第3回 超集中状態「フロー」に入る方法

前回、超集中状態「フロー」の仕組みについて説明しました。では、実際にどうやったらフローに入れるのでしょうか。今回はその方法を具体的にお話しましょう。フローに入るには、全部で4つのステップがあります。
第2回「アイデアが出やすくなる? 超集中状態『フロー』とは」を読む

これらのステップを仕事のシーンに合わせて説明していきます。

怒りでも恐怖でも、強い感情であればなんでもいい

まずは、「強い感情を感じる」。よくあるのは、締め切りのプレッシャーですね。「やらなきゃ」という焦りや恐怖を感じるということです。あとは、高い目標を持つこと。この仕事でこういうことを達成するんだ、という希望を持つのも有効です。私たちの場合は、強い興味がわいてワクワクするという感情を高めることが多いですね。むしろ興味が高まらないと、その仕事を始めないようにしています。

でも、そんなに強い興味がもてる仕事ばかりではないのが現実です。そういうときは、別の感情を呼び起こすようにしています。やりたくない仕事なら、「なんでこんなことやらなきゃいけないんだ!」という怒りでもいい。とにかく強い感情であればなんでもよいのです。その仕事に関連する感情でなくても大丈夫です。
極端なことを言うと、仕事前にジェットコースターに乗って恐怖を感じるのでもOK。もっと日常的な例で言うと、夫婦喧嘩でイライラする、満員電車で不快な思いをする、なども有効だと考えられます。アインシュタインは、一般相対性理論をつくったときは、奥さんとの離婚訴訟で相当怒っていたと言われています。それがきっと、彼の仕事にいい影響を与えたのではないでしょうか。脳はただ感情の強さに反応するだけで、仕事に関係あろうがなかろうが、内容は区別していないのです。

締め切りに追われているときは「開き直る」のも効果的

2つ目のステップは「一気にリラックスする」。リラックスするために一番簡単な方法は、「ゆっくり息を吐く」です。第1回に登場した、集中力を数値化するアプリ「JINS MEME OFFICE」を思い出してください。集中を持続させる「ココロ」のポイントを上げるには、安定した呼吸が重要だと書きました。呼吸を整えると人はリラックスすることができるのです。

ポイントは、息を「吐く」ことから始めること。緊張をゆるめるために「深呼吸するといい」と言われたことはありませんか。このとき、息を「吸う」ところから始めると、さらに緊張してしまうので要注意です。
あとは、「かわいい動物の癒やし動画を見る」「お茶を飲む」といった、よくあるリラックス方法も有効です。また、締め切りに追われているときは「開き直る」ということも効果的です。気が焦っているばかりでは、いつまでたっても集中できません。いったん、「終わらなくても、死ぬわけじゃない」と開き直ることでリラックスでき、次の行動に移ることができます。

もうひとつ、「自分を客観視する」というリラックス方法があります。ミュージシャンの矢沢永吉さんとサッカー選手の本田圭佑さんの共通点とは何か、わかりますか?
それは、自分のことを名前で呼ぶ、ということ。矢沢永吉さんが、「矢沢は……」と語るのは有名ですが、本田圭佑さんもそうしているということに、私たちは彼が出演する番組を観ていたときに気づきました。そのなかで本田さんは、調子が悪かったときにはチームを抜けることも選択肢に入れていた、と言っていました。その次に「でもね、そこから本田圭佑との対話が始まるんですよ……」と続けました。一瞬、「え、自分のことをフルネームで呼んだ……?」と混乱したのですが(普通はそんな言い方しませんよね)、これがまさに客観視しているということだと気づき、さすが一流選手は自分を律する力に長けている、と感服しました。

「自分との対話」でも同じことですが、名前で呼ぶことにより自分の心の中にいるもう一人の自分の存在がはっきりします。これは、自分を俯瞰で眺めることに近いかもしれません。たとえば「怒り」という強い感情からリラックス状態に移行するときは、少し視点をずらして「怒っている自分」を認識するとリラックスしやすいのです。

フローというのは、リラックスしていて、かつ適度なストレスがかかっている状態だとも言えます。その状態を意識的につくるのがこのステップです。

リラックスとストレスは両立しないのではないか、と思われる方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。下図のように整理するとわかりやすいでしょう。

多くの現代人は、通常時は、右下のストレスがかかり、リラックスできていない状態のことが多いです。だからこそ、フローに入るときにはリラックスするというステップが必要です。「やる気がでない」というのは、リラックスだけしていて、ストレスがない状態です。これは、同じ仕事をずっとしていて、その環境や作業内容に慣れすぎてしまっている状態、とも言えます。そういう場合はリラックスするよりも、仕事の内容を調整したりして、適度なストレスをかけたほうがフローに入りやすくなるでしょう。自分がいまどの状態にいるのか、ということを把握することが大切です。

それでは、今回のポイントをまとめておきましょう。

●フローに入るには、全部で4つのステップがある
●まずは、強い感情を感じ、一気にリラックスする
●ストレスとリラックスは両立する

次回は、フローに入るための4ステップの後半、「目標行動の実施をイメージする」「動作に入る前のルーティン」についてお話ししていきます。