保険に入るなら必要最低限

  • 3分でわかる・お金に困らない人生を送るためのマネープラン入門 / 竹川 美奈子Noritake

前回は、人生で一番大きな支出となる「住宅」についてお話しました。今回はその次くらいに大きな支出となりうる「保険」について考えていきましょう。
「第1回老後の破たんを防ぐため、今からマネープランを考えよう」を読む
「第2回家は買うべきか、買わざるべきか」を読む

保険は必要最低限でよい

保険には、生命保険、医療保険、損害保険などさまざまなものがありますが、まず覚えていてほしいのは、保険は「必要がなければ入らない」のが一番ということです。

保険はそもそも、自分の力だけでは対応できないリスクに対応するために入るもの。儲けるためではなく、万一のときのリスクをヘッジ(回避)するのが本来の目的です。たとえば、病気になる確率の低い若者や、預金がたくさんある人、夫婦ともに大企業の社員で福利厚生が手厚い人は、生命保険に入る必然性は低くなります。

一般に、日本人はたくさんの保険料を支払っています。1世帯あたりが支払う年間保険料は平均38万5000円(*)。仮に20年この保険料を払い続けると770万円、30年では1155万円にのぼります。この金額は、「住宅」の次くらいに大きな買い物といっていいでしょう。月々の保険料を提示されると「これくらいなら」と思いがちですが、一部、将来満期金などが戻るものがあるにしても、相当な金額の保険料を支払うことになります。つまり、その分、貯蓄や投資(金融・自己投資)に回す金が減るということになります。
*生命保険文化センター平成27年度「生命保険に関する全国実態調査」(世帯調査)

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子どもが産まれたら死亡保障は必要

では、保険がまったく必要ないのかといえばそうではありません。たとえば、結婚して子どもが生まれた人は、考えたほうがいい場合が多いでしょう。稼ぎ頭となる夫(や妻)に万一のことがあったときに、子どもの生活費や教育費をまかないきれなくなるなどの不都合が生じうるからです。こうした場合に備えて、死亡時に保険金の受けとれる保険に加入するのがいいでしょう(要するに、普通の生命保険です。学資保険、教育保険、などの類ではありません。詳しくは次回解説します)。
逆に言うと、自分が亡くなっても経済的に困る人がいない独身者には、こうした保険は必要ありません。

では、死亡保障が必要な人はどのような保険に、いくらくらいの規模で入るのが良いでしょうか。CMなどで目にする民間の保険で、金額も多めに、と考える人もいらっしゃると思いますが、加入する前にやっておきたいことがあります。下の図を見てください。

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保険に限らず、お金を考えるときには「①公的保障」「②企業内保障」「③自分で準備」の3ステップで考えるのが基本です。
保険や老後資金などを考えるときに、つい③に目がいきがちですが、まずは公的な保障、企業内保障をきちんと調べ、足りない分を自分で準備するという視点を持ちましょう(自営業の方は②がないため、会社員の方よりは自分で準備するお金が増えることになります)。

国や勤務先からもらえるお金

死亡保障で①にあたるのが「遺族年金」です。国の年金制度には老後の生活を支えるという以外に、加入者が亡くなったときに遺族の生活を支えるという機能もあわせもっています。まずは遺族年金でもらえる金額を調べましょう。
亡くなった人が国民年金に加入していた自営業であれば「遺族基礎年金」が、厚生年金に加入していた会社員や公務員であれば、「遺族基礎年金」に加えて、「遺族厚生年金」が受けとれます。
遺族基礎年金の金額は「78万100円+子どもの人数に応じて加算される」というふうに決まっています。第1子と第2子にはそれぞれ年間22万4500円がプラスされ、第3子以降は1人につき7万4800円がプラスされます。たとえば、子どもが1人いる妻の場合、遺族基礎年金は年間100万4600円、子どもが2人いる場合は122万9100円がもらえます(平成28年度の場合)。支給には「18歳までの子どもがいる」「亡くなった人が保険料を加入期間のうち3分の2以上納めていた」などといった要件を満たす必要があります。
遺族厚生年金は支払った保険料に応じてもらえる金額が変わり、夫が老齢厚生年金として受けとるはずだった老齢厚生年金の4分の3相当額が受けとれます。つまり年収が高い人ほどたくさんの金額が受けとれます。

また、多くの人が見落としがちなのが、②企業内保障です。会社によっては死亡退職金や死亡弔慰金、遺児・育英年金といった制度が充実していて、保障が手厚いことがあります(共済会や労働組合などから支給されるケースも)。
たとえば、あるメーカーでは35歳モデル(子ども2人)で合わせて1000万円程度のお金が遺族に支給されます。②の部分が手厚ければ、その分、自分で準備する分(この場合は死亡保険金の金額)を引き下げることができ、当然保険料も下がります。

