日銀って何してるところ?

日本橋での営業の帰り道、ユイとタカシが通りかかったのは、日本銀行本店の本館。日本銀行は通称日銀と呼ばれ、日本経済を支える心臓部ともいえる場所だ。
先日、大事なクライアント先で営業に失敗して以来、すっかり勉強モードのユイは、経済オタクのタカシに聞きたいことが山のようにある。お金って誰がどうやって流通させてるの? 物価が上がったり下がったりするのは、なぜ? 真冬のビジネス街で、タカシの講義が始まる。

yui-05aユイ

一緒に出掛けるの、六本木ヒルズに営業に行って以来ね。私、あれからずっとタカシ君に話したいことがあって……。

takashi-04タカシ

え?! 急にどうしたの? 心配しなくても、僕はいまとくに彼女とかはいないよ!

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実は、この間すっごく反省して、経済の勉強をいちから始めることにしたの。おすすめの本とか、あとわからないことがあったらこれから教えてもらいたくて。

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……なんだ。今日はいい感じで商談が進んだし、そんなに気にすることないと思うけど。経済の勉強くらいなら、いくらでも相談に乗るよ。

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ありがとう! 早速なんだけど、ここって日銀よね? 学校で「日本の中央銀行」って習ったけど、いまいち何をしているところかわからないのよね。民間の銀行とは違って、日銀に私たちが直接お金を預けたり、企業が融資をお願いしたりすることはできないということは、わかるんだけど。

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そう、中央銀行というのはアメリカでいう「FRB(連邦準備制度理事会)」、EUでいう「ECB(欧州中央銀行)」に当たる。日銀は公的機関ではあるけど、実はJASDAQに上場している法人なんだ。

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じゃあ、私たちも日銀の株を買えるの?

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もちろん。厳密には株券ではなく「出資証券」だけど、通常の株式と同じように買えるよ。ただし、出資者が経営に関与する権利がなくて、株主総会は開かれない。配当率が額面の5%を超えてはいけないという決まりもあって、あまり魅力的な投資先ではないけどね。

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じゃあ、なんで上場しているの? 資金を集めることが目的とは思えないわ。

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日本に限らず、先進国の中央銀行は中立的な立場で国内の物価を安定させるための「独立性」をうたっている。というのも、かつて明治政府は、西南戦争の戦費調達のためにどんどんお金を刷って、ものすごいインフレを引き起こしてしまった。物価が上がって庶民はとても苦しい生活を強いられたらしい。専門知識のない政治家が野放図な金融政策を取らないよう、日銀がしっかりかじ取りする姿勢を示すためにも、民間資金を入れているという事実が必要なんだろうね。第一次世界大戦後のドイツでも同じことがあったし、歴史から学ぶことは多いよなあ。

景気がいいって、お金がどんどん動くこと

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ちょっと待って! 説明についていけない! まずは、日銀が何をしているかをおさらいさせて。

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あ、そうか。日銀の役割は3つあると言われていて、1つは紙幣の発券。お札を見ると「日本銀行券」と書いてあるけど、これは日銀が発行元だからだ。刷られたお札は、民間の銀行を通して世の中に出ていく。この紙幣発行は、さっき言った「物価の安定」にかかわってくる重要な役割なんだ。

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そこが複雑なのよね。どうやって物価をコントロールしているんだっけ。

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景気が悪くなると、「財布のひもがきつくなる」というように、企業も人もあまりお金を使わなくなる。そこで日銀が紙幣を多めに刷って世の中に出回るお金の量を増やし、さらに企業や家計にお金を貸すときの金利を引き下げて、みんながお金を借りて使うように促す。要するに、景気がいいっていうのは、企業から人、人から企業にお金がどんどん動く状態のこと。だからお金の量を増やして循環しやすくすることで、景気を刺激するんだね。ただし、やり過ぎるとインフレを引き起こし、給料は同じなのに生活費だけが上がるってことになってしまう。だから、景気が良くなってきたら、新規で発行する紙幣の量を減らし、金利を上げて世の中に流通するお金を減らす。この調整をしているのが、日銀なんだ。

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そっか! お金の流通量を増減させて、景気を調整するのね。でも、日銀は毎年新しい紙幣を発行しているんでしょ? いくら調整するといっても、増える一方で減らないんじゃないかしら。

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はは、それは大丈夫。紙幣の寿命は意外と短くて、1万円札が4~5年、5千円札と千円札が1~2年。日銀に戻ってきた紙幣のうち、汚損したりして流通に適さなくなったものを裁断して、リサイクルや焼却処分に回しているんだよ。もちろん、国が経済成長を続けている間は、企業がお金を使って工場を建てたり、人を雇ったりして世の中に出回るお金の量が増えるから、どんどん刷らなきゃいけない。でも低成長時代にも、古くなって処分したお札の補充として、新規紙幣の発行は大切なんだ。

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タカシ君の説明ってホントわかりやすいわ。

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そう? 日銀にはそのほか、民間の銀行と取引をする「銀行の銀行」という役割もある。一時的な資金不足のときにお金を貸したりして、銀行が倒産して混乱が起きるような事態を避けるための措置だね。もう1つは、「政府の銀行」。日本政府は日銀に口座を持っていて、そこで国家予算の収入と支出が管理されているんだ。

意外と知らない「マイナス金利」

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国のお財布は、日銀にあるのね。なんだか日本に出回るお金のすべてが、日銀とつながっているみたい。あと1つ、「マイナス金利」についても教えて!

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まさに、みんながニュースで聞きながらわかってないところ(笑)。日銀が民間の銀行に対して、金利を上げ下げして物価を調整していることは、さっき説明したでしょ。日本はバブル崩壊後、長い間デフレが続いている。物価もお給料もなかなか上がらないので、日銀は金利をできる限り低くして、お金が世の中に出回るような施策を取り続けてきた。それでもなかなか効果が表れないので、とうとうマイナス金利を導入した。銀行が日銀に預けている預金につく金利がマイナスってことは、金利分のお金を取られるっていうこと。

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ふつう金利はもらえるものだけど、取られてしまう!? なんだかひどい政策ね。銀行は損するじゃない。

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そこがポイントなんだ。銀行が日銀にお金を預けていても、マイナス金利で損をするなら、引き出して企業や個人に貸し出すほうがマシ。そういう状況を作り出して、お金をぐるぐる回そうというのが日銀の狙いなんだ。

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なるほど。マイナス金利の目的も、お金を循環させることなのね。

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その通り。ちなみにさっき「すべてのお金が日銀とつながっている」と言ってたけど、そうじゃないお金もある。

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どういうこと?

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500円玉を見てごらん。

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「日本国」って書いてある。日銀じゃないのね。

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経済に与える影響の少ない硬貨は、日銀じゃなくて政府が発行元なんだ。造幣局が製造した硬貨はいったん日銀に納められて世の中に流通するから、結局は日銀を通るんだけどね。それくらい深くお金に関わっている日銀は、建物の形も「円」。こうやって横を歩いても気付かないけど、上空から見ると漢字の「円」になっているんだよ。僕も最近知って、写真を見てびっくりしたんだけど。

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へえ~、タカシ君って何でも知ってるのね。教え方も上手だし、本当にいい先生だわ。ラーメン代くらいいつでも出すから、また付き合ってね!

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う、うん。なんかうれしいような、悲しいような……。

yui-01

大丈夫、ちゃんと彼女いないって言ったの聞こえてたから。

takashi-08b

え、何?

yui-08b

何でもない! さ、ラーメン食べに行こ!

今回のテーマで取り上げた上場企業
日本銀行

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