「クラウド」というビッグウェーブを逃さない【後編】

  • 上場企業の社長に聞く! 夢とお金の本質・OBC 和田成史社長 / 和田 成史

「勘定奉行」をはじめとする基幹業務ソフトを開発・販売し、日本企業の生産性向上に大きく寄与してきた、オービックビジネスコンサルタント。1980年の創業以来、37年間トップとして会社を引っ張ってきた和田成史社長は、「クラウド」という技術革新の波に乗り、新たな事業戦略を描いている。会計士、IT戦略のプロ、そして経営者。3つの強みを持つ和田社長の目には、どんな未来が映っているのだろうか。
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会計界を大きく変える技術革新がやってきた

先日、電気自動車に乗る機会がありました。どういうものかなと思ったけど、運転席にコンピューターがついているだけで、ハンドル操作はガソリン車と同じ。アクセルを踏むと、簡単にすーっと運転できるんですね。電気自動車に変わって、使われるテクノロジーも製造コストもサプライヤーも以前とは全然違うけれども、運転に必要な技術は変わらない。なるほど、世の中に技術が普及するというのはこういうことかと思いました。

会計も同じで、昔は大福帳や帳簿、出納帳といった紙で管理していました。そこからオフコンが出て来て機械で会計処理を行うようになり、さらにパソコンが普及して、われわれが作ったような安くて汎用的な会計ソフトも広まりました。いずれも、簿記がわかればすぐに意味がわかって、使いこなせる。供給する側の、バックボーンの技術とは関係なく、会計に携わる人たちにメリットがあればあっという間に普及するんです。

今また、会計の世界に、大きな技術革新の波が訪れています。メディアなどでよく取り上げられる、「クラウド」という言葉がありますね。英語では「雲」という意味ですが、IT用語ではコンピューターの利用方法を指します。自分が使っているコンピューターの外側に、大きな容量のコンピューター(サーバー)を作り、インターネットを介して、そのサーバー上でデータの保存や処理を行うという仕組みです。

私はクラウドという技術革新には、大いに乗るべきと考えています。なぜなら、お客さまにとって、メリットが非常に多いからです。技術革新の波には「乗るべきもの」と、「乗るべきではないもの」があります。前回申し上げたように、2000年代のウェブ会計ソフト勃興期には、私はお客さまへのメリットが少なく、乗るべきではないと判断しました。しかし、今回は違う。クラウド化の波に乗ることで、社会にとって有益なことがたくさんある。これは、社会の正しい変化です。

会計のあり方が根本から変わる

では、具体的に、会計がクラウド化することでどんなメリットがあるのでしょうか。
例えば、コラボレーション。一緒に仕事をする人たちが、サーバー上で会計に関するデータを共有するので、コミュニケーションが取りやすくなります。いつでもサーバーにデータを取りに行き、同じものを見て話せるわけですからね。海外など距離が離れた事務所とのやりとり、外部へのアウトソーシングや協業も、やりやすくなります。

また、金融機関から受信した入出金明細データを取り込み、その仕訳を自動起票できたら、企業の会計担当はすごく楽になります。セキュリティに必要な投資は銀行がしっかりしていますから、それを使わせてもらう。効率的で、ヒト・モノ・カネすべてのムダを省けます。自社で大きな開発費を割けない中小企業にとっては、とてもいい話ですよね。

さらに、過去の会計データをサーバー上にビッグデータとして蓄積し、人工知能を使って解析することで、経営方針を考える基にすることができます。財務諸表を年度ごとに比較してみたり、入出金の項目を洗い出したりすることで、自社の財務や資金繰りがどうなっているのかを把握し、改善することにつなげられます。将来のシミュレーションもできますから、経営戦略を立てる際にも、大いに役立ちます。

私はもう40年近く、会計の仕事に携わってきました。経営者になってからは37年。それだけ長く業界を見てきた私からしても、「これは本質的な変化だ」とはっきりと言えます。今までの技術ではできなかったことが、クラウド会計でできるようになる。新しい会計の世界が開けるのです。そのうえ、使い勝手や操作性は良い。ほら、実際に見てみてください。これがクラウドで動いているのですよ。十分、ストレスなく動くでしょう。さらにスピードを上げて操作を楽にしようと、開発陣に発破をかけているところです。

自分がやらなければ誰かがやる

クラウドという言葉をメディアが使い始めたのは、ここ1~2年でしょうか。割と最近ですね。「IoT(モノのインターネット化)」「ビッグデータ」なんて言葉も流行って、UberやAirbnbのような新しいサービスが爆発的に伸び、フィンテック・自動運転など、業界を構造的に変える技術が注目されています。すべて、根本的には同じ流れにあって、大容量のサーバーを作ってクラウド化することで、ビッグデータの収集が可能になり、それを利用するIoTにつながっていく。社会を根幹から変えるこの技術革新の波に乗ろうと、多くのプレイヤーがひしめいているのが現状です。これから生き残りをかけて、激しい競争が繰り広げられていくでしょう。

私は4年前に、クラウドの可能性を確信し、開発に乗り出しました。メディアではまだそんな言葉は使われていませんでしたが、人々がアップルのiPodにiTunesをダウンロードして使うのを見て、これは社会を変えるイノベーションになると直感したのです。われわれのプラットフォームであるマイクロソフトに相談しながら、その開発についていきました。さまざまなプログラムの形式を試し、失敗もありましたが、その過程で得た開発資産はすべて財産です。4年間でかなりのノウハウが蓄積され、当時申請した特許はすでに何件か認可されました。

ですから、社会を良い方向に変えそうな「技術革新の波」が来たら、早く乗ることが重要です。正しい変化をもたらす波であれば、いずれ人々がそのことに気付き、波に乗り始める。自分がやらなければ、誰かがやるのです。会計ソフトの変革をリードしてきた当社が、クラウド会計という次世代の変化に乗り遅れるわけにいかない。そう思って、すぐに開発を始めました。

開発が進み、実際に会計ソフトをクラウドで動かしたとき、非常に感動しました。なんて使いやすく、可能性を秘めたものだろうと、心を動かされました。クラウド会計は、ヒト・モノ・カネのムダを省いて、経営戦略の役にも立ちます。これからやってくる人手不足、グローバル競争など、企業が直面する問題にも大いに貢献できる。私がクラウド会計に魅かれるのは、ここなのです。お客さまの役に立ち、社会の役に立てるという喜びが、私を突き動かしているのです。

この感動を、1人でも多くのお客さまに届けたい。儲けはその先にあるものでしかありません。お客さまが使って心地よく、仕事が楽しくなって、会社の業績も上がる――。そんなソフトを作りたいという、すべてはただその思いに尽きるのです。