目指すは『Amazon』! 初代バチェラーが立ち上げた“買わないインテリア”~ CLAS久保裕丈代表インタビュー【前編】

  • お金を語るのはカッコいい・初代バチェラーの人生哲学 / 久保 裕丈

今秋、“買わないインテリア”をコンセプトにした家具のレンタルサービス『CLAS』がスタートした。事業を立ち上げたのは元ミューズコー代表の久保裕丈さん。さらに恋愛リアリティ番組『バチェラー・ジャパン』の初代バチェラーだった方と言えば歓喜するファンも多いのではないだろうか。“独身男性を巡り多数の女性が争う”ディープな設定に関わらず、誠実で真摯な人柄が印象に残った久保さん。
「ビジネスもユーザー本位で。月額500円からのサービスですがいずれはもっと安くしたい。目指すは耐久財のamazonです」ーー真っ直ぐな笑顔で2度目の起業をこう語った。

家を借りるように家具を借りたっていい

『CLAS』は“必要なときに必要なものだけを使える”をモットーにした家具のレンタルサービスです。上質な素材を使い、ベーシックな品揃えで月額500円から利用できます。けれど、なぜ、家具のレンタルだったのか? 「僕自身の実体験」と「人との出会い」がきっかけになっています。

僕は1年半から2年に一回くらいのペースで引っ越しをするんです。何故かというと、更新料を支払うのがイヤなんですよ(笑)。ユーザー本位ではない仕組みはイヤなんです。長く住み続ける店子(借家人)は本来、LTV(顧客生涯価値)の高いユーザーであるはずなのに、と思うわけです。

それで、引っ越しをするんですけど、部屋の広さは同じでも間取りが変われば、持っていた家具がフィットしなくなったりするんですね。捨てたり、買い替えたり。手間はかかるし、すごく勿体ないと感じていました。家は当たり前のようにみんなが借りるのだから、その中の家具も借りてしまえばいいのにって。『CLAS』はそんなシンプルな思いつきから始まっています。そもそも、部屋のインテリアは一発勝負ですよね。誰もが一番長く過ごす場所で、居心地の良さを最大化すべき場所なのに、インテリアのテストもできない。でも、レンタルならその自由度も高まります。

僕の思いつきを後押ししたのが、今一緒に働いている家具デザイナーです。以前から自宅のインテリアは彼に見立ててもらっていたのですが、アイデアを話したら「確かにそうだね」って。家具を売るデザイナーが賛同してくれたことは大きな自信につながりました。
時系列でいうと、彼と話をしたのが今年(18年)3月、翌月には会社登記をして、5月にはティザーサイトを立ち上げました。そうして、8月下旬、事業を本格的にスタートしたのです。

月額500円から。けれど、まだまだ高いと思っています

『CLAS』のターゲットは「社会人2回目の引っ越しをする、ライフステージ変換の早い人」。商品数は絞り込み、今後も増やし過ぎないようにするつもりです。
というのも、洋服などに比べて家具を選ぶのは難しいから。僕自身がまさにそうで、購入頻度が低い分、知識レベルや購入のノウハウが蓄積されていかないんです。インテリアにそれほど詳しくはないけれど、居心地の良い空間で暮らしたい、そんなユーザーに向けて商品を提供していきたいと思っています。

月額500円からの設定は、家具の企画から製造まで自社でやっているからこそ実現できた価格です。とはいえ、まだまだ高いと思っていますね。家具レンタルの市場でシェアを取っていくにはさらに思い切った値段設定が必要。そのための資金調達を含め、今後の課題と考えています。

2度目の起業。メンバーに伝えたことは「僕は働かない」

今回で起業は2度目になります。最初は31歳の時でファッションサイトを運営するミューズコーを立ち上げました。この時、経営者がしがちな、ありとあらゆる失敗はやり尽くしたかなと思っています。

『CLAS』の立ち上げ時からメンバーに言っていることは「今回は働かないよ」と。
僕のやるべきことは「仲間集め」と「仲間が働きやすい、パフォーマンスしやすい仕組みづくり」、そうして、「中・長期的な妄想を語り続けること」。
ここは普通の表現をすると戦略になるんでしょうけど、戦略っていうとあんまり楽しくない。僕は妄想でいいと思ってるんですね。ともあれ、この3つ以外は基本やらないよ、と言っているんです。そこが最初の起業との大きな違いですかね。

ミューズコーの時は、何から何まで自分でやらないと気が済まなかったんです。あちこちに顔を出し、手を出し、口を出し、とやっていたんですけど、そのやり方だと限界がくるんです。結局、久保裕丈という人間の脳みそで考えられる範囲までしか事業は伸びなくなる。そういう学びもあって、今回は強い人材をどう集めるか、そのプロセスを回す点にフォーカスしようと考えています。

強い人材といっても正社員に限りません。10月現在で社員5名、業務委託、外部要員を含め15名の体制で動いていますが、責任者的なポジションでも業務委託でお願いしているケースもあります。『CLAS』が「持たない家具屋」「持たない生き方」を提唱しているのに、会社がいろいろなものを持ってしまうのはどうなのかな、と。やっぱり社員になってもらった方がいいという結論にはなるかもしれませんが、働き方も関わり方もできるだけ自由にしたいと思ったんですね。

「消費財がAmazon」なら、「耐久財はCLAS」といえるポジションに

『CLAS』の一番の妄想は、「消費財がAmazon」なら、「耐久財はCLAS」といえるポジションになること。『CLAS』の目的は家具のレンタルではなく、サービスを使ってくれる人の生活や暮らし方をよりよくすることです。ですので、扱うものは家具に限らず、家電でもいい、もっといえば先ほどお話した不動産だっていい。不動産は初期投資が大きいのですぐにはムリかもしれませんが、サービス提供者側の都合で動いている業界だと感じています。改革したい妄想はありますね。

家具レンタルの前にもう一つ、別のアイデアもありました。簡単に言えば、研究機関向けのAmazonみたいなこと。研究室って特殊な資材、機材を扱うんですけど流通構造が不透明で価格も市価より高かったりする。参入すれば勝てる自信はありましたが、黒字化するまでに7、8年かかる上に、50億から60億円の資金が必要。最初からそれだとキツいですから棚上げにしたんですが、チャンスがあればいつか挑戦したいですね。

ちなみに、数字はミューズコー時代に鍛えられました。これは投資型だなというのが見えてしまえば、だいたいの金額は弾けます。なお、『CLAS』の場合は20億円から30億円くらいの資金調達が必要で、黒字化までにPL(損益計算書)上なら1年ほど、キャッシュベースでいうと3年から4年を見込んでいます。
『CLAS』が参入する業界は構造化されておらず、本当の意味での勝者もまだいない。IT化もこれからです。Amazonに匹敵するような、耐久財のプラットフォームを作りたいですね。