第7回 非課税の口座を優先的に使おう!

前回まで、「資産形成には低コストの投資信託を活用しよう」というお話をしてきました。投資をするにあたって、国内と海外、株式や債券にどの程度の割合でお金を割り振るかを考えたり、どの商品を選ぶかを検討したりすることは大事ですが、もうひとつ考えておきたいことがあります。それは、「どこで」投資信託を買うかということです。
第6回 そもそも株式、債券、FXの違いって?  を読む

税制優遇のある口座で買おう

以前は、投資信託を「どこで買うか」を考えるときの選択肢といえば、証券会社や銀行の課税口座(特定口座や一般口座)しかありませんでした。しかし、2014年からNISA(少額投資非課税制度)という、分配金や(*1)、解約したときの利益に対して税金を支払わずに投資を行うことができる制度がスタートし、NISA口座で投資信託を購入することができるようになりました(*2)。

*1: 普通分配金の場合。
*2:公社債投信は対象外。

また、「確定拠出年金」の口座でも、投資信託を購入することができます。確定拠出年金というのは、簡単にいうと、掛け金の運用結果によって将来の給付額が変わる年金制度のことです。企業が導入する企業型と、個人が任意で加入する個人型の2つの種類があります。
2001年にスタートした企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入者は約589万1000人(2016年12月末)にまで増え、いまや会社員の約6人に1人が加入しています。
一方、個人型確定拠出年金(愛称iDeCo=イデコ)の加入者は30万6000人程度(同)と少ないですが、2017年1月から公務員や専業主婦、企業年金制度のある会社員まで、希望すれば60歳未満の現役世代が全員加入できるようになります(*3)。

*3:企業型確定拠出年金の加入者については規約の変更が必要。

投資をするとき、いくら儲かるかは不確実です。しかし、投資をする際に発生するコストは確実に儲けを減らす要因となります。コストというと金融商品の「手数料」を思い浮かべる方が多いと思いますが、「税金」も立派なコストです。ですから、税制優遇のある口座で優先的に運用したほうが長期的にお金を育てていくうえでは有利です。

個人型確定拠出年金は節税しながら老後資金がつくれる制度

とくに税制優遇の大きい個人型確定拠出年金(iDeCo)について詳しく説明しましょう。個人型確定拠出年金は自分で金融機関(運営管理機関といいます)を選んで加入し、預金や保険、投資信託などを運用していき、60歳以降に年金または一時金として受けとる制度です。掛金は5000円以上1000円単位で設定でき、上限額は属性によって異なります。たとえば、自営業の人は月額6万8000円まで(*4)、勤務先に企業年金のない会社員は月額2万3000円までです。

*4:国民年金基金と合算した額

個人型確定拠出年金の良いところは、運用益が非課税になるだけでなく、支払った掛け金が全額「所得控除」の対象となることです。そのため、所得税や住民税が安くなるという効果があります。
たとえば、個人型確定拠出年金に加入し、毎月1万円の掛け金を支払うと年間で支払う掛け金の合計額は12万円になります。この12万円はその年の所得から全額差し引けるので、仮に所得税率が10%の人(課税所得195万円超330万円以下の場合)なら、住民税(10%)と合わせると、税金が2万4000円安くなります。これは1年当たりの効果なので、加入年数が長くなるほど、その積み重ねで節税効果は高くなります(企業型確定拠出年金で加入者が個人で掛け金を上乗せする「マッチング拠出」についても同じ効果があります)。

また、運用中の利益(預金の利息や投資信託を解約したときの利益など)はすべて非課税になります(*5)。通常、特定口座などの課税口座で、投資信託を解約して利益がでると、利益に対して約20%の税金がかかります。それに対し、個人型確定拠出年金の口座で運用すると非課税となるため、複利効果が働き、長期で運用するうえで資産を増やすのに有利に働きます。
最終的に受けとるときは原則課税されますが、積み立てたお金を一時金(一括)で受けとると「退職所得控除」、年金形式で受けとるときには「公的年金等控除」の適用を受けることができます。

*5:確定拠出年金に対する課税制度 確定拠出年金の運用資産に対して、年率1.173%が課税される特別法人税が凍結されている。過去には延長を繰り返しているが、今後の動向には注目を。

ただ、退職一時金や企業年金の受取額が多い人は受けとり時期や受けとり方法について検討する必要があります。というのも、たとえば、個人型確定年金単独で退職所得控除の枠が使えるわけではなく、一定期間内に退職金(退職一時金や企業年金などを一時金でもらう場合を含む)を受けとると、その枠を共有することになるからです。

一方、NISAは売却益や分配金等は非課税になりますが、それ以外の税優遇はありません。

確定拠出年金とNISA、どっちがいい?

