老後の破たんを防ぐため、今からマネープランを考えよう

  • 3分でわかる・お金に困らない人生を送るためのマネープラン入門 / 竹川 美奈子Noritake

このままではお金が足りなくなる?

これからは、人生の一部として、仕事(キャリア)と同じように、お金を「マネジメントする」という発想が必要です。

経済が成長していたかつての日本社会では、終身雇用・年功序列賃金のもとで給与は年齢とともに上がり続けました。人口も増加していたので、公的年金制度もうまく機能していました。ですから、マジメに働いてさえいれば、お金についてそれほど意識をしなくても暮らしていくことができたのです。学校を卒業してそこそこの会社に就職すれば、お給料とボーナスで、住宅費や教育費を支払うことができましたし、万一、定年退職時に住宅ローンが残っていても退職金で完済すれば、老後は公的年金や退職金、企業年金などに頼ることができました。一度レールに乗ってしまえば、あとは国や会社が面倒をみてくれたので、個人では、仕事さえがんばればよかったのです。

しかし、今や「経済成長」「人口増」という前提は、崩れています。その上、将来的には消費税や社会保険料が上がる可能性が高く、支出は増えていく一方です。ライフスタイルの変化もあります。昨今は結婚や出産の年齢が上がっているため、50歳後半から60歳以降にも教育費がかかる家庭もめずらしくありません。住宅ローンの返済もある場合は、退職金ですべてのローンを完済することは難しくなります。また、親や配偶者の介護が必要になることもあるかもしれません。老後に受け取れる公的年金については、現状に比べて減るのは確実とみられています。

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このように、社会も、私たちのライフスタイルも変化しているのに、お金に関しては

「子どもが産まれたら家を買わなくては」
「社会人になったら保険に入るもの」
「投資はギャンブルだから手を出してはだめ」

といった古い価値観が、いまだまかりとおっています。

でも、前述のとおり、家のローンや教育費負担を終えてから自分の老後資金を貯めるという従来型のスタイルは通用しなくなっているのです。ですから、資産形成は若いうちから行っていくのが必要不可欠です。特別な目的意識もなくお金を使っていくと、将来的にお金が足りないという事態にもなりかねません。お金に対する考え方を抜本的に見直して、早めにマネープランを立てる時代にきているのです。

年収510万円の会社員Aさん(30歳)のケース

では、もしも親世代と同じような従来型の価値観でお金を使っていくとどうなるでしょうか?
たとえば、首都圏在住のメーカーに勤務する会社員のAさん(30歳)のケースをみてみましょう。Aさんの年収は税込で510万円。今年結婚したばかりで、2年後にひとり目の子どもを、そして5年後くらいにふたり目の子供を持ちたいと考えています。妻はひとり目の子どもが産まれたら、正社員を辞めて、パート勤務になり、さらにふたり目の子どもが産まれたら、マンションを購入することを希望しています。

いかかでしょうか。さほど贅沢なわけではない、どちらかというと、普通の人生の選択肢に見えませんか? しかし、シミュレーションしてみると、63歳のときに貯金が底をついてしまうという、シビアな結果になってしまいました。

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Aさんにとっていちばん大きな買い物は購入価格4500万円のマンションです。諸経費などを含めて、4720万円ほどになります。頭金として400万円を払って、4320万円の住宅ローンを組むと、頭金や利息を含めた総支払額は5500万円ほどになります。
次に多いのが教育費や生命保険料です。死亡保障に医療保障がセットされた生命保険の場合、40年で支払う保険料の総額は1000万円以上になります。

このままでは、子供の教育費(ひとりを公立、ひとりを私立と想定)がかさむ時期には年収より支出のほうが多くなるので家計は赤字となり、貯蓄を切り崩していかざるを得ません。子どもが学校を卒業すると教育費はかからなくなりますが、50代半ばから年収も下がるため満足な貯蓄はできず、60歳で仕事を辞めると公的年金がもらえる65歳まで家計は赤字続きです。そして、このままの状態では63歳のときに預金は底をついてしまいます。つまり、家計が破たんしてしまうということになります。

お金に困らない老後を送るためには

いかがでしょうか。ここまで読んで、落胆してしまった方もいるかもしれません。でも大丈夫。これをどう改善したらいいかのかをお伝えするのが、本連載の目的です。

れからは1人ひとりが自分の家を経営する感覚で、お金と付き合う必要があるでしょう。たとえば、池田さんという人なら、これからは「池田カンパニー」あるいは「池田商店」を経営していくという視点で家計を考えていく必要があります。逆説的ですが、お金から自由になるためには、「しっかり本業で稼いで」「支出をコントロールし」「貯蓄や投資に回す」しくみを早く作ることがとても大切なのです。

本連載では住宅やクルマ、保険といった大きな支出についての考え方を今までと変えること。そして、そこで、浮いたお金を運用や自己投資にまわすことを提案していきます

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運用や投資というと、とくに昨今は拒否感を覚える人も多いのではないかと思いますが、ここでおすすめする方法はまったく難しいものではありませんし、老後に向けて30年~40年単位で考えたい問題です。そして、自己投資をすることで収入を増やすこともねらいます。これらを続けて、お金がコンスタントに増える正のスパイラルに入れるかどうかが、資産形成をしていけるか否かの分かれ目なのです。

では、今回のお話をまとめておきましょう。

・特別な目的意識もなくお金を使っていくと、老後には家計が破たんしてしまう
・お金に対する考え方を抜本的に見直して、早めにマネープランを立てよう
・不用な支出を削減し、浮いたお金を貯蓄や投資にまわそう

 次回からの数回は、具体的な支出の削減策を考えていきます。

<※図1の参考>

Aさんのプロフィール

30歳 会社員/年収:510万円(税込)/東京在住。貯蓄額:374万円

計算条件:夫の年収は税込510万円。54歳まで毎年1%昇給。55歳で給与は20%下がる。退職一時金1000万円、企業年金は60歳から10年間、年50万円ずつ総額500万円
妻の年収は税込300万円、第1子出産後、正社員からパートになり、第1子小学校入学まで年収60万円、それ以降は120万円として計算

基礎生活費:年186万円、毎年1%ずつ上昇。定年退職後は1割カット。

住宅費:賃貸のとき(独身時代は月額8万円、結婚後は月額10万円)、マンション価格4500万円(諸経費含めて4720万円)。頭金400万円、4320万円を借り入れ。ローン金利1.15%・固定、返済期間30年。

保険:死亡保障と医療保障がセットになった保険に加入。保険料は30歳で月1万5000円。35歳、45歳、55歳の更新時に上がる。

教育費:第1子はすべて国公立、第2子はすべて私立(大学は私立文系)に進学。教育費は文部科学省のデータを基に試算。

自動車:保有しない

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