老後の資金をどうするか?

  • 3分でわかる・お金に困らない人生を送るためのマネープラン入門 / 竹川 美奈子Noritake

前回までは、住宅や保険、車といった人生において大きな「支出」をいかにおさえるかというお話をしてきました。今回からは、支出をおさえることで浮いたお金を貯蓄や投資に回すことで、第1回で触れた「老後のお金が足りなくなる」という事態を防ぎ、長期的に資産形成をしていく方法をお伝えしていきます。
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その前に老後の収入源をまず把握しておきましょう。老後の収入源について考える際も、第3回で説明した「お金は3ステップで考える」という三角形を使います。これを、老後のお金に当てはめると下の図のようになります。「①公的年金」と「②企業年金」を調べたうえで、足りない分を「③自分で準備する」ということになります。

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国民年金保険料は絶対に払うべし

①は国からもらう「公的年金」です。日本では20歳以上60歳未満の人はすべて国民年金に加入することになっていて、老後に年金(老齢基礎年金といいます)として受けとることができます。会社員や公務員の人は厚生年金にも加入しているので、その分も年金(老齢厚生年金といいます)として受けとることができます。生きている限り一定の金額[※]を継続的に受けとれるのが特徴です。

※国民年金(老齢基礎年金)は40年加入で満額の年間78万100円(月6万5000円程度)がもらえる(2016年度)。厚生年金は加入年数や給料水準などによって異なる。厚生年金(基礎年金含む)の受給額の平均は月14万5000円程度。

将来の年金制度への不安から、年金を払うことに疑問を持つ若い人もいるかもしれませんが、この国民年金保険料は絶対に払いましょう。なぜなら、国民年金には、65歳から年金がもらえるということ以外に、意外と見逃せない大きなメリットがあるからです。それは障害保険、死亡保険という機能がついているということ。

たとえば、国民年金加入中に病気や事故などで障害を負った場合には、障害基礎年金が支給されます(仮に障害1級となると年間約97万円、2級だと約78万円。子どもがいるとさらに金額が加算されます)。
国民年金加入者が亡くなったときにも、残された遺族(子どものいる妻と子ども)に対して、遺族基礎年金が支給されます(第3回を参照)。

3min-05_graph02また、老後にもらえる老齢基礎年金は私たちが支払う国民年金保険料とは別に、税金から2分の1が補填されますから、民間で同じ保障を付けることを考えたらかなり有利です。

また、自営業やフリーランスの人は、会社員と違ってお給料からの天引きではなく、国民年金保険料を自分で納める必要があります。その場合、売上が減るなど、経済的な理由で納めることが困難な場合には「免除」という制度を利用しましょう。免除額は所得水準に応じて決まり、免除が認められた期間は保険料を払わなくても、受給資格期間としてカウントされますし、税金から補填される分(2分の1)を将来受けとることができます。
免除を受けた額によっては、全額を払った人に比べると将来もらえる年金額が少なくなりますが、万一の場合に障害基礎年金などを受けとることができるので、保険料を払えない人は絶対に免除の申請手続きをしておきましょう。

企業の退職給付制度を調べてみて

2ステップ目は会社から受けとるお金です。具体的には「退職一時金」や「企業年金」です。お給料の後払いといった性格のもので、個々の会社が独自に運営しています。退職一時金というのは、退職する時に一括でもらえるお金のこと。一方、企業年金の代表的なものには、「確定給付企業年金(DB)」や「企業型確定拠出年金(企業型DC)」などがあります。

DBは、従業員が将来受けとる給付額があらかじめ約束されている企業年金制度のことです。会社が運用の責任を負い、運用結果が悪ければ、企業が不足分を穴埋めします。
一方、企業型DCは2001年から新しい選択肢として導入されたもので、掛け金の運用結果によって将来の給付額が変わる企業年金制度です。掛け金を負担するのは会社ですが、運用を行うのは加入者(従業員)です。うまく運用すれば、将来受けとる給付額が多くなります。

勤務先の会社の退職給付制度がどうなっているのか――具体的には「いつ」「どのように(一時金か、年金形式か)」「いくらくらい」もらえるのかを一度調べてみるとよいでしょう。

個人型確定拠出年金を積極的に活用する!

そして、3ステップ目が自分で準備するお金です。こちらは、自分でお金を出して、老後に向けて資産を作っていくものです。①と②が以前ほど手厚くなくなった今、「③自分で準備するお金」をしっかりと意識する必要があるでしょう。なかでも、もともと「②会社からもらえるお金」がない自営業者・フリーランスや、大企業に比べて少ない傾向の中小企業に勤める人はなおさらです。

③については低コストの投資信託を組み合わせて運用することをおすすめします。投資信託とは投資家から集めたお金を1つにまとめて、運用を専門とする会社に運用を任せる金融商品のことです。詳しくは次回以降で説明しますが、投資信託を活用して、世界中の株式にまとめて投資を行うと、預金だけに預けておくのに比べて資産が大きく育つ可能性が期待できます。たとえば、毎月3万円ずつ、30年間、積立投資を行い、仮に年5%で運用できたとします[※]。そうすると、資産は2500万円ほどになります。元本は1080万円ですから、2.3倍程度に増えたことになります。

※5%は国家公務員の運用を担当する機関が外国株式に投資したときに「期待リターン」として使用している数値です。

投資信託を積み立てる際、活用を検討したいのが「個人型確定拠出年金(個人型DC)」という制度です。個人型DCに加入して、投資信託の積み立てを行うと、所得税や住民税が安くなる節税効果に加えて、運用益が非課税なので運用効率も高まります。

これまで、個人型DCに加入できるのは、自営業者とその家族、フリーランス、学生、勤務先に企業年金のない会社員などに限られていました。それが法改正により、2017年1月から、原則60歳未満のすべての人が個人型DCに加入できるようになります。60歳まで引き出せないという制約があるものの、老後に向けた資産形成という目的であれば、活用を検討したい制度です。

ここまで自分で老後の資金を準備する方法をお伝えしてきましたが、民間の年金保険に入ろうと考えている人もいるかもしれません。しかし、よく考えるべきです。なぜなら、民間の個人年金保険は(個人型DCに比べて)節税効果が少ないうえに、支払う手数料も高い場合が多いからです。 

それでは、今回のポイントをまとめておきましょう。

  • ●公的年金がベース。国民年金保険料は絶対に払うべし
  • ●会社員は勤務先の退職給付制度をしっかり調べておく
  • ●税制が優遇されている個人型確定拠出年金(個人型DC)を積極的に活用する

次回は資産形成を行うのに欠かせないツールである投資信託について解説します。「投資はこわくて考えたことがない」「自分とは関係ない」と思っている方にこそ読んでいただきたい内容です。

「第6回 お金にも働いてもらう! 投資信託のすすめ」を読む