「イベント投資」で億へ到達〜夕凪さんインタビュー【中編】

  • リアル投資家列伝・身の回りのイベントから読む投資のヒント / 夕凪

シリコンバレーへの赴任をきっかけに始めた株式投資。100万円以上の損失を出したものの、日本に戻ってからも模索を続けた夕凪さん。そこで見つけたのが「株にはある時期に、買わないといけない人がいる。それを先回りして買う」という「イベント投資」の発想でした。そのシンプルなルールの裏に、夕凪さんの努力が隠されていました。
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常識を疑う――専門家の意見は本当なのか

株式投資の世界ではさまざまな分析や手法が存在する。そうした情報を見て、「有名なあの人が言うなら」と、すぐにマネをし、そして失敗する人は多い。

「私自身も以前はそうでした。株式評論家や専門家の言うことは正しいと思いますよね。でも、あるとき、調べてみたんです。『彼らの言うことは本当なのだろうか』と。たとえば『節分天井・彼岸底』について調べてみました」

「節分天井・彼岸底」は有名な相場格言。節分の時期である2月上旬に高値をつけやすく、お彼岸の3月中旬に安値をつけやすいとされている。これを持ち出して相場を占う専門家は少なくない。

「私が検証したかぎりでは、まったく逆。むしろ『節分底・彼岸天井』になっていました。それなのに専門家たちは『節分天井だから上がりやすい』と解説するわけです。それを信じて投資していたら損をしてしまうと思いました。相場では『常識』とされていることを調べていくことがおもしろくなり、その積み重ねで新しい投資法が開拓されていきました」

過去の株価データはインターネットを検索すれば取得できるし、よほど複雑な「常識」でないかぎり、エクセルが使えれば個人でも検証することが可能なはずだ。

「もらわない」株主優待投資法

「2003年末から始めて、2、3年かけていろんな投資法を検証していきました。そのひとつが株主優待を利用した投資法です」

株主優待は、ある会社の株を権利確定日に持っていればもらえる。しかし、夕凪さんが行なったのは「もらわない株主優待投資」だ。

「優待の内容が魅力的な会社の株は、権利確定日に向かって買われます。権利確定日が3月末ならおよそ2〜3ヵ月前、1月末頃から株価が上がり、権利確定日の直前に高値をつけて、権利確定日を過ぎると下落する、といった値動きはよく見られます」

「今月はどんな株主優待があるだろう」と雑誌などを見て、「これが欲しい!」と思った個人投資家は権利確定日の前に買っていく。権利確定日を過ぎると「優待の権利が確定したから売ろう」と処分するのが、株主優待が欲しくてたまらない典型的な投資家の行動。その結果、「権利確定日前に上昇、権利確定日翌日から下落」というパターンが発生する銘柄がある。

「毎年そんな傾向が強い銘柄なら、株主優待狙いの投資家が買う前に買っておき、権利確定日の直前に売却することで値上がり益が狙えます。株主優待の価値以上に、多くの利益が得られることも珍しくありません」

人気の優待銘柄は先回りして買う

株主優待というイベントを狙うが、株主優待はもらわない。夕凪さんならではのイベント投資法だ。

「含み益が出始めるとつい『優待、もらいたいな』と思ってしまいますが、私にとってそれはワナ。権利確定日の翌営業日以降は買値よりも下がってしまうことも多いんです。私も株主優待を狙って買うこともありますが、大切なのは事前に優待を狙って買うのか、値動きで儲けるのかを決めておき、それを守ること」

この投資法が効果を発揮するのは、多くの個人投資家が「あの優待、欲しい!」と思うような銘柄だ。

「それもオリエンタルランドのような時価総額が大きい大型株ではなく、中型以下の銘柄ですね。銀行や証券会社などのプロが手がけることが少ないですから。株主優待の人気ランキングなどを参考にして、権利確定日の前後でどんな値動きをしているか、過去のチャートで検証するといいでしょう」

あなたが欲しいと思う優待銘柄は、他の人も同じように感じる可能性が高い。夕凪さんのような「優待をもらわらない」イベント投資も有望かもしれない。過去の権利確定月の傾向を検証してみるのもよさそうだ。

「私の履歴書」銘柄、真の傾向とは

「ある時期に、株を買わないといけない人がいる、それに先回りして買う」考え方は、違う場面にも応用できる。ひとつが、メディアへの露出だ。

「テレビや新聞への露出ですね。ある人が言っていたのですが、『私の履歴書』に取り上げられた銘柄は上がりやすい、と」

「私の履歴書」は日本経済新聞に掲載される名物コラム。文化人や政治家、それに経営者の半生を振り返るコラムが1日から月末まで、毎月1人、掲載される。

「2015年頃、インターネットで過去5年分、『私の履歴書』に上場企業の関係者が登場した場合の株価を調べました。連載当月の2日目ぐらいから上がって、月の真ん中の14日か15日ころをピークに下がる動きが典型的でした。そして連載が終わるころに株価は元に戻ります」

2017年5月、「私の履歴書」に登場したのはオリエンタルランドの会長兼CEOだった。

「月末の最終回で、翌月に取り上げられる人物の予告が出ます。その時点で先回りして買って、高値をつけやすい月の中旬頃に下がりだしたら売る、というのが理想的な投資法。オリエンタルランドでもほぼこのやり方で利益が得られました。ただ、オリエンタルランドの場合は、連載の後半も下がることなく、上がり続けました」

夕凪さんがあのテレビ番組をチェックする理由

同じ発想はテレビ番組でも通用する。

「相場が活況を呈しているときはテレビ番組で取り上げられた銘柄が上がりやすい傾向があります。私がとくに注目しているのは、他の投資家も見ていることが多い『ガイアの夜明け』『カンブリア宮殿』『がっちりマンデー!!』の3つです」

テレビで「このお店が繁盛している、あんな技術が注目されている」とポジティブに取り上げられれば、「じゃあ、この会社の株を買おうか」と思う人が増えやすい。

「ただ、私が調べたかぎりでは、テレビ番組による株価上昇は持続力がない。番組が放送された翌日が高値となることも多いため、注意が必要です。次回の予告を見て『この看板はあの会社だろう』と目星をつけて先回りして買い、放送翌朝に売ってしまうことが多いですね」

夕凪さんの実践するイベント投資、そのヒントは身の周りに隠されている。だが、実践する前には必ず、夕凪さんが言うように自分の手で検証し、自分の頭で考えてほしい。