しています。一般消費者ではなく同業者を対象にした、いわゆるBtoBの事業です。

リユース業界では、買い取った品物を一般向け(BtoC)に売り出すのが通常ですが、当社の販売先はあくまでもBtoBが中心。一般顧客に売るより価格は落ちますが、いつ売れるかわからない在庫を抱えるよりも、オークションで利益を確定させ、そこで得られたキャッシュを新たな投資に向けていく方が効率的だと思うからです。

このオークションを始めてから、4年以上。その間にストックし続けた売買データが、日本でもトップクラスのブランド品売買のデータベースに育ちました。ふだんはこのデータをコンシェルジュが参照し、価格交渉の参考にしています。実績をもとにしたデータですから、信憑性が高く、非常に役立つのです。

さらに一歩進んで、このデータベースを活用できる方法を考えました。2017年10月にリリースした、新サービス「miney(マイニー)」です。

クローゼットの中身は「モノ」でなく「資産」

マイニーは、お客様がお持ちのバッグや時計などの資産価値を「見える化」するアプリです。クローゼットにある品物をスマホで撮影するだけで、参考価格がわかる。そのまま登録しておけば、価格の推移もはっきりと見えます。

問題は、その資産価値が日々減っていくこと。株と違って、ブランド品の大半は、時間とともに価格が落ち続けます。世界中のあらゆるブランドが毎シーズン新たなモデルを出すのですから、トレンドが過ぎたものは、安くなるのは当然ですよね。銀行口座に例えると、預金が日々目減りしていくという状況が、クローゼットの中で起きているのです。

マイニーのサービス画面

この状況を知った途端に、お客様の意識が変わります。クローゼットの中身を単なる「モノ」ではなく「資産」と認識するようになる。日々の変動を観察して、「いつ売買するのが得か」と、考え始めるようになります。

ブランド品の新品の市場規模は年間2兆円を超えますが、リユースになると、2400億円前後に留まっていると推計されています。日常的に使っているブランド品は市場に出回らないとしても、家庭のクローゼットに眠っているブランド品は相当な量になります。私たちリユースの業者からすると、これは新規顧客開拓の大きなビジネスチャンスです。

「買取店に売ろう」と行動を起こす人に対しては、SEO対策などできっかけを作れます。しかし、クローゼットに品物を眠らせているだけの人に対しては、これまでアプローチする機会がなかなかありませんでした。マイニーは、こうした人たちに働きかけるきっかけを作るアプリです。

さらに、マイニーを使ってお客様のクローゼット状況を当社が把握することで、私たちもそれに合わせたさまざまなアクションを起こせます。こうした情報を使って、他の分野に進出できる可能性もあるでしょう。そういう意味で、マイニーは無限の可能性を秘めたサービスだと思っています。

「なんぼや」はおかげさまで、1号店の出店からわずか10年あまりで、姉妹店等を含めて63店舗となり、SOUも中古ブランド買取で業界2位に成長しました。しかし、これは序章に過ぎません。

これからも次々と新しいサービスを作り、改善しながら結果を出していく。それらの点と点をつなげて、より大きなビジネスモデルを描き、社会にインパクトを与えたい。現状のブランド買取・販売の事業で満足し、立ち止まる気はまったくありません。