年間600軒食べ歩いて知った、「トップオブトップ」の存在〜食べログレビュアー・うどんが主食さんインタビュー【後編】

大手グルメサイト「食べログ」のトップレビュアー、うどんが主食さん。彼の舌を信頼するファンは多く、高評価をつけた店は予約が取れなくなるほどの影響力を持つ。そんな伝説的レビュアーが、食べ歩きを始めたきっかけや、理想の店について語ってくれた。
「一食入魂」の食べ歩き人生 〜食べログレビュアー・うどんが主食さんインタビュー【前編】を読む

どうして評価が低いんだろう?

――「うどんが主食」というお名前だけあって、最初に「食べログ」の書き込みを始めたきっかけもうどん店だったとか。

僕は四国出身です。あの辺ってよく讃岐うどんを食べるんですよ。子供のころから好きだったし、本物の味を知っているから、こだわりもある。まあ、ソウルフードですね。

基本、田舎なので外食する場所が少なくて、家族でレストランに行くことはほとんどありませんでした。高校生になって、自転車で遠くの店まで外食に行くようになりましたが、それもうどんか、ラーメンくらい。おしゃれなレストランはないけど、うまい食材だけはある。そんな場所で育って、うどんが僕のごちそうだったんです。

上京して食べ歩きをするようになりましたが、人に勧めるほど詳しくはありませんでした。新卒で勤めた会社はめちゃくちゃ忙しくて、お金も余裕がなかったし、当時はまだ、インターネットのグルメサイトは普及していませんでしたから。レビュアーになるきっかけは、自分で会社を始めた後に、訳あって1人暮らしになったこと。

自由に外食できるようになって、まず思ったのが「好きなうどんを思う存分食べよう」。やっぱり、僕の原点はうどんなんですね(笑)。

そのころ住んでいた高田馬場の付近で探して、1軒、いいなと思ううどん屋さんを見つけました。僕は、気に入った店にはとことん通うタイプ。昼も夜も食べに行って、おいしいうどんへの欲を満たしていました。

そうするうちに、2008年に「食べログ」の存在を知ったんです。食べログがサービスを開始してから3年くらい経っていましたが、まだまだ書き込みが少なくて、一般的な認知度も低かった時代。さっそく、「うどん」で検索したら、なんと僕のお気に入りのうどん屋さんの評価が、すごく低かったんです。

「どうして、こんなに評価が低いんだろう?」と思って考えても、よくわからない。試しに高評価がついているうどん屋さんに行ってみたら、首をかしげるような店ばかり。レビューと自分の評価がかけ離れていることに、もどかしさを感じました。

「あの店のうどんのおいしさを、ちゃんと知ってほしい!」
そう思ったことが、食べログのレビューを書き始めたきっかけでした。

地道な努力を続けた2年間

――レビューを書いてすぐに、反響はありましたか。

それがもう、全然ない(笑)。反響どころか、そもそも誰も見に来ないんですよ。当時は「足跡機能」がついていて、自分のページの訪問者の履歴を見ることができました。でも「誰か」どころか、「誰も」こない。なんでだろう? と客観的に考えて、自分のフォロワーや登録している店の件数が少ないことが原因だと気がつきました。レビュアーとしての存在感がなかったんですよね。

そこで最初は、いろんな店に行ってレビューの件数を増やすこと。自分からいろんなレビュアーをフォローして存在に気づいてもらい、フォロワーを増やすこと。この2点をやってみました。でもそれだけでは、なかなかページの訪問者は増えない。そこで、より細かく研究してみることにしました。

投稿する時間帯の工夫や、写真の撮り方、影響力のあるレビュアーの投稿への書き込み……。とにかく思いつくことを全部やって、反応を見ながら試行錯誤するというのをコツコツ続けました。そうやって、2年くらい経ったころかなあ。かなりフォロワーが増えて、食べログの中で知られるようになった。いったんそうなると、自然とフォロワーが増えていくんですね。気がついたら、投稿数や人気で「トップレビュアー」といわれるうちの1人になっていました。

――トップレビュアーといえども、地道にコツコツ努力を続けた日々があった。何事も、いきなりトップになれるわけではないんですね。

いやほんと、お金ももらえないのに、よくやったなあと思いますよ(笑)。最初にめちゃくちゃ研究したのは、やっぱり好きだったから。いまも自分のページは、最低1日2回はチェックします。朝は仕事に行く前、夜はどんなに飲んでベロベロでもパソコンを開いて、ログインするのが習慣。それこそ土日はずーっと、パソコンの前に座って画像の編集したり、投稿したりしてます。これが僕の唯一の趣味ですから。