民間の保険に入る前に調べておきたいこと

①②を調べたうえで、最後のステップ「③自分で準備」を検討します。民間の保険を検討する前に、まずは勤務先や労働組合にグループ保険(団体定期保険)があるかどうかを調べてみましょう。広く一般を対象とした保険よりも、団体割引で保険料が割安に設定されている場合もあります。また、労働組合の組合員などが団体加入できる「共済」も、団体割引で一般の保険よりも割安になります(代表的なものは「団体生命保険」です)。こちらは途中で離転職した場合、団体割引はなくなるものの、一般の共済に継続加入できることもあります。

勤務先にこうした団体割引の保険がない場合には、一般の人が入れる共済を調べてみましょう。共済は、非営利をモットーとしているので、民間の保険に比べて支払額が安くなります。全労災の「こくみん共済」や県民共済などがあります。ただし、たとえば一般的な県民共済の場合、病気による死亡保障は最高でも800万円と保障額としては少なめです。

そこで、それほど貯蓄がなく、もう少し保障が必要な人は民間の保険も検討しましょう。その際は、「収入保障保険」や「逓減(ていげん)定期保険」などが候補になります。これらは、年を経るごとに徐々に保険金受取額が減っていくタイプの保険です(子どもの成長とともに教育費の終わりが見えてくるので、受取額が減っても良しとする考え方です)。たとえば、オリックス生命の「家族をささえる保険Keep」などがあります。年を経るごとに受取額が減っていく分、定期保険に比べて、毎月支払う保険料が安くすみます。
健康体割引・非喫煙者割引の保険もあります。喫煙状況や健康状態(血圧やBMIの数値など)など、所定の条件が設けられていて、それを満たす場合には保険料が安くなるので、日ごろから健康管理を心がけると、結果的に保険料を安くすることができます。

医療保険は、預金があれば必要ない!?

また、医療保険と呼ばれるタイプの保険が気になっている人もいるかもしれません。「1日1万円の入院費を保障!」などと広告しているタイプの保険のことですが、見たことがある人も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、医療保険は必要ありません。なぜなら、医療費は公的保障が充実しているからです。

みなさんは何らかの健康保険に加入しているはずです(健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険など)。まず、公的な保障として「高額療養費制度」という制度を利用できます。これは1カ月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の自己負担限度額を超えた分があとで払い戻されるというものです。

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*1:ここでいう年間所得とは、前年の総所得金額及び山林所得、株式・長期(短期)譲渡所得等の合計額から基礎控除(33万円)を控除した金額(ただし、雑損失の繰越控除額は控除しない)。
*2:高額療養費を申請される月以前の直近12カ月の間に高額療養費を受けた月が3カ月以上ある場合は、4カ月目から「多数該当」という扱いになり、自己負担額が軽減される

たとえば、上の図の「年収約370万円~770万円」の人が、仮に手術と入院で100万円の医療費がかかったとします。病院の窓口では30万円(100万円の3割負担)を請求されるので、まずはいったん自分で支払いますが、あとから高額療養費として21万2570円が支給されるので、自己負担の上限は8万7430円ですみます(*1)。
手術などで、「医療費が高くなりそう」ということがあらかじめわかっているときは、健保組合などで「限度額適用認定証」をもらって病院の窓口に出せば、最初から上限額だけを支払えばすみます。
また、健康保険組合や協会けんぽなど、会社勤めの人が加入している健康保険は、一定の条件を満たすと(*2)、最長1年半にわたって「傷病手当金」が支給されます。もらえるのは、1日あたり、標準報酬日額(標準報酬月額を30日で割ったもの)の3分の2相当額です(「国民健康保険」の場合は、法定給付がないため、傷病手当金はもらえません)。

*1:食事負担や差額ベッド代等は含まない。
*2:病気やケガで仕事ができない、会社を休んだ日が連続して4日以上、原則給与の支払いがないなど。

加えて、②企業内保障も調べてみてください。健康保険組合などから高額療養費の「付加給付」があり、自己負担の上限金額がさらに安くすむ場合もあるからです。なかには月額2万円や3万円ですむといった会社もありますし、1万5000円という会社もあります。毎月の医療費がこの程度ですむのであれば、貯蓄でまかなえるはずです。
同様に、傷病手当金も、期間の延長や金額の上乗せをしてくれる企業もあります。そのほか、労働組合や共済会などから、長期療養見舞金や傷病見舞金といったお金をもらえることもあります。

保険は感情に訴えかけるCMなども多いですし、漠然と「不安」「こわい」と思ってしまうと、とにかく「保険に加入しなくては」「なるべくたくさんの保障額を」というふうに思ってしまいます。だからこそ、冷静に公的保障や企業内保障を調べることが大事です。そして、保険はあくまでもリスクヘッジのためのものだと考えてください。

それでは、ここまでのポイントをまとめておきましょう。

  • 「①公的保障」「②企業内保障」「③自分で準備」の3ステップで考える
  • 生命保険と医療保険は、まとまった預金あれば必要ない
  • 死亡保障は、子どもが生まれたら入る

次回は、住宅や保険の次に大きな支出となる、クルマと教育費について考えていきましょう。

「第4回車と教育費をスリム化しよう」を読む