株芸人から億トレへ〜井村俊哉さんインタビュー【前編】

  • リアル投資家列伝・徹底した企業分析による集中投資スタイル / 井村 俊哉

お笑い芸人としてブレイクを目指し10年近く活動していたものの、夢破れた井村俊哉さん。しかし、芸人時代も続けていた株式投資で億の大台へ到達。100万円から驚異的なスピードで資産を増やしている井村さんの投資体験を聞きました。

「株芸人」としてバラエティ番組で活躍

「僕がピン芸人だったらとっくに辞めていたと思います。3年目くらいにはもう、芸人としての限界を感じていました。ただ、僕らはトリオ、お笑い芸人としての成功は僕ひとりの夢ではなく3人の夢です。他の2人が続けるんだったら、やれるところまでやってみようと」

そう振り返るのは、お笑いトリオ「ザ・フライ」(2016年に「シンブン」へ改名)の一員として活躍し、2011年にはコント日本一を決める「キングオブコント」で準決勝へ進出した井村俊哉さんだ。

「僕は理論的に考えるタチなので、積極的にネタづくりに参加しちゃうとインパクトに欠けやすい。いろいろな形を試しましたが、最終的には、ネタづくりは相方に任せていました。その代わり、自分の役割として積極的に外に出て、知名度を上げられることをやっていこうと割り切っていました。それが、『株芸人』としての活動です」

お笑い芸人に加えて、個人投資家としての顔もある井村さん。ザ・フライとしてネタを演じている井村さんより、株芸人としてバラエティ番組に出演したり夕刊紙に連載する井村さんを見たことのある人のほうが多いかもしれない。

下積み時代の食い扶持を株で確保するはずが……

「最初に株を取引したのは大学生のころでした。父親は研究職を継いでほしいと思っていたかもしれませんが、大学入学後にひとり暮らしを始めたとき、『テレビってなんておもしろいんだろう』と思ったんです。芸人になって人を笑わせる仕事ができたら、そんなに素敵なことはない――そう思って株を始めたんです」

芸人になるために株を始める? 一体、どんな論理なんだろう?

「お笑い芸人についてインターネットで検索したら、『下積み時代は食えないし時間も不定期でなかなかアルバイトもできないから、株などの副業で稼いだほうがいい』と書いてあって、それを鵜呑みにしちゃったんです(笑)」

「芸人になるために(避けられない下積み時代の食い扶持を確保するために)株を始めた」、ということ。しかし、世の中そう甘くはない。学生時代に始めた株では資産を減らしてしまい、計画は頓挫。株式投資は細々と行っていたが、本格的に再開しようと思ったのはお笑い芸人として活動しながらアルバイトに励んでいた2010年のことだった。

「きっかけは今の嫁さんと付き合うようになったことでした。結婚したいなと思っていましたがお金はないし、将来売れる保証もない、かといって芸人を辞めたくもない。そこで思ったのが、株で稼ぐことでした」

最初に株を始めた動機は「芸人になるため」、再開したのは「結婚するため」だった。しかし、最初に失敗しているのになぜまた株だったのだろう。

「自信があったわけではないですが、芸人を続けながら2人の生活を支えられるだけのお金を稼ぐ手段が、自分には株しか見つからなかったんです。だから、強い決意をもって嫁さんに打ち明けました。『アルバイトを辞めて株で食っていこうと思うんだけど!』。そうしたら嫁さんは『別にいいんじゃない?』って(笑)」

元手100万円。芸人活動と並行しながらのスタートだった。

「デイトレードでもなんでもやろうと思っていました。中長期投資でそのころに買ったのがインフォマートという銘柄です」

200万円を投じた銘柄が「テンバガー」(10倍株)に

インフォマートは外食業界を主な顧客に、情報システムを提供する会社だ。

「買ってからしばらくして、インフォマートが中期経営計画を出したんです。3年後、4年後に利益が急増する計画でしたが、実現性に疑問符がつき、インターネットなどでは『そんなことできるのか』と突っ込まれていました。しかし計画をよく見ると、2年目まではシステム変更の関係で『ソフトウェア償却費』が重い負担となっていた。その負担が取り除かれる3年目以降、利益が急増するのは自明だったんです」

どうやってそのことを分析できたのだろうか?

「本当に実現できるのか、僕も自信がなかった。だったら社長に聞いてみよう、と株主総会に出席し、質問したんです。そこで聞いたのが先ほど説明したような話でした。今思うと、質問するまでもなく説明資料に書いてあったんですけど(笑)」

社長の回答を聞き、将来の株価上昇に自信を深めた井村さん。株主総会の会場を駆け出ると早速、買い増しの注文を入れた。

「持っている資金、ほぼ全部を突っ込んだ集中投資でした。最初に買ってから約3年持ち続け、保有する株をすべて売ったときには200万円ほどであった資金が10倍になっていました。人生で初めての『テンバガー』(10倍株)です」

テンバガーは投資家にとって大きな憧れだ。株価が10倍になるような成長株を見つけるのが難しいし、成長株を買えたとしても10倍になるまで売らずに握ったままでいるのが難しい。投資家用語でいう「握力」の問題だ。

「握ったままでいられたのはラッキーもありました。インフォマートの株価が上昇していたころ、東京03さんの全国ツアーのお手伝いをしていたんです。九州から北海道まで日本各地をまわるツアーでしたから、あまり株価を見る時間がなかったんです」

トリオ解散、今の井村さんは――

株価を毎日チェックしていたら上昇する株価を見て売りたくなってしまう。全国ツアーで株価を見る機会も少なかったことが功を奏した。株式投資では生活費を稼ぐばかりか、着々と資産を増やしていった井村さんだが、芸人活動はというと……。

「今年になり相方からもう辞めようかという話が出た。3人がそろわないなら、僕の芸人人生は終わりだなと……」

今回の取材が行われたのは解散発表の直後。夢破れたばかりで落ち込んでいる反面、早くも次の夢を模索していた。

「今度、ある医療機器のベンチャー企業に出資しようか検討しているんです。上場企業への投資も続けますが、これからIPOをめざす有望なベンチャー企業への投資も興味があって」

井村さんの目はもう将来に向いている。そんな井村さんを今、支えているのは株式投資と同時に始めた、ある資格だ。