中学生での株デビューから資産3億円〜かぶ1000さんインタビュー【後編】

  • リアル投資家列伝・本質的価値を見極める投資スタイル / かぶ1000

自分なりの方法論を確立させた後は、かぶ1000さんの資産は安定的に増えていきました。ポートフォリオ全体をひとつの会社に見立てる考え方や銘柄との付き合い方など、これから投資を始める人にも参考になる話を教えてくれました。
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年間でマイナスとなったのは1回だけ

ネットネット株の概念を獲得したかぶ1000さんの資産は急増していく。2000年に600万円で再始動すると2011年には累積利益が1億円を突破、さらに2015年には3億円を超えた。

「1億円までに10年以上かかっているように、僕のやり方だと派手なパフォーマンスは望めません。しかし、地道に稼いでくれ、暴落時にも資産を急減させないで済むことが強みです。さすがにリーマンショックで日経平均が7000円割れまで急落した2008年はマイナスでしたが、それ以外、マイナスとなった年はありません」

ゆっくりと、しかし着実に資産を築いていこうと考えている人に、かぶ1000スタイルはうってつけかもしれない。

「株式投資を長年続けてきて思いますが、会社の業績を正確に予想することはできない。まして世界経済の先行きを読むことなんてなおさら難しい。リーマンショックにしてもブレグジットにしても、誰も予想できなかったでしょう。そんな世界で個人投資家がお金を減らさず投資を続けていくためには、会社の本質的価値に着目するしかないんです」

夢の国で探す有望銘柄

本質的価値に比べ割安に評価されている銘柄、どう探すのだろうか。

「実は明日、東京ディズニーリゾートに行くんです。長時間並ぶこともあるでしょうが、“コレ”があれば大丈夫。いい会社がないか探していれば待ち時間は苦になりません」

そう言ってかぶ1000さんが取り出したのは会社四季報だ。

「人間が不安になるのはわからないことがあるからです。それは株でも同じ。少し株価が下がっただけで不安になるのは、その会社のことをわかっていないからです。株を買うにはその会社のことをよく知る必要があり、四季報を読むのはその第一歩です」

真っ白な四季報から始まった30年の付き合い

株式投資の定番ツールである四季報。かぶ1000さんにとっても欠かせないツールであり時間の経過を忘れさせてくれる愛読書でもある。

「最初に手にしたのは証券会社に入り浸っていた中学生の頃でした。自分で買うのではなく、証券会社に備えてあったものを読んでいました。だから、僕にとって四季報の表紙は“白い”んです」

店頭で売られている四季報は季節ごとに赤や緑、オレンジなど鮮やかに彩られている。しかし、証券会社に配られるものは広告がなく、白い表紙だった。

「新しい号が出て不要になった古い号をもらっていました。自分で最初に買ったのは1992年の第1集。それ以来、毎号欠かさず購入し、すべて保存してあります」

会社を知るための第一歩である四季報。これをきっかけにかぶ1000さんは企業への理解を深めていく。

会社を80%理解するために必要な3つのステップ

「まずは四季報で会社の概要を見る。これで会社のことを20%は理解できると思っています。気になる会社なら、その会社のサービスや商品を実際に利用してみる。これでプラス10%。さらにホームページで有価証券報告書を過去15年分さかのぼって目を通します」

有価証券報告書とは、投資家向けに企業が開示する書類。損益計算書や貸借対照表などの財務諸表などが含まれている。

「この“有報”を15年さかのぼれば、いい時期も悪い時期もある。リーマンショックのようなことがあって、その間に企業の業績がどう移ろったのか、おおよそ理解できます。ここまでやることで企業への理解度を80%まで高められると考えています」

過去15年というと楽な作業ではないだろうが、大切な資金を託すのだから、そのくらいの努力は必要なのだろう。

「80%まで理解していれば投資判断をくだすのに十分でしょう。残り20%は株主総会に出席したり、IR(株主や投資家に対する広報活動)の部門へ電話したりと、会社と直接触れ合わないと理解できない部分です。僕の場合、そこまでして理解しようとするような会社はすでに株を買っていることが多く、さらに買い増すかどうかの判断に使うというイメージですね」

バフェットも取り入れた「ルックスルー利益」とは

こうした話を聞くと、かぶ1000さんの投資スタイルは少数銘柄への集中投資を想像するかもしれない。「そこまで調べるなら、惚れ込んだ数社に資金を集中するのだろう」と。

「僕の場合、よくも悪くも銘柄に惚れ込むようなことはありません。僕が見ているのは『どれだけ割安か』だけ。もっと割安な銘柄があれば、すぐにスイッチングします。とくに株価が急落するようなことがあると、割安度が急に高まる銘柄が出てくることもあるので気をつけています」

ある銘柄に対する割安度のモノサシとして使うのがグレアム流のネットネット株だったが、ポートフォリオ全体に当てはめているモノサシが「ルックスルー利益」だ。

「ウォーレン・バフェットが取り入れている考え方です。たとえば10室のマンションのうち、2室を持っていたとします。この場合、マンション全体の賃料収入に対して自分の利益は20%ですよね。同じように会社全体の利益に自分の保有株比率をかけたものがルックスルー利益です」

株価情報のページを見ていると「EPS」(1株あたり利益)が出ているから、それに自分の持ち株数を掛け算することで簡単に求められる。

「今はポートフォリオ全体で年間2000万円ほどのルックスルー利益になります。それに対して投じた資金は1億8000万円ほどです。なるべく小さな資金で、ルックスルー利益を高めることが目的のひとつとなります」

ポートフォリオをひとつの会社に見立てる発想

資産についてもルックスルー利益と同じ発想で考えられる。

「ポートフォリオ全体をひとつの会社と見立てると利益が年間で約2000万円、資産は4億円強。そんな会社を1億8000万円で買えたと考えるとお得ですよね。この発想でより少ない資金で、ルックスルー利益や資産を増やしていくことをめざします」

ポートフォリオ全体の本質的価値を高める発想、ともいえるだろう。幼少期の中古ファミコンソフトの売買、フリマでのアービトラージ、そして今のネットネット株――投資対象は変わっても、かぶ1000さんが行なっているのはすべて「本質的価値」に比べ割安な値札がついたものを売買する行為だ。

「日本株には異常に割安な銘柄がまだあります。割安株を狙うという行為は、適正価格に引き上げることにつながります。適正な株価になれば経営者も従業員も株主もハッピーになる。今はNISAという有利な仕組みもありますから、まずは100万円くらいで割安株ポートフォリオを組んでみてはいかがでしょうか」

「四季報」について詳しく知りたい方は、ひふみ投信のファンドマネージャー・藤野さんの連載もチェック!第7回では、四季報でまず見るべき箇所、注目すべき見出しなどが紹介されています。