マネープラン改善、ビフォー・アフター

  • 3分でわかる・お金に困らない人生を送るためのマネープラン入門 / 竹川 美奈子Noritake

第1回で「特別な目的意識もなくお金を使っていくと、将来的にはお金が足りなくなる。お金に対する考え方を抜本的に見直して、早めにマネープランを立てる時代にきている」というお話をしました。そして、それを受けて、第2回〜4回でムダな支出をおさえる方法を、第5回〜7回で浮いたお金を貯蓄や投資に回す改善策を提案してきました。
「第7回投資信託で積み立てをするなら定番はコレ!」を読む

家計はどう生まれ変わる?

では、改善策を取り入れることで、家計はどう生まれ変わるのでしょうか。
第1回でシミュレーションしたAさんは60代前半で預金が底をついてしまいました。

3min-08_graph01*詳細については「第1回老後の破たんを防ぐため、今からマネープランを考えよう」をご覧ください。

マイホームを購入し、保険に入り、2人の子どものうち1人を私立の学校に行かせるという、親世代と同じライフスタイルを送っただけなのに破たんしてしまったわけです。
でも、大きな支出やムダな支出を見直し、そこで浮いたお金を預金に加えて積み立て投資に回していくと、Aさんの家計は、シミュレーション上では劇的に改善します。
下の図は改善後のAさんの年間収支と貯蓄残高の推移を示しています。60歳時点で約7618万円の金融資産をつくることができています。

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計算条件(改善前から変更した項目のみ記載)>

住宅費:購入しない。第1子小学校入学時に家賃15万円のマンションに引っ越し、子どもが独立したら家賃13万円のマンションに引っ越すと仮定。2年ごとに更新料1カ月分を計上。

保険:独身時代は保険には加入しない。子どもが誕生した後、収入保障保険に加入。
(改善前の計算条件は文末のAさんのプロフィールをご覧ください)

改善前と収入や基礎生活費、教育費などは変更していませんが、金融資産は確実に増えています。

Aさんが改善したこと

改善前とは何が変わったのでしょうか。
まず加入する生命保険を見直したことです。以前は更新時に保険料が上がるタイプの保険に加入していて、支払う保険料は1000万円程度かかりましたが、安価な収入保障保険に入りなおすことで、900万円近いお金を浮かすことができました。前者は一部お金が戻るため、実際には900万円の差になるわけではありませんが、保険料として支払う分は確実に減らすことができたため、その差にあたる部分を貯蓄や投資に充てることができました。
また、企業内保障についても調べたところ、万一Aさんが死亡した時に会社から遺族に支払われる弔慰金や遺児・育英年金などがあることもわかりました。そのため、保険に加入する際に、必要な死亡保障額を下げることもできたのです。

2つ目は35歳で住宅を購入するのを見送って賃貸暮らしをしたことです。2016年時点で住宅ローン金利はかなり低い水準にあります。以前に比べて支払利息は減りましたが、それでも800万円程度の利息を支払うことになります(購入時にかかる手数料や税金などの諸経費を加えると1000万円程度になる)。
また、住宅を購入しなかったので、住宅の頭金として支払った400万円が手元に残り、そのお金を運用していくことができました。

3つ目はお金に「働いてもらった」ことです。金融資産については、生活費の半年分(約210万円)を預金においておき、それ以外を世界の株式に投資をする投資信託で運用しました。運用する部分については年5%で運用をしたと仮定し(5%は国家公務員の運用を担当する機関が外国株式に投資したときに「期待リターン」として使用している数値です)、60歳時点で7600万円程度の金融資産をつくることができました。

7600万円あれば、住まいに困ることはありません。このまま賃貸暮らしを続けるというのも1つの選択肢ですし、老後生活用のコンパクトな住宅を住みたい場所に現金で購入することもできます。思いきって、海外のリゾート地などで暮らすことも可能です。
さらに、Aさんが60歳以降も働く、配偶者が正社員としてフルタイムで働き続ける――といったことを組み合わせると、より改善がすすみ、さらに金融資産を増やすこともできるはずです。

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ここまで払ったのだからという気持ちが改善の妨げに

家計の改善をするときに足かせとなるのが「サンクコスト(埋没費用)」です。サンクコストというのは、簡単にいうと「それまでに使ってしまった費用」のこと。たとえば、公共事業が「すでにこれだけお金を使ったのだから」という理由でやめられない原因もそこにあります。家計も同様で、「ここまで保険料を払ってきたのにいまさら……」という考えが頭をよぎって、結局何もしないという人もいます。
しかし、すでに加入していて保障が大きすぎたなら、減額するのが正解です。健康であれば、前述の割安な保険に入りなおすという選択肢もあります。保険料を減らすことができれば、その分のお金で子どもの教育資金や自分たちの老後資金に充てることができるからです。

資産形成をするときに将来受けとるお金は「投資するお金の額」×「リターン」×「時間」で決まります。リターンは不確実ですが、ムダな支出をおさえることで貯蓄や投資にまわすお金を増やしたり、なるべく若いうちにはじめることで時間を延ばしたりすることは誰でもできます(始めたら止めずに「継続」することも時間を長くするコツです)。

老後の経済的な不安を口にする方も多いのですが、悩んでいる間に、ムダな支出をおさえて、貯蓄や投資にお金を回すしくみ、継続していけるしくみを作ってしまいましょう。そして、第5回で紹介した個人型DCのような税制的に有利な制度もかしこく活用したいものです。

本連載を読んで「おしまい」ではなく、ぜひ「行動」にうつしてください。

<まとめ>
●大きな支出をおさえることで貯蓄や投資に回せるお金ができる
●お金を運用すると、預金100%よりは長期でお金は育つ
●「いまさら」と思わずに、即実践が大切

Aさんの改善前のプロフィール

30歳 会社員/年収:510万円(税込)/東京在住。貯蓄額:374万円

計算条件:夫の年収は税込510万円。54歳まで毎年1%昇給。55歳で給与は20%下がる。退職一時金1000万円、企業年金は60歳から10年間、年50万円ずつ総額500万円
妻の年収は税込300万円、第1子出産後、正社員からパートになり、第1子小学校入学まで年収60万円、それ以降は120万円として計算

基礎生活費:年186万円、毎年1%ずつ上昇。定年退職後は1割カット

住宅費:賃貸のとき(独身時代は月額8万円、結婚後は月額10万円)、マンション価格4500万円(諸経費含めて4720万円)。頭金400万円、4320万円を借り入れ。ローン金利1.15%・固定、返済期間30年

保険:死亡保障と医療保障がセットになった保険に加入。保険料は30歳で月1万5000円。35歳、45歳、55歳の更新時に上がる

教育費:第1子はすべて国公立、第2子はすべて私立(大学は私立文系)に進学。教育費は文部科学省のデータを基に試算

自動車:保有しない

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