第3回 伝統にして至高のツール「家計簿」

前回、強制的にお金を貯める仕組みづくりと、支出を減らすのに効果的な固定費のカットについてご紹介しました。今回からは、限られた収入のなかで上手にやりくりする方法をお伝えしていきます。
第2回「絶対に貯められる仕組みづくり」を読む

あなたの家庭の月々の水道代、即答できますか?

上手にやりくりするには、まず自分がどのようにお金を使っているかを把握することが大切です。そうでないと、改善すべきポイントも見つけられません。

お金の使い方をチェックする手段としては、やはり家計簿が最適です。「けっきょく家計簿か。何度やろうとして挫折したことか……」という方も、たくさんいらっしゃると思います。確かに家計簿をつけるのはめんどうですが、「家計簿を制するものはお金を制す」といっても過言ではないくらい、効果てきめんな手段でもあります。

何度も挫折したという方は、「1ヵ月間、1項目だけ」で始めてみることをおすすめします。最初は単にお金のメモ程度にとらえるだけでかまいません。1項目だけ使った金額を記入する、ただそれだけです。その行動に慣れるだけで十分です。

この際の項目は、自分が浪費しているという自覚のあるものがいいでしょう。外食の多い方は食費でもいいですし、趣味の費用でもいいと思います。とにかく1項目でいいので、家計の内実を明らかにするのです。

特にその項目が思い当たらない方は、いちばん身近で、またつい浪費してしまいがちな「食費」がおすすめです。毎食後にレシートを横に置いて記入できれば理想ですが、ベッドの横にノートとペンを置いておいて、朝・昼・晩・間食に使ったお金を、毎晩寝る前に思い出せる範囲で書くだけでもかまいません。これを1ヵ月続けるだけで、あなたの家計に劇的な変化が起きます。「食費を制するものは、家計を制す」とも言います。つまり、食費をコントロールできるマネジメント力は把握する力とも同じで、全ての費目に通じます。

お金を貯められない人の共通点として、「把握力」「マネジメント力」の低さがあげられます。浪費家は、「毎月の携帯代はおいくらですか?」「水道代は?」「月初めに支出が増えがちなのはどうしてですか?」こういった質問に即答することができません。自分がいつ何にどれぐらいお金を使っているか、全くわかっていないのです。把握しているのは、「家計がなんとなくまわっている」という、自分にとって都合の良い事実だけ。これは、虫歯があるとわかっているのに歯医者に行かないようなもので、その末路がどうなるかは説明するまでもありません。

家計簿は「紙」でつけるからこそ意味がある

ここまで読んで、「よし! 今日から早速家計簿アプリを使って家計簿をつけよう!」と意気込んでいる方、あるいは、既にアプリをダウンロードした方もいらっしゃるかもしれません。スマートフォンの家計簿アプリはひとつの市場になっているぐらい開発がさかんです。クレジットカードや口座の出し入れを自動で記録してくれたり、レシートの写真を撮るだけでデータ入力が済んでしまうものなど、機能も日々進化しています。いつでもどこでも入力できるという点からも、家計簿との相性はよさそうです。

しかし私は、ここに敢えて「NO」をつきつけます。家計簿アプリは確かに便利ですが、「把握力」を鍛える、しかも基礎から鍛える際には、初心者の方、家計簿に自信のない方には、必ずしもベストな選択とは言えません。

まずアプリは、月々の予算や詳細な項目の振り分けを前提とした、スキの無い家計の記録を目指してつくられているものが多く、そこについていけなかった時に一気に記入する意欲を失ってしまいます。

また、スマホ自体がLINEや動画、SNSなどさまざまな用途で使われるものであるため、気持ちを切り替える意味でも、いろんな通知が割り込んでくるという意味でも、家計簿をつけるのに集中することが困難です。たった数分のことではありますが、家計簿をつける時間の質はたいへん重要な要素です。

さらに紙で家計簿をつけると、振り返りも容易です。「いつでもどこでも」とはいえ、スマホの画面は小さく、データの一覧性には課題が残ります。一方紙は、ページをめくるだけで簡単に過去の自分を振り返ることができ、わざわざ「編集」ボタンを押さなくても加筆・修正ができます。

あなたの問題は既に1/4解決している

生涯300以上の特許を取得したアメリカの大発明家、チャールズ・ケタリングはこう言っています。

「問題を適切に分析すれば、問題は半分解決したようなものだ」

家計もまったく同じです。適切に問題を把握することができれば、改善は難しいことではありません。もっと言えば、この文章を当事者意識を持って読んでいる時点で、あなたの抱える問題は1/4解決しているようなものです。その割合を半分に引き上げるのが「紙の家計簿」だと言えるでしょう。

さあ、今すぐ家にある大学ノートを手に取り、今日の日付と1日の食費を書き込んでいきましょう。小さな行動が、あなたの人生の大きな一歩となるはずです。

さて、次回は、家計簿によって自分が使っているお金を把握したあと、どのような行動をとればいいのか、具体的にお伝えしていきます。

<今回のまとめ>
●改善ポイントを見つけるには、自分のお金の使い方を把握する必要がある
●まずは、「1ヵ月間、1項目だけ」で家計簿を始めてみよう
●家計簿はアプリではなく紙でつけるのがおすすめ