ゲーム好きな大学生が億り人に・Tyunさんインタビュー【後編】

  • リアル投資家列伝・才能がなくても勝てる!? 「優位性」を生かし30代で資産2億円 / Tyun

デイトレーダーといえば値動き重視! そんなイメージとはちょっと異なるTyunさん。投資家心理や肌感覚を大切にした独特な思考の源泉をたどると、自分が得意なことや、自分が勝てるニッチを探す「弱者ならではの戦法」があるようです。
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初心者でも名人に勝てるのが株式投資

「僕が羽生(善治)名人と将棋を指しても100%負けます。でも株式投資の世界は違う。初心者と僕がデイトレードで一発勝負をしたら、どうでしょうか?」

デイトレの世界では名人級のTyunさんが勝つはずだ。

「そうは限りません。初心者の人が勝つ確率も40%くらいあると思います。短期的な市場では、運の要素もあるからです。でも勝負の回数が増えるほど、トータルでは僕が勝つ確率が高まる。1回ずつの勝負では『小さな差』でしかない要素が、長期的に見ると大きな差になるからです」

同じことはゲームでも言えるのだという。

「ヨミは合っていた、戦略も正しかった、リスク管理も行なっていた――それなのに負けることがあります。株もゲームも自分ではコントロールできない要素が適度に入っています。理不尽だし、完全に合理的な世界ではないかもしれませんが、それが刺激になる。すべてを理屈では説明できない世界だから、株もゲームも好きなのかもしれません。刺激を求め過ぎなのかもしれないですが……(笑)」

超能力を持った人はいるかもしれないし、未知の生物が発見される可能性はゼロじゃないし――科学では説明しきれないそんな世界ほど、魅力を感じてしまうことって、誰にもあるはず。じつは、とTyunさんは回想する。

「小学生のころに抱いた、『なぜ個々の業績は違うのに全面安や全面高になるんだろう』という疑問、いまだに解けないんです。会社の価値は1日でそんなに変わらないし、『おかしなものなんだな』と自分を納得させています」

株式市場はどうやって動いているのか?

株式市場が一斉に動く理由はいまだに腑に落ちなくとも、Tyunさんなりに見えてきた部分もある。

「株価はなぜ動くのか――市場参加者の心理が移り変わるからですよね。みんなが『上がるだろう』『下がるかも』とさまざまな思惑を持って売買し、その結果として株価が動きます。みんなの心理がぶつかりあって、株価が決まっていくわけです。株式市場は、『みんなの心理を正確に予想できた人が勝つゲーム』とも言えますよね」

そんなゲームを攻略するカギのひとつが行動経済学にあるとTyunさんはにらんでいる。

「人間の心理はいつも合理的なわけではありません。たとえば――」

そう言ってTyunさんは問いかけてきた。「次の3グループに軽作業を行なわせた場合、もっともパフォーマンスが悪いのは、どれか?」と。

(1)時給1500円で請け負ったグループ
(2)時給100円で請け負ったグループ
(3)ボランティアとして請け負ったグループ

「相場通りの時給で請けた(1)と、ボランティアで請けた(3)は同じくらいの成績でしたが、相場よりもずっと低い時給で請けた(2)のグループのパフォーマンスは格段に悪かったそうです」

人間が経済性に従って合理的に行動するのなら、わずかであれ報酬がもらえたほうがボランティアよりも意欲は高まるはずだ。

「ところが人間の心理はそうなっていません。相場よりもずっと低い時給だと尊厳を損なわれたように感じて収入ゼロの場合よりもやる気が出ないんです。非合理的な投資行動でも言えます。ジリジリと下げてきて含み損が50万円、100万円とふくらんでいるなら『まだ我慢しよう』と思って損切りしにくい。でも、相場がクラッシュして1日で含み損が100万円に達すると慌てて切ってしまう人が多いんです」

我先にとみんなが損切りに動けば下落が加速するし、損切りが出尽くすのも早い。

「みんなが諦めて損切りするような局面なら自分は買いのチャンスを探すし、個人投資家が信用取引でたくさん買っているような銘柄が下げていたら『どこで追証が発生するだろう』と考えたり、そうやって市場参加者の心理や行動を読みながら取引することが多いですね」

みんなが慌てるような時にこそ、一度深呼吸して「みんなはどう考えるだろう」と想像を巡らせてみるのがよさそうだ。

連発する悪材料で有効な経験則

「最近、投資用不動産の不正融資が明るみに出て急落した会社がありました。その直後、他社でも同じような材料が出ましたが、2発目、3発目はだんだんと感受性が鈍くなりやすい傾向があります。市場参加者も最初は慌てますが2発目なら耐性ができているのでしょうし、そもそも1発目の段階で連想などから株価が軟調になっていることも多いためでしょう。そんな発想で買って成功したのが シノケングループ  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 でした」

