中学生での株デビューから資産3億円〜かぶ1000さんインタビュー【中編】

  • リアル投資家列伝・本質的価値を見極める投資スタイル / かぶ1000

就職率100%の専門学校を卒業するも投資家として自立することを目指したかぶ1000さん。しかし、すんなりとはいかず20代は迷走。投資家だったはずがフリマを主戦場とする日々のなか、アジア通貨危機をきっかけに知ったのが「バリュー投資の父」と称されるベンジャミン・グレアムでした。グレアムの教えを取り入れ、かぶ1000さんは独自の投資哲学を確立させていきます。
中学生での株デビューから資産3億円〜かぶ1000さんインタビュー【前編】を読む

主戦場は株式市場ではなくフリマ会場だった

かぶ1000さんには得意な投資スタイルがある。

「『アービトラージ』です。じつは小学生のころから、アービトラージをやっていました――」

アービトラージ(裁定取引、サヤ取り)の何たるかを知るには、かぶ1000さんの思い出話を聞くのが手っ取り早い。1980年代中盤、子どもの遊びが一変した。『ファミリーコンピュータ』の登場だ。当時、かぶ1000さんは小学生だった。

「小学生くらいだとファミコンのカセットを貸し借りして、持ち主がわからなくなったりトラブルになることがありますよね。そうならないよう、学校側でみんなにカセットを持ってこさせ、名前を書かせたことがありました。ところが僕は家庭の事情でカセットを買ってもらえなかったので、悔しい思いをしました。カセットがほしければ、自分で稼いで買うしかなかったんです。そこで行なったのがアービトラージでした」

小学生がどうやって稼いだか。ファミコンブームと同時に、街中には中古ショップが登場した。あるお店では3000円のカセットが、別のお店では2500円で販売されている――。かぶ1000さんが最初に行なったアービトラージは、中古カセットの転売だった。安いお店で買い、高く買い取ってくれるお店で売却する取引だ。

「そうやって自分のカセットを買えることが嬉しかった。専門学校卒業後も、株だけで食べられたわけではありません。アービトラージで食いつないだ時代もありました。お菓子のおまけのおもちゃ、ピンバッジ、あるいはカードゲームのレアカードなど、高く売れそうなものをフリーマーケットで安く仕入れてコレクターに売るんです。高く買い取ってもらえそうな株を、安いうちに仕込んでおくという意味では結局、株も同じなんですよね。そういう意味では、小学生からやっていることは変わってませんね」

「千載一遇のチャンス! いや、本当にそうだろうか……?」

投資家として社会に出たものの実態はサヤ取りで糊口をしのぐ日々。転機が訪れたのは1997年だった。タイバーツの暴落に端を発するアジア通貨危機は世界的な株安を引き起こした。

「日本株も大きく売られました。株価が50円を割るような銘柄が200社以上あったように記憶しています。千載一遇のチャンスだと思うと同時に、不安定な情勢を前に本当に買っていいのか、確信を持てない部分もあった。自分の勉強不足を思い知らされ、投資関連の書籍を読み漁りました」

図書館に通い、著名な外国人投資家の本を読破していくなか、運命の1冊に出合う。ベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』だ。

「グレアムは『バリュー投資の父』と呼ばれ、また世界的な大富豪であるウォーレン・バフェットの師匠でもあります。そんなグレアムの本を読み、僕がぼんやりと考えていたことに確信が持てました。割安な株への投資が長期的に好パフォーマンスをもたらす、ということです」

1万円入りの財布を6000円で買う

グレアムの教えと出合った1998年、かぶ1000さんの投資法はしっかりと根を張り、ブレがなくなった。

「グレアムから取り入れたのが『ネットネット株』でした。ネットネット株とは『1万円が入った財布が、6000円で売られている』ような銘柄です。そんな財布が本当に売られていたら間違いなく買いますよね。株式市場にはそんな銘柄があるんです」

グレアム流にアレンジを加え、現金や有価証券など流動性の高い資産から負債を引いた金額が時価総額よりも多ければ「かぶ1000流ネットネット株」だ。ネットネット株かどうかは決算短信と電卓があれば、すぐ判定できる。

(A)現金及び預金+受取手形及び売掛金+有価証券+投資有価証券
(B)貸倒引当金+負債合計
(A)-(B)=正味流動資産
「正味流動資産>時価総額」ならば、かぶ1000流ネットネット株

ここで計算しているのは、「ほぼ現金」といえるような換金性の高い資産をいくら持っているか(正味流動資産)。それに対して市場はいくらの値札をつけているか(時価総額)を比べていく。「ほぼ現金」といえるような資産を10億円持っているのに、時価総額が7億円だったら、その会社は超割安だということになる。

例えば、2016年6月1日、かぶ1000さんは丸八ホールディングスを800円で300株買い増した。理由は、「ネットネット株度を再確認でき、配当利回りも3.74%と高かったから」だと言う。その10ヵ月後の2017年3月31日、丸八ホールディングスの終値は909円へ上昇した。

かぶ1000さんがバリュー投資を徹底するようになった時期、市場ではITバブルが発生していた。ソフトバンクや光通信、ヤフーなどの会社がもてはやされ、株価も高騰していった。

「そんな時代でも僕が買ったのは地味なバリュー株。バブルの恩恵は受けられませんが、そのおかげで収益は安定しました。ITバブルが崩壊しても、ろうばい売り(株価急落時に、あわてて売ること)をせず、逆にバブルに踊らされて高値づかみさせられることもなく、プラスを保てた。このやり方が自分に合っていると確信できました」

しかし、ネットネット株には「罠」もあった。ネットネット株となるような銘柄は超割安といえる。超がつくほど割安な状態で放置されるということは「社名が知られていない」「業界が成熟しており成長性に乏しい」「一族経営で浮動株(市場で流通する可能性が高い株式)が少ない」など、何らかの理由がある。

「トラップ」対策の「カタリスト」

「何かしら、市場が注目する材料が出ないと、割安な状態のまま放置される『バリュートラップ』にハマりがちです。株式投資とは美人投票だとケインズも言っていましたよね」

美人投票、つまりミスコンのような大会で誰が優勝するかを予想するには、「誰が美人か」を考えるのではなく、「審査員は誰が美人だと考えるか」を考慮しないといけない。株式投資でいえば「市場参加者はどの会社が成長しそうだと考えるか」が焦点になるということだ。

「そうであれば市場参加者の注目を集めさせる材料(カタリスト)の有無も重要です」

カタリストとして考えられるのは、地方の証券取引所から東証への市場変更、株主優待の新設、TOB(株式公開買い付け)などだ。

「何がカタリストとなるかはわかりませんが、大株主のリストからTOBの可能性を考えたり、社長のインタビューなどから株主還元の意欲を推測したりといったことはできます。なるべくカタリストが出てきそうな銘柄を選ぶようにしています」

バリュー投資家を悩ませるバリュートラップ。割安度だけでなく、話題となりうる要素を秘めているかを意識していくことで投資家としてのステップアップも狙えそうだ。

バリュー投資を基本スタイルとするwww9945さんの記事も読んでみる!
年収300万円会社員から資産2億円へ〜www9945インタビュー【前編】