第3回 囲碁の醍醐味、からみあう戦略と戦術

  • 3分でわかる・読むだけでおもしろさがわかる 大人のための囲碁入門 / 大橋 拓文Noritake

第1回で述べたように、囲碁の根っこは以下の2つです。

①陣地を囲い合ってそれが多い方が勝ち
②相手の石を囲むと取れる

第2回までで①についてはある程度イメージを持っていただけたでしょうか。

今回は、②について詳しく見ていきましょう。
第2回「囲碁のはじまりは『無』?」を読む

相手の石を囲むとは?

図1

中央に白石が1つあります。この白石から何本の線が出ているでしょうか?

図2

「4本」が正解です。矢印の方向に4つの線が伸びているのがわかります。これらは白石にとって「活路」です。人間でいえば、息ができる穴だと考えてください。口や鼻、皮膚といった感じ。したがって、この活路をすべて相手の石に塞がれてしまうと、白石は息ができなくなり、相手に取られてしまいます。試しに、白石の活路を黒石ですべて塞いでみましょう。

図3

白石から伸びていた線が見えなくなりましたね。本来、黒と白は交互に石を打っていきますが、今回は説明のために、黒石を連続して4つ置きました。このような形になると文字通り、白石は盤上から「取られて」しまいます。

図4

中央にあった白石が取り上げられました。
では問題です。次の図5には、左上、中央、右辺に白石があります。これらの白石の活路をすべて塞いで取るには、どこに黒石を置けば良いでしょうか?

図5

図6が正解です。左上は2つ、中央は6つ、右辺の白石を囲むには5つの黒石が必要でした。

図6

囲碁は陣取りゲームであることを忘れてはいけない

「相手の石を囲むと取れる」ということがわかると、石を取る喜びに目覚め、相手の石を取ることだけに一生懸命になる方が数多くいらっしゃいます。気持ちはよく分かりますし、私もその傾向があります。

しかし、図3をもう一度見てください。白1子を取るために、黒は4子が必要です。「当り前じゃないか! 見ればわかる!」と、皆さんはこの文章を読みながら呟いたことでしょう。何が言いたいかというと、1子取るために4子かかるということは、黒と白が交互に打っていく限り、基本的には「石を取るのは難しいのです」。

ここで初心にかえって考えてみましょう。囲碁は陣地の多さで勝敗が決まります。まず、大きな戦略としては、陣地を多く取ることを考えなくてはいけません。第2回では、陣地の囲いを作るさまを「国境を決める杭を打つこと」に例えました。杭を打つ際に、黒白がお互いにより大きな陣地を作ろうとすると、国境付近、つまり陣地の境界線で戦いが勃発します。この時に、例えば石を1子取られても、代わりに30目の陣地を作れるのであれば、1子を捨て石にするといった駆け引きが行われることはよくあります。

つまり、石を取る・取られるというのは、陣地を作る戦略の過程で起こる戦いの産物であり、どちらかといえば戦術のカテゴリーなのです

大河ドラマなどで戦国武将が囲碁を打つシーンがありますが(戦国武将の話ばかりですみません……)、実際の戦いでも、局地戦の勝利が大局的に有利になるとは限りません。どこの戦いを重視するか、総大将が頭を悩ませるところです。戦略と戦術、大局的視点と局地的視点、マクロとミクロなど、例えられる表現はいくつも思い浮かびますね。

そして、上達するにつれ、この戦略と戦術が結びつき絡み合っていきますが、これこそが囲碁の醍醐味であり、ここまでたどり着くと囲碁はやめられなくなるのです。何千年も囲碁が楽しまれてきたのは、このあたりに理由があるのかもしれません。

石を取られると、勝敗にどう影響する?

では、今回の締めくくりとして、「石を取る・取られる」がどのように勝敗に関わってくるか、具体的な例を見てみましょう。

終盤直前の場面です。白1に対して、黒2と打ちました。

図7

実はこの黒2、致命的な一手なのです。ここで白にチャンスが訪れました。白の次の一手、どこに打ちますか?(ヒント=白1の周辺の黒石をじっと見つめてみてください)

図8

白1と打つと、黒□は周りを白に囲まれ、活路がすべて絶たれてしまいます。こうなると、黒□の3子は盤上から取り上げられてしまいます。
黒は自分の陣地だと思っていた左下の一部を白に取られてしまったので、これ以上白に侵入されないように黒2と補修工事をしました。

図9

さて、これで黒と白の境界線の隙間がすべて埋まり、終局となりました。お互いに陣地が完成したので、陣地がいくつあるのか数えていきます。

図10(終局図)

この時に、先ほど白は黒3子を取ったことを思い出してください。図8の黒□の3子を取り上げましたね。この取った石は「アゲハマ」と呼ばれ、大事に保管しておかなければいけません。なぜなら、終局してから陣地を数える場面でそれを使うからです。

終局でおこなうこと

①アゲハマを相手の陣地の中に埋める
まず、陣地を数える前に、白はアゲハマの3子を黒の陣地に埋めます。図10にアゲハマを入れてみると、

図11

このようになりました。黒□の3子がアゲハマです。つまり、相手の石をたくさん取れば取るほど、最後に相手の陣地にそれを埋めることができ、相手の陣地を減らすことができるということなのです。

②陣地を数える
アゲハマを埋め終えたら、ようやく陣地を数えます。黒と白、それぞれ何目ありますか?

図12

黒の陣地は▲の14目、白の陣地は〇の16目でした。したがって、「白の2目勝ち」という結果になりました。(注:この練習対局はコミなしで計算をしています。「コミ」については次回で詳しく説明します)

もしも図7で黒が間違えなければ……黒が7目勝ちという結果になるところでした。気になる方はぜひ試してみてください。

p.s.
第1回について読者の方から鋭い指摘を受けました。

こちらの図(第1回の図2)が白の1目半勝ちと書いてあるが何回数えても黒48、白40で計算が合わない! と。実は白が取ったアゲハマが16子、黒が取ったアゲハマが13子ありました。アゲハマの説明前だったので、省略してしまいましたがかえって疑問を残してしまいました。
アゲハマ 白16、黒13 を追加して訂正いたします。ご指摘ありがとうございました。