起業家の「背中を押す」キャピタリストでいたい~VC・佐藤真希子さんインタビュー【後編】

サイバーエージェント新卒1期生として会社の急成長を支え、さらに「ベンチャー企業を応援する仕事をしたい!」と、ベンチャーキャピタリストになった佐藤真希子さん。起業家を信じ、応援する仕事のやりがいと、国内の独立系ベンチャーキャピタルでは初の代表パートナーとして、数少ない女性キャピタリストとしての思いを語ってもらった。
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起業家を応援する面白さにはまった

私が起業家の魅力に最初に触れたのは、大学生のころでした。たまたま、ある学生ベンチャーを手伝う機会があったのです。そこでは、学生がサービスを提案し、大人が真剣に耳を傾けていました。肩書も年齢も関係もない自由な空気に、私は大きなカルチャーショックを受けました。

卒業後、サイバーエージェントに新卒1期生として入社したとき、会社は数十人の規模でした。そこから、藤田さん(藤田 晋・サイバーエージェント代表取締役社長)が、自ら先頭に立って会社を急成長させていく様子を目の当たりにして、「起業家は、社会を変えることができる存在なんだ」と確信を持ち、ベンチャーに関わる仕事をしたいと思うようになりました。

そんな私に、当時の上司がサイバーエージェント・ベンチャーズでのベンチャーキャピタリストの仕事を勧めてくれました。最初は何をする仕事かもよくわからず、金融の知識ゼロの状態で飛び込んだのですが、起業家を応援する仕事は自分にすごく向いていた。やればやるほど、仕事の面白さにはまっていきました。

私は2006年から2015年までの9年間、3人の子供を出産し育てながら、ベンチャーキャピタリストとしての経験を積みました。2015年4月に育児休暇から復帰した時に、同世代のベンチャーキャピタリストたちとの飲み会がありました。狭い業界なので昔からの知り合いばかりなのですが、「お前、本当に出世しないなあ」って冗談半分に言われて、「うるさいわ!」と言い返しながらも(笑)、まわりはみんな社長や、パートナーという投資の意思決定権限を持つポジションに就いていることに気がつき、ふと自分の立ち位置を振り返りました。

ベンチャーキャピタルというのは、実はものすごい「男社会」です。その飲み会にいた人たちも、私以外は全員男性でした。それまではそういった「男社会」に特に違和感を持つことはなかったのですが、なぜかその時初めて「あれ?」と思いました。

女性の起業家が増えている中、彼女らのライフステージの変化を理解し、応援できる女性のベンチャーキャピタリストもまた必要です。かつての私も含め、女性は自分のキャリアに戦略的でない人が多いのですが、それでいいのだろうか。これからあとに続く後輩のためにも、誰かが道をつけなくてはいけないのではないか。そう思い、サイバーエージェントを退職して、ベンチャーキャピタリストとして新しい道を探すことにしました。

退職後、数ヵ月をかけていろいろ試行錯誤し、また多くの方々にご助言を頂き、考えに考えた結果、志を同じくする五嶋一人と菅原 敬と、独立系のベンチャーキャピタルであるiSGSインベストメントワークスに参画することを決めました。会社にとって、3人目の取締役 代表パートナーという肩書でした。

志を同じくするパートナー、五嶋氏(右)と菅原氏(左)

子育てのおかげで視野が広がった

子育ては日々大変ですが、そのおかげで私はベンチャーキャピタリストとして視野を広げることができ、明確な視座を持つことができました。「子どもたちが育っていく未来を良くしたい」という視点です。もちろんファンドの代表パートナーとして、投資のリターンをあげるというのは大前提ですが、だからといって、お金だけもうかれば何をしてもいいという起業家に興味はありません。やはり事業を拡大することを通じて社会を良くしようというマインドを持っている起業家にしか、投資するつもりはない。パートナーの五嶋、菅原もそれをわかってくれています。

私はこれからも、社会の不自由や不便をなくし、世の中を変革していこうとする起業家を全力で応援していきたい。同時に、私はフェミニストではありませんが、いままで仕事の面白さを知りながらも、前に出ていくことをしなかった女性たちの背中を押す存在でいたい。企業にいる女性だけでなく、女性起業家でさえも、能力は高いのに遠慮がちな人が多いんですよ。男性だったらどんどん前に出てくる場面でも、自信がないとおとなしくしちゃっていて、もったいないんです。でも、これは女性特有なのですが、実績を積み上げるうちにどんどん顔つきが変わっていく。自信がついて輝き出すのです。そのスピードや成長度合いは男性起業家とはちょっと違うと感じることもあります。

人口の半分は女性なので、世の中の市場も半分は女性が握っているにも関わらず、女性のプレイヤーが圧倒的に少ない起業やベンチャーキャピタルには、女性が活躍するチャンスがあふれているはずです。より高みを目指してダイナミックに事業を構築していける女性起業家を、もっともっと応援していきたい。私自身もさらに努力して、女性ベンチャーキャピタリストとして新たな道を切り拓くことは、「より良い未来」をつくるための大切な仕事だと信じています。