第2回 囲碁のはじまりは「無」?

  • 3分でわかる・読むだけでおもしろさがわかる 大人のための囲碁入門 / 大橋 拓文Noritake

第1回では「勝敗のつけ方」と、囲碁のイメージを持ってもらうために「一局の流れ」についてお話ししました。今回は「囲碁の始まり」と、陣地がテーマです。
第1回「囲碁とはどういうゲームなのか」を読む

囲碁は、まっさらな局面から始まります。将棋は40枚の駒が配置された盤面からスタートしますね。オセロは黒白2つずつ置きます。

しかし、囲碁のはじまりは「無」です。

初めて囲碁に触れる方は、このまっさらな碁盤を見て、

「え! ここから始まるの? どこに打っても良いの? というか、どこが良いところなの?」

と動揺されるかもしれません。良いんです。どこに打っても良いんです。無からはじまる囲碁は、さながら宇宙のビッグバン。さぁ! あなたの感性の趣くままに!……こほん。失礼しました。つい暴走するのが私の悪いところ。

第1回で「囲碁は陣地を作るゲーム」とご説明しましたが、「何もないところからいきなり陣地を作ると言われても、漠然としすぎてどうするのかわからない」と思われるのが普通の反応でしょう。

自由すぎて困ると感じる方が多いと思いますので、最初の打ち方のセオリーをご紹介しましょう。陣地がどのようにできていくかイメージできると、囲碁はグンと面白くなります。

最初は隅を拠点にする

図1

数字は打った順番を表します。図1は一般的な進行で、黒も白も隅(黒は実線、白は点線)を陣地にしようと考えています。ではなぜ隅を拠点にするのでしょうか?

図2を見てください。

図2

右上、中央、左辺に黒の陣地があります。それぞれ何目あるでしょうか?

9目と思われた皆さん、正解です。これらはどれも9目です。4目、6目と数えた方もいらっしゃるでしょうか? 碁盤の交点、つまり石を置ける場所はすべて陣地として数えることができるので、一番隅っこや辺も含めると、9目になります。

では、その9目の陣地を作るために、囲いとなる黒石は何個必要でしょうか?

図3

右上の黒地(▲)の周りには、黒石が6個あります。同様に、中央には12個、左辺には9個の黒石が置かれています。陣地の大きさはどれも9目で同じなのに、右上の隅の黒地が、最も囲いの石が少ないですね。つまり、隅の方が囲いやすいということがわかります。碁盤の四角いという特性を有効活用できるためです。

実は、ごく稀にこの隅から打ち始めるというセオリーを無視して最初にドカンと真ん中に打つ人もいます。かくいう私もその一人だったりして……。あせあせ。

人間の囲碁の歴史数千年の叡智の結果と、近年爆発的に強くなった囲碁AI(人工知能)のどちらも、99.9%は初手を隅から打ち始めますので、まずは隅から陣地を作っていくことをおススメします。

石と石の連携が大切

ところで、図1の黒3と5、白4と6の間に隙間があり、碁盤の端の方も完全に囲えていないので、陣地とは言えないんじゃないかと心配になった方、いらっしゃいませんか? 石を隣同士くっつけた方が安心だと思うのは人情です。よりわかりやすくするとこんな感じでしょうか。

図4

矢印のようなところがスカスカしていて気になりますよね。このように思われた方はとても鋭い! ここに囲碁の本質的なものが隠れているのです。次の図5を見てください。

図5

どちらも11手ずつ打ったところです。黒は、左辺の陣地を囲うべくひたすら石同士をくっつけて打ちました。対照的に、白はぴょんぴょんと右辺から中央にかけて石と石の間に2つ隙間を空けて石を配置しました。まるでウサギと亀のようですね。

黒の陣地は▲の9目、白はまだ完璧な陣地ではないですが、色のついているエリアのどこかの一部分だけ陣地になったとしても、9目よりは多そうです。つまり、全部の石をくっつけて隙間なくガチガチに囲わなくても、石と石の幅をとって柔軟に対応できるようにしておくのが、結果的に効率良く陣地を囲うことにつながります

第1回では歴史上の様々な人物が囲碁を嗜んだということをご紹介しました。たとえば、「できるだけ大きな国を作るために、国境を決める杭を打ってください。ただし、杭の数は決められています」と言われたとしましょう。皆さんならどのように杭を配置しますか?

「幅を広くして可能な限り大きな国を作る」というのは、とても自然な考えです。しかし、杭を離しすぎると敵に侵入される恐れがあります。かといって、地の囲い方でお話しした通り、杭をくっつけすぎると小さな国しか作れません。よって、「お互いの杭が連携を取れる範囲でできるだけ広く間隔を取る」のが理想です。碁盤の上の石と石も連携を取りつつ広げるということが大切になります。もしかしたら、時の戦国武将たちはこういった戦略のヒントを、囲碁から得ていたのかもしれませんね。

ではここで、その国境に杭を打ったような局面を見てみましょう。第1回でご紹介した対局の一場面です。

図6

黒と白がお互いに隅から打ち合い、徐々に辺へ展開していったというのが、なんとなくおわかりいただけるでしょうか。この局面で、黒が1と打ったところです。これにより、右上の黒△の3子と、右下の黒□の4子の間に、しっかり杭を打ったといえます。黒としては「右辺の丸で色をつけた部分は黒の陣地ですよ」と主張しているわけです。黒△と黒1は二間幅、黒1と黒□は三間幅ですね。離れて心配かもしれませんが、序盤では二~三間の幅で展開していくと陣地を作りやすいのです。

ポイントをおさえて練習対局をしてみよう

陣地を効率よく作るコツとして、

① まずは隅に石を配置する
② ①のあと、二~三間幅を基本に辺へ展開していく

このイメージを忘れなければ、はじめてでもスムーズに対局ができるでしょう。それでは早速、手軽に楽しめる小さな碁盤「9路盤」で練習してみましょう。

<序盤>

図7

まずは黒1~5まで、お互いにざっくりとした囲いを作ります。この時に、それぞれの丸印を陣地にしようとするイメージを持つと、脳が活性化します。

<中盤>

図8

黒と白が隣り合わせに接触しながら、陣地の境界線が段々と決まっていきます。白1でこれより右側の黒の陣地になりそうな部分に侵入すると、黒は当然怒ります。侵入した白が包囲される可能性があるため、包囲されずに相手の陣地を減らすことができるちょうど良いラインを見極める必要があります。もちろん、状況によっては侵入する作戦を選ぶ時もありますが、まずは穏やかにゲームを進めるのが基本戦略となります

<終盤>

図9

いよいよ終盤戦です。序盤から中盤で作ったざっくりとした境界線の隙間を丁寧に埋めていきます。

<終局>

図10

黒1から白6まで交互に打ち、境界線の隙間をすべて埋め終わりました。これで終局です。黒と白、どちらの陣地の方が大きいでしょうか?

<陣地の計算>

図11

黒の陣地は▲印の31目、白の陣地は◯印の26目で、「黒の5目勝ち」という結果になりました(注:この練習対局は「コミ」なしで計算をしています。「コミ」については第4回で説明します)。

最近では、手軽に9路盤で対戦できる囲碁アプリも登場しています。実践してみたい方は、早速試してみてください。