PERで読み解くアサヒグループHD

「PERで読み解く大和ハウス工業」を読む
成長が期待される銘柄を、割安な時に買う。そんな投資のキホンに立ち返る時に活用したいのがPER(株価収益率)です。PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

数年先より「今」に左右されがちなPER

将来の利益に対する投資家の期待を表す指標でもあるPER。しかし、投資家の心理は、数年先の不確実な未来よりも、どうしても足元の実績に影響されがちです。そこで今回は、中長期的な成長の種をまくことができているものの、既存事業の不振がPERや株価を押し下げているケースをご紹介します。

case17:アサヒグループHD

今回取り上げるのは、アサヒスーパードライやカルピスでおなじみの「 アサヒグループHD  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 」です。国内ではビールシェアトップ(2017年)を誇る同社。近年は、海外のM&A(買収)を活発化させており、2016年にビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)から西欧事業を、2017年には中東欧事業を買収しました。

海外好調で2018年1~9月期は最高益更新

こうした海外事業の拡大は、アサヒグループHDの業績を大きく押し上げています。2018年1~9月期は、欧州で高級ビールが拡大し、同時期としては過去最高益を更新。本業のもうけを示す連結事業利益が1680億円となり、売上高事業利益率は10.6%と、初めて10%の大台を突破しました。

第三のビールが国内事業の明暗分ける

しかし、株価は2018年8月以降、上値が重く、予想PER(東洋経済予想)も15.5倍と業種平均や過去平均(2010年以降平均17.9倍)を下回っています。理由としては、国内の既存事業に対する不安が挙げられます。

国内事業に関してだけ言えば、1〜9月期に増収増益だったのは、ライバルである「 キリンHD  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 」だけでした。割安な第三のビール「本麒麟」が好調で、消費者の低価格志向などに対応できた結果と言えます。一方で、アサヒグループHDは、通常のビール分野に経営資源を振り向けたことで、第三のビールは伸び悩んでいます。2026年に向けて酒税が段階的に統一され、価格差が縮まることが想定されることから、同社は通常のビール分野に注力していると考えられます。

国内マーケット縮小も重石に

また、国内のビール市場そのものが縮小しつつあることも投資家の不安材料になっています。最近は居酒屋に対するニーズも減少し、手早く酔える缶チューハイなどに消費がシフトしていることもあり、マーケットそのものが頭打ち状態にあります。

こうした国内のビールを取り巻く環境が、株価やPERを抑えていると考えられます。

目線が海外事業に移れば反転か

ただ、今後のセグメント別の事業利益をみると、頭打ち状態の「国内酒類事業」に対して、積極的なM&Aで拡大を図る「国際事業」は拡大を続ける見込みです(弊社予想)。2021年には国内事業を逆転することも想定されるため、投資家の目線が足元ではなく、数年後を見据えるようになれば、株価やPERも反転するのではないでしょうか。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回は、①と③からアサヒグループHDのPERをみてきました。数年後の業績よりも、目の前の実績に投資家の心理が左右されるのはある程度致し方ないことです。しかし、だからこそ、将来の利益を常に考えることで、投資のチャンスが生まれる可能性があります。ネガティブな材料が出て株価が下落したときこそ、将来の利益の源泉になるものを探すようにしてみてはいかがでしょうか。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。