3代続く投資のDNAで資産5億円・かんちさんインタビュー【前編】

  • リアル投資家列伝・優待・高配当・成長株で資産5億円 / かんち

今回ご紹介するのは三重県在住の専業投資家・かんちさんです。その資産は驚きの5億円! いったいどんな猛者があらわれるのかと身構えていると、登場したのは穏やかそうな紳士。でも話をよくよく聞いていくと、落ち着き払った物腰とは対局の勝負師的な一面も持ち合わせていました。投資歴30年のベテランが明かしてくれた体験的投資論、ぜひ耳を傾けて!

紙切れになった満州鉄道株

「私はね、“満鉄株”を持っていたんだよ。紙くずになっちゃったけどね」

祖母からそんな話を聞かされて育った専業投資家が、かんちさんだ。南満州鉄道が上場したのは1920年。上場した市場は「大連株式商品取引所」だったという。

「祖母が聞かせてくれる昔話はおもしろかったですよ。それに、うちのオヤジも株をやっていたんです。繊維会社や電力会社、今でいうオールドエコノミー関連の株を多く買っていたようです。儲かった? そんな話は聞いたことがない。損してたんでしょうね(笑)」

かんち家のファミリーヒストリーを語る上で、株は欠かせない存在のようだ。

「新聞が届くと、家族の誰もが真っ先に目を通すのは株価欄――そんな家族でした」

だから、社会人となったかんちさんが株を始めたのも自然の成り行きだった。

「ところが証券会社に口座をつくりにいくと、僕の口座がもうあるという。親が勝手に僕の名義で口座をつくっていたんです(笑)」

不動産バブル崩壊で投資のなんたるかを知る

「おまえの給料で買える株なんて鉄鋼株くらいだよ」。父のアドバイスにしたがって、かんちさんは製鉄会社の株を買った。時代は不動産バブルのピークを迎えようとしていたころだ。

1985年のプラザ合意で円高が急進し、鉄鋼産業は冬の時代を迎え、株価は軒並み低迷していた。

「新日鉄や住友金属、川崎製鉄など全部で5社、それぞれ1000株ほどずつ、合計5000株買いました。それでも合わせて50万円程度でしたかね。安かったです」

これ以降、かんちさんは給料が入るたびに銘柄を増やしていく。

「不動産バブルのピークへ向けて株価は上昇していきました。5倍くらいで売れた株もありましたが、バブルが崩壊して損も出して――結局、資産はほとんど増えていません。でも、バブルを経験したおかげで『株ってこういうものか』と理解できました」

夫唱婦随の喫茶店で元金を増やす

かんちさんが次にめざしたのは「元手を増やすこと」だった。

「株式投資ではタネ銭が多いほうが有利です。しかし、タネ銭を増やそうにも、ひとりで稼ぐだけでは時間がかかる。そこで嫁さんに喫茶店をやらせてみようと。自分だけが働いても1馬力ですが夫婦ふたりなら2馬力。それだけ早くタネ銭が稼げると思ったんです」

出店したのは開店したばかりのショッピングセンター内。休日ともなれば多くの人でにぎわう好立地ということもあって、喫茶店は繁盛した。

「あまりに忙しくてお金を使う時間がない。お金は加速度的にたまりましたが、でも、そのころは不動産バブル崩壊の余波で地合いも悪かった。買っては下がりの繰り返しです。もう、ほかって(ほうったらかして)おこうと」

あまりに多忙な生活となったため5年で喫茶店を閉じ、株式投資も小休止状態だったとき、ある銀行株が目を引いた。

「当時、銀行株は不人気で株価が低迷していました。でも、株価に違和感があったんです。『どう考えても安すぎる、さすがに潰れることはないだろうに』と考えて、80円くらいで買った銀行株がありました」

この銀行株は500円へと値上がりし、大きな利益をもたらしてくれた。「人の行く裏に道あり花の山」――この格言を地で行く投資だった。

5年に1度のチャンスをつかめるか

「5年、10年と相場を見ていると、どう考えても安すぎるだろうという銘柄が見つかります。あとは、臆せずに買えるかどうか。それができれば資産を大きく増やせます」

5~10年に1回のチャンス――かんちさんに次の大きなチャンスが訪れたのは、銀行株での成功から10年後のことだった。

「リーマン・ショック直後のことです。『ニューシティ・レジデンス』というJ-REIT銘柄の上場廃止が決まった。理由を調べてみると、金融不安により資金調達が困難になったことが原因でした。決して、事業が立ち行かなくなっているわけではない。資産である不動産が残っているのなら再生は可能だろうと考えて、上場廃止の(前営業)日に購入しました」

所有する物件からの家賃収入や売買益を投資家に分配するのがJ-REITの仕組みだ。物件の価値が毀損されたのでなければ、支援を得ることで再生し、再び上場するのでは――そんな目論見があった。

「1年半後、ビ・ライフ投資法人(現 大和ハウスリート投資法人)に吸収合併されました。その際の価格は上場廃止時の5倍以上です」

「安すぎる」「潰れることはないだろう」と考えての投資は、再生に成功すればハイリターンをもたらす一方、紙くずになる可能性も低くはない。かんちさんの祖母の満鉄株がそうなったように、だ。

「私にも失敗したケースがあります。JAL(日本航空)もそうでした。それにうまくいったとしても再生や再上場するまでの間、資金が拘束されるため、資金効率を気にする人には向いていません」

異常な売られすぎなどの”市場の歪み”に着目したやり方は、今も変わっていない。

「最近、注目しているのが電子書籍関連。成長産業ですが、違法にアップロードするサイトの登場が不安材料ともなっています。そのため20%から30%成長している会社でもPERが13倍台と割安な水準に放置されています。私の感覚からすれば、安すぎる」

違法サイトが駆逐されれば割安さが改善されて、株価上昇への期待が高まる。銀行株やJ-REITで成功した発想の応用だ。