PERで読み解く大和ハウス工業

「PERで読み解くクボタ」を読む
後悔しない株式投資をしたいなら、さまざまな面から企業を観察するのが効果的。そんなときにまずチェックしておきたいのがPERです。PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

「期待」と「懸念」が交錯するケース

一般的には、収益の柱となるような事業が急成長していれば、株価やPERは高くなる傾向にあります。以前ご紹介した、資生堂リクルートHDなどがまさにこうしたケースでした。しかし、柱となる成長事業があるにもかかわらず、ほかの事業に対する先行き懸念から、PERが低くなってしまうこともあります。今回はそうした「期待」と「懸念」が入り混じるケースをご紹介します。

case16:大和ハウス工業

今回取り上げるのは、戸建てやマンションから、物流施設まで幅広く手掛ける「 大和ハウス工業  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 」です。先日発表された2019年3月期の第2四半期決算は、増収営業増益(前年同期比)となり、上半期としては過去最高の売上・営業利益となりました。主に、インターネット通販向けの物流施設や、インバウンド需要が旺盛なホテルの建設が好調だった模様です。

予想PERは10倍以下に

しかし、好調な業績とは裏腹に、予想PERは9.7倍と、10倍を下回る水準に落ち込んでいます。業種平均よりも低いほか、過去の推移と比べても、相対的に低い水準にあることがうかがえます。

予想PERが低迷する、3つの「懸念」

このように、足元で業績が好調にもかかわらず、予想PERや株価が低迷するには以下の3つの「懸念」があると考えられます。

1.2015年1月の相続税増税時に供給が増加した反動で、今は賃貸住宅市場のニーズが頭打ち状態にあること
2.2019年10月の消費増税を控え、住宅マーケット全体の先行きが不透明なこと
3.投資用不動産をめぐる不祥事や、賃貸住宅市場全体に対する先行き懸念が台頭していること

いずれも大和ハウス工業個別の理由ではなく、賃貸・住宅マーケット全体もしくは他社の話です。たしかに同社の賃貸事業は足元でやや伸び悩んでいるほか、2019年10月の消費増税は高額消費市場全体にとって逆風となる可能性があります。
しかし、2と3については、時間が経つにつれ、マーケットでの織り込みは進むことが想定されます。前回の消費増税のときも、住宅メーカーの株価は増税実施後に上値を切り上げる動きを見せていました。今回のケースでも、時間の経過とともに株価やPERは修正されていく可能性があります。

好調な2つの事業が稼ぎ頭に

また、同社の場合、もっとも営業利益を稼ぎ出しているのは、ホテルなど商業施設を手掛ける「商業施設事業」(全体の30%)であり、賃貸住宅事業は28%にとどまっています(2018年3月期ベース)。「商業施設事業」 と、巨大な物流施設の建設を請け負う「事業施設事業」は、近年着実に業績を伸ばしており、同社の収益の柱となりつつあります。マーケットでも、上記の「懸念」が意識される一方、これら2つの今後の成長に「期待」が集まっています。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①と③から大和ハウス工業のPERをみてきました。たしかに目先の状況を考えれば、賃貸・住宅事業を取り巻く事業環境は、投資家が「懸念」を抱きやすい状況にあります。しかし、きちんとセグメント別に今後を考えれば、将来の収益が「期待」できる分野もあるのです。PERを考える上では、懸念のある一部の事業だけでなく、成長分野の収益性も併せてチェックするようにしましょう。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。