株式投資で学んだ、成功する企業の「共通点」【後編】

  • 上場企業の社長に聞く! 夢とお金の本質・GMOインターネット 熊谷正寿会長兼社長・グループ代表 / 熊谷 正寿

「インターネット産業で1番になろう」を合言葉に、ドメインやネット決済などのネットインフラ、WebサイトやSNSなどのネット広告・メディア、そしてFX取引などのネット金融事業を展開し、多くの分野でトップをひた走るGMOインターネット。同社の創業者であり、会長兼社長・グループ代表を務める熊谷氏は、若いころに始めた株式投資が事業に大いに役立ったと言う。後編は、熊谷会長が「投資から学んだこと」を紹介する。
「1番」だから、自分も周囲も笑顔でいられる【前編】を読む

やると決めたらまず基本を徹底する

私は20歳で株式投資を始めました。当時、父が経営する会社を手伝っていたのですが、身内である私は安月給しかもらえない。ちょうどその頃、結婚して娘が生まれましたが、全然お金がなく、文字通り傾いた家に住んでいました。
私の父は戦後、満州から引き揚げて来てから商売を始め、事業と不動産業、株式投資で一定の財を築いた人物です。その父から、お金を増やすには働いて得るお給料だけではなく、投資をしなくてはいけないと言われ、なるほどと思いました。

父から譲り受けた事業家の血が、私にも流れているのでしょう。そのころから私は、「いずれ起業し、35歳までに会社を上場させる」という大きな夢を持っていました。その夢をかなえるためにも、投資で起業のための資金を増やそうと考えたのです。

少ないお給料の中から毎月こつこつ貯金をし、元手を作りながら株式投資の勉強をしました。日経新聞の株価欄を切り取って、方眼紙に手書きのチャートを作って毎日記録をつけました。それを何年も続けたので、切り抜きだけで山のような束ができたほどです。

私は、何かをやると決めたら徹底的に勉強します。企業研究はもちろんのこと、日本経済や産業のしくみを知るための本、人々の投資行動を学ぶ心理学の本まで読みあさり、ポイントは何かを学んでいきました。そうしたうえで、迷いなく一直線に実行する。

20万円ほど貯金ができたところで、最初に買ったのは東芝の株でした。いまは厳しい経営状況になっていますが、当時は成長中の企業でした。その後も日本電信電話(NTT)株の抽選に当たったり、さまざまな株を売り買いしながら、資産を増やす術を覚えていきました。

これまでで一番利益が出たのは、ヤフー株です。1997年に店頭売買有価証券市場(現・ジャスダック)に登録され、200万円の初値がついていました。そのころ私は起業し、インターネット事業で生きていくと決めていましたから、インターネット関連の株が買えるのなら真っ先に買わなければと思いました。「インターネットの産業が伸びる」と信じて事業を始めたのですから、当然です。

ご存知の通り、ヤフーは検索大手としての地位を着実に固め、株価はどんどん上がりました。数百万円の投資が億単位にまで増えて、かなりの売却益を得させていただきました。

企業研究を重ねていきついた「結論」

株式投資のための勉強は、事業を起こすうえですごく役に立ちました。20代前半で「起業する」と決めたものの、どんな事業がいいかわからない。そう思いながら投資のための企業研究をしていて、成長し続ける上場企業の収益モデルには、共通点があると気がついたのです。

それは、顧客を囲い込む「ストック・ビジネス」であること。飲食店や小売店のような、都度の売り上げで収益を上げる「フロー・ビジネス」よりも、通信事業、電力・ガス事業のように、顧客と契約を結んで継続的に取引を行うストック型のほうが、長く安定的に成長できる。そう気がついて、「ストックで1番になれそうな領域」をひたすら探していきました。

インターネットの存在を知ったのは、1990年代に入ってからです。日経流通新聞(現・日経MJ)から得た情報なので、決して時代を先取りしたわけではありません。ただ唯一、周囲と違ったのは、私がそのとき「ストック・ビジネス」の空白を探し求めていたこと。当時、インターネットでいろいろなことができるようになるということは、多くの人が予測していました。しかし私のように、「ストック・ビジネスとしての可能性」に気付いた人は少なかった。「これしかない!」と思い、神様に感謝したことを覚えています。

