第8回 ゲームオーバーは自分が決める

  • 3分でわかる・読むだけでおもしろさがわかる 大人のための囲碁入門 / 大橋 拓文Noritake

第7回「死んでいる石と、生きている石」を読む
いよいよ最終回になりました。最後にふさわしく、「終局の仕方」がテーマです。
図1は実際にアプリ上で打った私の対局です。終局直前の様子からご覧ください。

図1

黒が△に打ち、お互いの地が完成しました。よくよく見てみると、×の場所はどちらの地でもないことにお気づきでしょうか? 黒地と白地の境界にある×は、どちらが打っても地が増えず、また、減ることもありません。このような場所には名前がついていますが、実はこの名前、皆さんが日頃とてもよく使う言葉です。もしかして、こどもの頃は毎日言われていたりして。ヒントは陣地の単位である「目」です。

わかりましたか? 「無駄な目」の場所なので、「駄目=ダメ」といいます。「○○しちゃダメ!」という時のダメの語源は囲碁から始まっているのです。囲碁が意外と生活に浸透していたことが想像できますね。

このダメも着手のうちなので、忘れることのないよう、最後まで気を抜かずに打ちましょう。

図2

ダメをすべて打ち終えたら、「もう打つ場所がないですね」という意思表示でパスをします。両者がお互いにパスをしたら、そこで囲碁は終局です。終局したら地の計算にうつります。

おかしなところに石がある?

ここで「あれ? ちょっと待って、おかしなところに石がある」と疑問に思われたのではないでしょうか。終局の大事なポイントが残っていました。中央の白地の中に黒○がありますね。

図3

この黒石はどうなっているのでしょうか?

図4

黒○はAとBに活路がありますが、「二眼」を作るにはスペースが足りません。周囲を白に囲まれて二眼ができない、つまり黒○は「死に石」ですね。黒が終局に合意したということは、黒○はAやBに逃げようとしても結局取られてしまうため、「黒○は死に石です」と黒が認めたことになります。

したがって、死に石と認められた石は終局後、地を数える時に取り上げ、アゲハマに加えることができるのです。もやっとされた方は、第7回と合わせて、もう一度読み返してみてください。

またまた余談ですが、「結局」も実は囲碁の言葉。「局」は囲碁の単位で、「一局打ちましょう」などと使います。結=結末なので、一局を打ち終えることを「結局」と表現しました。

数えるときはコミを忘れずに

話を戻して、死んで取られた石は相手の地に埋めることができます(第3回参照)。黒○を黒地に埋めて計算してみましょう。

図5

これまでは陣地の1ヵ所ずつに印をつけて数えやすくしてきましたが、今回はご自身で確認しながら数えてみてください。コミ6目半もお忘れなく(第4回参照)。「黒~目、白~目、よって、(黒白どちらか)の~目半勝ち」がよく使われる言い方です。

いかがでしたか? まずはお互いの地の数から答え合わせです。「黒13目、白11目」が正解でした。よって、盤面だけですと、黒が2目多いです。次に、コミを含めて計算すると、黒から白に6目半(6.5目)あげなくてはいけないので、黒2目から6.5目を引いて「白の4目半勝ち」となります。

囲碁は、お互いが合意すると終わるという、ちょっと特殊なゲームです。一般的なゲームは、「ゲームオーバー」の状態になれば有無を言わさず終了です。ところが、囲碁は地が完成したことを認識して合意しなければいつまでも終わらないのです。「ゲームオーバーは自分が決める」というのは、ある意味で紳士的なゲームですね。したがって、気持ちよく対局するには、お互いのマナーがとても大切です。

戦略的に見ても、囲碁は陣地の多い方が勝ちですが、自分ばかり陣地をたくさん取ろうとすると、どこかに綻びが生じて思わぬ失敗をします。私自身の経験から言えば、相手にも与えて、自分はそれよりも少しだけ多く取る、それくらいの心持ちがちょうど良いことが多いのです。何事もバランス、といったところでしょうか。
ちなみに、囲碁にはこんな格言があります。
「取ろう取ろうは取られのもと」「勝とう勝とうは負けのもと」
また、20世紀の大名人である呉清源(ご せいげん)九段はこう言いました。
「碁は調和である」

石を人に置き換えてみると……

前回は「石の生き死に」についてお話ししました。一つ一つの石が相手とのバランスを保ちながら少しずつ自分の領域を拡大していく様は、まるで躍動する生命のよう。
石を人に置き換えてみると、陣地とは人と人が手を繋いで家を作っていくというようなイメージを持つことができます。
家を国にまで広げて考えてみてもやはり、良い国(陣地)をつくるためには、人(石)の繋がりがとても大切ですね。
つまり、こう考えることもできます。「囲碁とは仲間を増やすゲーム」だと。実は、これこそが連載を通じて皆さんに伝えたいことでした。

陣地は、家や国に例えることができますが、第7回で石の生き死にを知った今、改めて考えてみましょう。最終的にできた陣地とはつまり、仲間が生存できる場所なのです。したがって、囲碁棋士である私が、囲碁を楽しむ人を増やしたくてこの連載を書く、ということはとても囲碁的であって、いえ、むしろ囲碁そのもの!

と言いたいところですが、この論法でいくと仲間を増やすことはすべて囲碁的になってしまいますね。我ながら最後まで大げさでした。大発見だと思ったのですが……(笑)。

最後になりますが、この連載を通じて皆さんに囲碁に興味を持っていただければ、とても嬉しいです。そして、いつの日か、囲碁のある場所でお会いできれば、もっと嬉しいです。いつでもお待ちしております! その日が来ることを願って、連載の締めくくりといたしましょう。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。これから良い碁縁に恵まれますように。