こう聞くと、NISAより確定拠出年金で投資信託を購入するほうがいいと思われるかもしれませんが、それぞれのメリットと留意点があります。
まず、引き出しのしやすさについてです。確定拠出年金(企業型・個人型)は原則60歳になるまで引き出すことができません。「引き出しの自由さ」はかなり制限されています。逆に、NISAはいつでも自由に売却・換金することが可能です(ただし、売却した枠は再利用できません。たとえば上限120万円に対して投資信託を20万円だけ購入し、同一年内に売却した場合でも、その年の非課税枠の残りは100万円のままです。120万円に戻ることはありません)。

運用しやすさはどうでしょうか。確定拠出年金は選べる商品が限られているものの、口座内の商品の預け替えは自由です。ひとつの商品を購入していくこともできますし、いくつかの商品を組み合わせて保有し、定期的にリバランス(当初の資産配分に戻す作業)をしながら、長期で資産をつくっていくこともできます。一方で、金融商品の売買には時間がかかり、機動的な運用には向きません。
NISAは投資信託のほか、株式やETF(上場投資信託)、外国株なども対象となっていて、金融機関によっては数多くの投資信託の中から選択をすることができます。ただし、一度売却するとその枠を再利用することができません。そのため、口座内でリバランスをしたり、商品を買い変えたりするのはむずかしくなります。

以上のようなことを考えると、「老後資金をつくる」のが目的であれば、確定拠出年金を最優先に活用したほうが良いですし、それ以外の用途を考えている場合には、NISAを活用するということになるでしょう。もちろんどちらか一方にする必要はなく、うまく使い分けで「併用する」こともできます。

高いリターンが期待できる商品は確定拠出年金で

確定拠出年金、NISAの運用益は非課税なので、老後に備えた運用をするなら、長期的に期待されるリターンの高い商品(株式に投資する投資信託など)を選びましょう。とくに企業型の確定拠出年金に加入している人は、よくわからないまま定期預金を選んでいる人も多いのですが、期待リターンの高いものに投資したほうが非課税枠を効率的に活用できます。手元にあるお金は定期預金などの元本確保型の商品に預けて、確定拠出年金では株式に投資する投資信託を選ぶのが賢いやり方です。

このように、長期的な資産形成が目的なら、確定拠出年金やNISAの口座で投資信託を買うという選択肢もあるということ、そして、税制的なメリットがあるということは覚えておきましょう。そうすれば、「どこで」優先して投資信託を購入したら良いか、おのずとわかるのではないでしょうか。 下に確定拠出年金、NISA、課税口座のそれぞれの特徴をまとめたので参考にしてみてください。

また、表には記載していませんが、平成30年からは、毎年40万円まで20年間非課税で運用できる「積立NISA」という制度も新たにスタートします(既存のNISAとの選択制)。

では、今回のポイントをまとめておきましょう。

●個人型確定拠出年金やNISAで運用すると、運用益が非課税になる
●個人型確定拠出年金は、掛け金を払うと所得税や住民税が安くなる「節税効果」もある
●投資信託を買うときには税制的なメリットのある口座を優先的に活用しよう

次の最終回では、これまでのおさらいと、運用をスタートしたあとのことについてお話しようと思います。

投資信託の基準価額は、組入れられる有価証券の値動き、為替変動等により変動します。したがって、投資者の皆さまの投資元本は保証されているものではなく、投資元本を割り込むことがあります。投資信託ごとに手数料等及びリスク等は異なりますので、投資を検討される際は、目論見書またはお客様向け資料等をよくお読みください。お問い合わせは、SMBC日興証券株式会社までお願いします。