そこからは、インターネット関連でインフラになりそうなものを次々に押さえていきました。プロバイダー事業から入って、ドメイン、サーバー、セキュリティ、電子決済――。各分野に参入し、猛スピードで事業に投資し1番になっていく。プロダクトとサービスの質・量ともに1番になり、お客さまをストックしていく。そして他社が気付いたころには、もう参入が難しい。そんなビジネスモデルを構築し続けて、今に至ります。

株式投資の勉強で、もう1つ気付いたことがあります。20代前半の当時はどうすれば儲かるのかを一生懸命考えて、成長企業への投資をしていたのですが、あるときふと「自分で会社を成長させて、上場すればよいのでは?」と思ったのです。
それからは、最も力を注ぐ投資の対象は、自分の会社。なんでもそうですが、参加する側より、主催者側になるほうが、やりがいも得られるし利益につながりますからね。

どんなことにも「原因」と「共通点」がある

世の中で起きていることには、すべて原因があり、うまくいくことにも失敗することにも共通点があります。私は『会社四季報』や企業の歴史を書いた本などを読み込んで、事象を観察するのが好きです。その中から栄枯盛衰の原因を見つけ、成功している会社の共通点を探していくのです。

そうやって見つけた「ストック型の収益モデル」は、今後ますます強化していきます。その中でいま最も力を入れているのが、インターネットを使った金融業です。これから、あおぞら銀行との合弁による新ネット銀行の設立や、新型通貨(ビットコイン)の交換・売買ができるサービスの立ち上げなど、さまざまな事業がスタートします。これらの金融業が、われわれの提供するインターネットのサービスをつないで、ワンストップでお金を銀行から引き出して決済できれば、すごく便利になりますよね。

国内は人口減少によってマーケットが縮小していくので、その分の成長を海外へ広げる対策も打っています。狙うのは、英語圏以外のアジアです。英語圏の国はやはりアメリカが強いので、それ以外のアジアの方々に、われわれが築いてきたプロダクトとサービスを提供し、使っていただきたいと考えています。

事業の大前提として、「インターネットは産業革命である」という思いがあります。
過去の産業革命を研究すると、平均して55年間は続いています。日本でわれわれがインターネットのインフラ事業を始めて、今年で21年目。そうすると、あと約35年はこの革命が続くと考えていい。そういう読みがあるので、怖がらずに事業への投資を続けられるのです。

いま、この瞬間を夢に向かって全力で生きる

人はよく勘違いするのですが、人生で最も大事なリソースは、「お金」ではなく「時間」です。なぜなら、時間は限られていて、いまこうしている間にも、あっという間に過ぎていってしまうからです。

私は若いころから、時間をむだにしないよう夢を明確化し、手帳につけて管理してきました。事業については、35歳のころに立てた88歳までの「55年計画」で、売り上げ10兆円企業を最終目標としています。それまでのプロセスも細かく設計し、日々実現に向かって行動しています。

生まれてきたからには、自分が生きた証を残したいと思うのが人間です。でも、「成功したい」と思うだけで具体的な夢がないと、結局何もしないで人生が終わってしまう。また、たとえ夢があったとしても、人間は弱いですから、日常の雑事に追われているうちに時間が経ち、夢に近づけないまま歳を取る人も多いでしょう。

そうならないように、具体的な夢を書き出し、逆算して今年、今月、今日、いまこの瞬間に何をすべきかを設計し、実行するのです。私が夢を書いた手帳をいつも携帯しているのは、些事に追われたりなまけたりする「弱い自分」を律するため。手帳は夢の想起装置なのです。

みなさんもぜひ、夢をかなえたいなら手帳はもちろん、ベッドの上にもトイレの壁にも、目につくあらゆるところに貼って忘れないようにしてください。いま、刻々と過ぎていくこの瞬間も、命というリソースを削って何かをしている。大切な時間を無為にしないよう心掛け、自分を鼓舞し、目標に一歩一歩近づいていくのです。

夢がかなえば、自分だけでなく、周囲も幸せになる。そうやって自分を磨き続け、周囲を笑顔にし続けることが、私の人生の願いです。