芸人の夢破れ億トレへ〜むらやんさんインタビュー【前編】

  • リアル投資家列伝・芸人、ビジネスマンを経て気づいた株式投資の魅力 / むらやん

投資家オフ会の主催者として、株式セミナーの講師として、あるいは軽妙な文章をつづるブロガーとして、あちこちで活躍するデイトレーダーのむらやんさん。「むらやんさんをきっかけに株を始めた、デイトレを知った」という人も多く、「日本株の営業マン」的な存在です。そんなむらやんさんが、株を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

同期から売れっ子芸人が続々

「大阪の22期生出身ですと話すと、吉本興業の人に言われるんですよ。『あぁ、当たり年だね』と。同期の中で最初から目立っていたのがキングコング、M-1グランプリを制覇したNON STYLE、それにウーマンラッシュアワーに平成ノブシコブシ、南海キャンディーズの山ちゃん――」

そう語るのは、「NSC」(吉本総合芸能学院)出身の異色のデイトレーダーむらやんさんだ。

「よくある話です。中学でも高校でも『学校イチ、オモロイやつ』だったので、先生に冗談交じりに言われた『お前は吉本がええんちゃうか』という言葉を真に受けてしまった。株? そのころはまったく縁のない世界。自分がデイトレーダーになるなんて想像もしていませんでした」

NSCへの入学手続きもしないままに18歳で故郷から単身、大阪へ。バイトをしながら入学方法を調べ、芸人への第一歩を踏み出した。

「ところがNSCは全国の『学校イチ、オモロイやつ』が集まる場所。知っている人に笑ってもらうことと、知らない人に笑ってもらうことは全く違いました。当時から光っていたのがキングコングの2人です。スピード感がまったく違った。入学から半年後にはもうラジオ番組に出ていた記憶があります。悔しかったですよ、当時はまだライバルだと思っていましたから」

10回のコンビ結成とコンビ解散

在学中から賞レースで活躍していたキングコングに対して、むらやんさんは――。

「コンビを組んでは解散しての繰り返し。結成と解散を10回ほど経験しました。理由は、お互いが『自分がサイコーにオモロイ』と思っているからです(笑)。一方が『これがめちゃくちゃオモロイ』と提案しても他方は『絶対滑るやん』と思う、どちらかが妥協して先生にネタを見せてもやっぱり滑る、お互いのセンスが信じられないから解散する。その繰り返しです」

芸人への夢がくじけるまで、多くの時間はかからなかった。

「自分のセンスに本当の自信があればピン芸人になったのでしょうが、そこまでの自信はなかったし、なによりもお金がなかった。NSC通いでバイトする時間もない。かといってお金もない。この生活が何年続くんや……そう考えるともう続けることはできませんでした。でも、僕はコロっと気分転換できるタイプで、最初の夢が破れたなら2番目の夢を目指そうと。それがビジネスで成功してお金持ちになることでした」

むらやんさんが選んだのは、デイトレーダーへの道……ではなく、不動産営業の仕事だった。

「お客さんってだいたい少し無理めな相談をしてくるんです。それに対して最初から妥協を迫っても契約は取れない。同じ家賃で古い、普通、きれいと3つの物件があるとすると、まず古いものから見せて相場を理解してもらう。次に普通の物件、最後にきれいな物件を見せると『相場に比べたら、最後の物件はよさそうだ』と納得して契約してもらえるんです」

「株は賢い人しかやったらあかん」の誤解

不動産営業の仕事は歩合給だった。多く契約を取れば、それだけむらやんさんの収入も増える。1年ほど働いた結果、21歳にして口座残高は1000万円ほどにふくらんだ。

「じつはこのとき、株ってどうなんやろと頭をよぎったんです。でも、当時は株をやっている人なんて周りに1人もいなかった。株を始めるには元手がもっと必要なんちゃうんか、めちゃくちゃ勉強しないといけないやろ、そもそも株なんて賢い人しかやったらあかん――そんなイメージが先行して結局、手を出さなかったんです」

むらやんさんが株を始めたのはこの5年後、26歳のときだった。

「営業の仕事を続けて独立、会社を作ったものの、人間関係などに悩んでいた頃に、取引先の人が『ライブドアの株でめちゃくちゃ儲かったよ』と話してくれたんです。自分もすぐに証券口座を作り、500万円を入金しました。その人がオイシイ株を勧めてくれるんじゃないかと期待して(笑)」

もちろん、そんなうまい話はなく、会社も解散。芸人の夢が破れ、ビジネスでの成功という夢も潰えたとき、救いとなったのが証券口座の存在だった。

「仕事もなく、家でひとり。何もすることがないなと思ったときに、ふと、そういえば証券口座があったなと思い出したんです。取引ツールのマニュアルを読みながら、手順どおりに発注したのがイトーヨーカ堂(現セブン&アイ・ホールディングス)株。怖くなって、5秒後には決済しましたが(笑)」

芸人、ビジネスでの成功に続く、第3の目標が生まれた瞬間だった。これ以降、むらやんさんはデイトレーダーとして生きることになる。