家は買うべきか、買わざるべきか?

  • 3分でわかる・お金に困らない人生を送るためのマネープラン入門 / 竹川 美奈子Noritake

前回、早めにマネープランを立てること、そして住宅やクルマ、保険といった大きな支出の考え方を変えること、浮いたお金を運用や自己投資に回しましょうというお話をしました。
大きな支出の代表格といえば、住宅。ほとんどの人にとって、生涯でもっとも大きな買い物は「住宅」でしょう。
「第1回 老後の破たんを防ぐため、今からマネープランを考えよう」を読む

住宅は無理に購入しなくてもいい

しかし、結論から言うと、若いうちに長期のローンを組んで、無理をして住宅を買うというのは得策ではありません。

住宅ローンを組んで家を買うということは「借金をして巨額の金融商品を買う」のと同じで、リスクの高い行為だからです。「難しい」「ハイリスク」と言われる株の信用取引を考えてみるとわかりやすいかもしれません。
信用取引という手法を使うと、手持ち資金の3倍程度の取引を行うことができ、うまくいくと利益が3倍になりますが、失敗すると損失も3倍になります。ハイリスクハイリターンであるため、「投資経験〇年以上」「過去に信用取引経験がある」など一定の条件をクリアした人だけしか取引させてもらえないことがほとんどです。

それが住宅だと、過去の購入経験を問われることなく、頭金400万円で4000万円の物件を買うというようなケースはめずらしくありません。株の信用取引には手を出さない一般の真面目な人が、住宅を買うときには株以上にハイリスクな投資をしているということになります。
家は株と違って資産になると思われるかもしれませんが、それは、不動産価格が上昇していた時代の話です。不動産価格が上昇していれば、購入後も保有する家の価格が上がっていきますが、不動産価格が値上がりするのは一部の地域に限定されている現在では、リスクの高い投資といえるでしょう(では、価格が下がりにくい地域の物件を買えばよいと思われるかもしれませんが、そうした地域はもともとの不動産価格が高く、一般のサラリーマンには手が届かないことが多いのです…)。

お金があれば、他の方法(投資信託など。今後、この連載で説明します)で資産を増やせたかもしれません。ですから、資産価値にならない住宅の購入は慎重に考えるべきなのです。

また、現在の会社員は、昔の大企業のサラリーマンに比べて立場が不安定です。今は大企業でも、他社に吸収合併されたり、部分的に売却されたりといったこともめずらしくありません。
正社員であっても、業績不振に陥ると給与削減やリストラの対象になることもありえます。そうした環境で、住宅ローンという長期の固定負債を抱えていくことはリスクがともないます。

insert01

ライフスタイルの変化と共に、家に求めるものは変わっていく

人生の段階に応じて「家」に求めるものは変わってきます。たとえば、結婚している夫婦の場合、子ども部屋などたくさんの部屋が必要な時期はせいぜい15~20年程度です。最初からそれに合わせた部屋数の家を購入すると、住宅にかけるお金も大きくなりがちです。しかも、将来子どもは独立して家を出ていきます。そうなると、夫婦2人で住むには広すぎるにもかかわらず、維持費や固定資産税は高いということになりかねません。また、住む場所も、若いうちは通勤に便利であるとか教育環境の良さといった条件で選びがちですが、そうした場所は人気があるので、価格も高いことが多いのです。

今は「そもそも住宅を購入する必要があるのか」というところから考えてみましょう。下の図に住宅購入を検討する前に考えておきたいポイントをまとめました。

3min-02_graph01

チェックの数が多ければ多いほど、いますぐ購入する必要性は低くなります。仕事(転勤や転職が多い業界・職種か否か)やライフスタイル、そして、親の持ち家の有無なども含めて、じっくり考えてみましょう。たとえば、自分や配偶者が一人っ子で親が持ち家という場合、現役時代は賃貸で暮らし、将来家を増改築する、あるいは建て直すといった選択もあります。

それでも家がほしいなら

とはいえ、やはり家がほしいという方も多いと思います。持ち家だからこそ、実現できる趣味や内装などもあるでしょう。購入すること自体は否定しません。
ただし、購入する場合、リスクをおさえるために、たとえば、

・築浅の中古物件やリノベーション物件なども視野に入れて、購入価格を下げる努力をする
・自己資金からまとまった頭金をいれる
・地価が下がりにくい場所を選ぶ

といった対策を考える必要があります。
借入金を減らしたり、返済期間を短くしたりすることで、総支払額を下げることができます。総返済額はいくらになるかを意識するとともに、慎重な返済計画を立てましょう。

・期間(60歳までに完済できるか)
・毎月の返済額は無理がないか

を意識する必要があります。全額キャッシュで購入するのは無理でも、頭金をできるだけ多くいれて借入金を少なくし、60歳までに返済できるよう計画しましょう。

3min-02_graph02

第3の選択肢もあり

最後に、賃貸か、住宅を購入するか――必ずしも、どちらかひとつを選ぶ必要はありません。第3の選択肢もあります。
たとえば、結婚や出産を機に家を買うだけでなく、「子どもが独立してから、夫婦2人で暮らすコンパクトな家を購入する」「現役時代は賃貸で暮らし、リタイア後に住みたい場所に一戸建てやマンションを購入する」という人も、最近は増えてきています。あるいは、地方都市や海外に住むという人もいるかもしれません。逆に、「若いときに購入してローンを早期に完済し、リタイア時に売却して田舎で暮らす」といった選択肢もあります。

私自身は現在、都内で賃貸暮らしです。共働きですし、打ち合わせや出張などを考えると都心で暮らすほうが便利だからです。ただ、60歳くらいになったら、海の近くで、縁側のある小さい平屋でもう少しのんびり暮らしたいと思ったりもしています。

いずれにしても、住宅は人生で最大の買い物ですから、慎重の上にも慎重を期す必要があります。「周りの人が買っているから」とか「モデルルームを見学したらほしくなった」といったあいまいな判断での購入は絶対やめましょう。ここで失敗をするとのちのちのライフプランが大きく変わってしまいます。また、退職時に多額のローンが残ってしまうと、退職一時金でローンの残りを返済せざるをえなくなり、その結果、老後のお金を減らしてしまうことにもなります。

では、今回のお話をまとめておきましょう。

・「そもそも住宅を購入する必要があるのか」を考える
・現役時代は賃貸で暮らし、リタイア後に購入するという選択肢もある
・購入する場合は、できる限りリスクをおさえる対策をとる

次回は、多くの人が加入している死亡保険や医療保険の支出をおさえる方法についてお話したいと思います。
「第3回 保険に入るなら必要最低限」を読む