――レビューを始めてから約10年ですが、良かったことってなんですか。

おいしいものをたくさん知ることができた。そして、それを作る素晴らしい職人さんたちと知り合いになれたことかな。おかげで、人生が豊かになったと思います。

5万円にも440円にも、同じ感動がある

――これからも食べ歩きを続けて、たくさんお店を開拓していくんでしょうね。

それはちょっと、僕のスタンスとは違いますね。トップレビュアーになると知り合いが増えて、どんどん情報が入ってくる。年間600軒のペースで訪問した結果、日本で名店と呼ばれるところは、正直、僕なりには行き尽くした感じがします。

もちろん、食べ歩き仲間に勧められた店や、ものすごく話題になっているような店は、試しに行きますよ。でも経験を積んだ分、「これ系の店ね」とか、だいたい傾向がわかっちゃうんですよ。だから、ちょっと流行っているだけの店だったらわざわざ行きません。貴重な1日1食(前編参照)なんだから、おいしいものをしっかり食べて生きていきたい。

ぶっちゃけ、僕の中ではもう、結論が出てるんですよ。和食なら新橋の「京味」、寿司なら六本木一丁目の「鮨 さいとう」と小倉の「天寿し 京町店」。焼肉なら本郷の「焼肉ジャンボ」か鹿浜の「スタミナ苑」、うどんなら神保町の「丸香」など……。これらは僕のトップオブトップで、順位を塗り替えるには、相当すごい店ができないと無理だと思う。

特に京味は、僕に食べる幸せを教えてくれた、とても大切な店。ご主人の西健一郎さんは、マンガ『美味しんぼ』にも出てくる有名な料理人です。ご著書『日本のおかず』は、超名著。僕も料理をするときに使っていて、その通りに作ると本当においしい。京味にはずっと憧れていて、食べ歩きを始めたころ何度も電話したのですが「一見のお客は入れない」と言われ続けて……。

そしてついに、食べログを通じて知り合った常連さんに連れて行ってもらう機会がありました。その日のことは、はっきり覚えています。店の扉を開けたら西さんがいて、下駄をカラカラいわせて出迎えてくれました。食事中、「どっから来たんや」とか気軽に話しかけてくれて、もう、大感激ですよ。持っていた『日本のおかず』にサインまでしてもらって、すごく幸せな1日でした。

京味がすばらしいのは、家庭でも手に入るような材料を使っているところ。高級割烹って、大概ものすごく高い食材を使っていて、そういうのはちょっと炙ったり切ったりすれば、間違いなくおいしくなる。でも京味はそうじゃなくて、高い食材だけじゃなくふつうの食材にものすごく手をかけて、おいしい味に仕立て上げるんです。その技術、感性に触れるので、行くたびにいつも発見や感動がある。1人5万円くらいかかりますが、価値は十分あります。

――トップオブトップの中に、「丸香」といううどん屋さんが入ってますね。

東京で散々いろんなうどん屋さんに行って、僕の結論は丸香。作り手のセンスと能力がすばらしい。オススメは、かけうどん。一杯440円で、麺も出汁もカンペキな一品です。いつも行列ができていますが、15時くらいに行けばそんなに並ばないはず。ぜひ行ってみてください。

――5万円と440円の料理、同じテンションで話されるのがすごいです。

僕の中では、おいしいものを食べさせてくれる店はすべてすばらしい。同じように大切だし、尊敬に値する。ただ、そういう店って簡単に見つかるものじゃない。それは食べ歩きを続けて、心底実感したことです。

うわさを聞いて行ってみて、そこそこのレベルで満足する。そんな食べ歩きも楽しいけれど、僕はもうしないと思います。なぜなら、一流を知ってしまったから。本物の味を追求し、手をかける料理人の人間性と技術に触れる喜びを、知ってしまったから。

「おいしいものを食べたい」ってみんな簡単に言うけど、「おいしいもの」って簡単じゃない。それが、食べ歩きしまくった僕の感想です。もどかしいのが、いくら言葉で言ってもなかなかわかってもらえないこと。

確かめたい人は、ぜひ僕のオススメの店に行ってみてください。味は文章では伝えきれない……。だから、食べてみて!

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