でも株式市場はすべてが合理的に説明できるわけではない。思い通りに動かなったときの備えも必要だ。

「傷口が浅いうちに諦めるのも重要です。最初に『この金額以上の含み損になったら損切りする』と決めたら、ダラダラ持たずにスパッと損切りする。切ったあとはお風呂にでも入って冷静になって、それでもまだ買いたいと思ったら買い直せばいいんです。きちんと損切りできるだけで、他の人よりも優位性を持てますから」

自分の優位性をどう確立させるか――。行動経済学を取り入れたり、都心に住まいを求めて社会の変化から銘柄を見定めたりと、一般的なデイトレーダーのイメージとは違う方向へ向かっているようにも見える。

「他の投資家にも同じことを指摘されます。方法論としては中長期的投資のロジックへとシフトしていますし、資金配分としても当初のデイトレード中心から、現在はデイトレード50%、中期のスウィングトレード等が50%くらいになっています。でも、スウィングの分野では自分より上手な人がたくさんいるし、やっていて楽しいのはデイトレード。やりたいこと、やっていることのギャップがありますね(笑)」

このギャップ、生物学的な意味でのニッチと言い換えてもいいのかもしれない。

才能がなくても優位性を獲得するには?

「決算などの数字を分析する能力や、数秒先の値動きを予想する能力は特殊な才能や並外れた努力が必要です。それができる人はいいのですが、自分にはできないし、おそらく世の中の9割の人にもムリでしょう」

それでも儲けたいなら、どうするか――?

「その答えのひとつが身の回りで得た気づきを重視することだったり、趣味や仕事を通じて自分が精通する業界をメインにして取引していくことだと思うんです」

Tyunさんが得意とする業界のひとつが、子どものころからの趣味であるゲームだ。

「ガンホーやミクシィなどスマホゲーム関連の銘柄なら何もかも上がる時期もありましたが、今は選別が必要。どれが業績に結びつくかと考えて、参考になったのが広告の仕方やプロモーションの煽り方でした。これは昨年あたりの話になりますが、 KLab  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 が出した『キャプ翼(キャプテン翼〜たたかえドリームチーム〜)』もそうでした。『この告知はうまい、世間に刺さりそうだ』と感じたので、配信開始前後には KLab  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 をよく買っていました」

自分の趣味を活かす、というのも優位性を確立するひとつのヒントになりそうだ。

「とくに女性は有利だと思います。株式市場に参加しているのは、男性が多い。しかも、年配のおっさんがほとんどです。男性だと『うた☆プリ』といってもわかりませんよね」

「うたの☆プリンスさまっ♪」というヒットゲームだそう。

「このゲームのヒットで、 ブロッコリー  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 は業績を伸ばしました。男性だと『うた☆プリ』のヒットに気が付きにくいですから、女性ゲーマーは他の投資家よりも先回りして買うチャンスなんです」

ゲームをやらない投資家が女性向けゲームのヒットに気がつくのは、ダウンロード数や売上などを告知するプレスリリースや決算の数字が出てから、だ。

「トレーダー目線でいえば、そのころには手仕舞いを考えるくらいでちょうどいいんです」

デイトレードから中期保有へと少しずつ手を広げているTyunさん。IPOやPOも手がけ始めた。

「証券会社の営業の人と仲良くなったのがきっかけでした。その人はもう辞めてしまいましたが、今も情報交換しています。最近は相場が不安定ですが、こういう相場なら大きく取得できるかなと思って、 東急不動産  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 のPOに応募し、うまくいきました」

方法論が異なるさまざまな投資スタイルも、Tyunさんにとっては「新しいゲームのひとつ」くらいの感覚なのかもしれない。

「株もゲームも適度に運の要素があり、刺激がある。似ているところは多いですよね。辛いこと、腹が立つことも、むちゃくちゃあります。でも、それ以上に楽しいことのほうが多い。自分のヨミがハマった瞬間、自分の考えたとおりに株価が動いた瞬間、それはとても楽しい。飽きっぽい自分がよく10年以上も続いたなって思いますが、株式投資は人生の中で一番楽しいことなんです」

そういって株のことを話すTyunさんの様子はとても楽しげ。幼いころのTyunさんのように、株式投資の世界へ「入れて、入れて!」とせがんでみたくなった人、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。