ホームレスから億り人をめざす・余弦さんインタビュー【前編】

  • リアル投資家列伝・3つの投資手法でホームレスから億り人目前 / 余弦

明日をも知れぬホームレス生活を経験した異色の投資家がいます。どん底から生活を立て直し、株式投資の利益で暮らせるまでになった余弦さんです。その人生も独特なら、投資手法も独特でした!

那覇・国際通りでホームレス

「那覇空港を出たらさとうきび畑が一面に広がり、住み込みで働ける――そんなイメージだったんですが、一瞬で崩されました。身寄りもなく、最初は安宿に泊まりましたが、すぐに手持ちが乏しくなり……国際通りでホームレス生活を送りました」

と振り返るのは専業投資家兼フリーターの余弦さんだ。関東育ちだが今、暮らしているのは沖縄。そもそも南国へ渡った経緯も尋常ではない。

「アメリカ留学から帰国し、関空に到着しました。空港のテレビで久しぶりに見た日本のドラマが『ちゅらさん』。沖縄を舞台にしたドラマです。どこに住むか決めていなかったので、いっそ親戚も友人もいない沖縄に住むかと、その場で決めました。『ちゅらさん』のせいで人生が詰みかけたんです(笑)」

仕事のあても、貯金も、身寄りもない沖縄へ移住。ホームレスとなったのは当然といえば当然だった。余弦さんが20代前半のことだ。

「国際通りのショッピングセンター前、屋根がついて雨宿りできる歩道が僕のベッドでした。ボランティアの人が配ってくれる賞味期限ぎりぎりのパンで糊口をしのぐ生活が1ヵ月弱ほど続きました」

絶望しかない状況……。どうやって脱したのだろうか。

「通りがかりのおばちゃんが声をかけてくれたんです。『住むところがないなら紹介するよ』と。敷金や保証人もいらないし、家賃は働いてお金が貯まってからでいい、と。家賃2万5000円、お風呂もない1Kの部屋でした。トイレは共同だし、建ってから何十年も建っているような部屋でしたが、本当に運がよかったです」

普段使うスーパーを株主優待でお得に

住居を得てアルバイトできるようになり、人間らしい生活を取り戻して、正社員の仕事にも就いた余弦さん。そこで思い出したのが、空港での出来事だった。

「関空に着いた時点で手持ちは1000ドル弱でした。その乏しいドルを円に戻したとき、100ドル紙幣のパックがひとつ1万2000円ほどだった。渡米時は1万円だったので、いつの間にか儲かっていたんです」

余弦さんが金融市場に目を向けるきっかけとなった出来事だった。この体験を思い出した余弦さんは、投資への一歩を踏み出していく。

「しかも証券会社のキャンペーンもあったので、口座を作るだけでキャッシュバックがもらえるなら作ってみようと。そうやっているうちに、株主優待というものがあることに気が付きました。当時、買い物に使っていたのが イオン  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 系のスーパー。株主になると普段の買い物がお得になると知り、買ってみたのが最初です」

給料が貯まると優待銘柄を少しずつ、買い増していった。

「よく取引したのが ビックカメラ  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 です。2009年に有価証券報告書の虚偽記載が発覚して株価が50%近く暴落しました。1万7000円ほどの投資で3000円分の優待券がもらえるなら、6年でもとが取れる。買うしかないですよね」

問題が拡大し、上場廃止となるようなリスクは考えなかったのだろうか。

「当時は株主優待がどのくらいもらえ、そのためにいくらの投資が必要なのかと、それしか考えていませんでした。なるべく優待を利回り換算した率が高い銘柄だけを買っていましたから、上場廃止なんて想像もしていなかった。ビギナーズラックですね(笑)」

5年後、株価が上昇し、配当利回りなどが低下したところで手放した。買値からは5倍以上に上がっていた。

株主優待銘柄を短期で売買

「決済のタイミングは、もっと魅力的な優待銘柄が出てきたり、配当利回りや優待の効率が低下したときです。そうやって買った銘柄のひとつが、 GMOインターネット  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 。ちょうど自宅に光回線のインターネットを引くときに各社を比較していたんです」

余弦さんが目をつけたのは、光回線を引くとキャッシュバックがもらえるキャンペーンだ。

「各社のキャンペーンを比べるとGMOインターネットの金額がいちばん高かった。しかも株主になると、GMOのサービスで使える5000円分の割引券が年2回もらえる。当時の株価は300円ほどだったので3万円の投資で年1万円分の割引です。キャッシュバックと株主優待の両方を活用し、かなり割安に高速インターネット回線を利用できました。しかも株価もご存知の通りですからね」

余弦さんの購入した2009年ころ、300円ほどだったGMOインターネット株は2018年、3000円にタッチするところまで上昇した。

「最初は優待銘柄を保有しているだけでしたが、こうした体験もあって、上がったら売り、下がったら買いと株価を見ながら売買するようになりました」

そうやって広げていった優待ポートフォリオは30銘柄弱に拡大した。

「とはいえ、株主優待目当ての銘柄は基本的には長期保有のスタンスです。普段はほぼ見てもいないですし、優待が改悪されたり、よほど先行きが悪化したりしなければ売ることもありません」

「本業と関係ない不祥事は買い」の経験則

株の世界に馴染んでいった余弦さんは株主優待銘柄以外の投資へも手を広げていく。

「リーマン・ショックでは、”売り”の取引で大きく稼げましたし、中国やインドの株式市場がバブルとなった時期には、資産1億円が見えたんです。でも、1億円を寸前にして世界同時株安……。損失? 計算していません。ふさぎこんでいたので(笑)」

含み益が1000万円以上も減り、目前だった億は遠のいた。ただ、このころには、余弦さんなりの投資スタイルが確立されていた。

「経験則として得たのが『本業に関係のない不祥事で下げた銘柄は買い』。ビックカメラでの成功体験がありましたし、 オリンパス  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 の粉飾決算でも当てはまりました。 大王製紙  ()  () 前日終値  () 始値  () 高値  () 安値  () ※株価、指数は最低20分遅れとなります。 の社長が会社からお金を借りてカジノでギャンブルに興じていた事件も、その典型。本業とは関係のない個人的な不祥事だったので下げたところを買って利益になりました」

不祥事が発覚すると狼狽売りも出やすい。焦らずに「この不祥事は本業を揺るがすほどのインパクトがあるだろうか」と落ち着いて考えみよう。そこにチャンスがあるかもしれない。