第5回 必要以上に自分の脳みそを消耗させない

前回まで、自分で自分に取材をし続けることの大切さ、自分の意見をつくるためのネタのストック法、自分に取材した結果をもとに夢をかなえていく方法などをお伝えしてきました。ここからは、少し視点を変えて、「夢をかなえることだけに集中する方法」についてお届けしていきます。
第4回「無意識に夢をかなえる習慣をつくる」を読む

苦手なことは、専門家に任せる

自分の夢をかなえることに集中したいので、自分が苦手なことには時間と労力を割きたくないと考えています。たとえば、経理関係のこと。
私は昔から、数字がものすごく苦手でした。苦手などという可愛いものではなくて、もはやアレルギーといっても過言ではありません。数字が並んだものを見ると具合が悪くなるし、資料がエクセルシートでくるだけで吐きそうです。自慢できることではありませんが、学生時代、数学の偏差値はずば抜けて低かったし、暗算に関しては2ケタでも心配なので、割り勘のときも誰か得意な人が計算してくれるまでは地蔵のごとく微動だにしません。

そんな私が、会社員を辞めてフリーランスになったとき、自分の会社の数字的なあれこれに責任を持とうと思っても、絶対に無理だということは最初からわかっていました。そこで、自分がそれを理解して判断するという時間と手間を、お金を払って他の人に外注することにしたのです。

具体的には、お金についてのことはすべて税理士さんに任せることにしました。税理士さんは会社を辞めるタイミングで友人に紹介してもらいました。その際、私の場合は個人事業主になるよりも法人化したほうがいいとアドバイスを受けたので、法人登記も印鑑作成もすべて手数料を支払って税理士さんに任せ、会社ができるまでの1週間は家族旅行に行っていました。
自分で一からすべて手続きをするほうが安く済みそうだったけれど、そのために苦労していろいろ調べてあっちこっち走り回るよりは、多少のお金を払っても経験のある専門家に任せたほうが間違いもなくていいだろうと判断したのです。

結果、海外で遊んで帰ってきたらすべての書類が整い、法人用の印鑑が家に届いていました。それを持って銀行口座の開設に行ったら、何の知識のない私でも、法人としてのスタートを切ることができました。法人から毎月個人(自分)に振り込むお給料の額なども、すべて税理士さんのアドバイス通りに設定しています。会社の設立から運営まで税理士さんに言われたことをすべて実行に移しただけで、自分の意志や脳みそは一切使っていません。だから、起業したい人に「起業の方法を教えてほしい」と言われても教えられることは何一つありません。言えることはただ一つ「税理士を見つけるといいよ」です。

考えてもしょうがないことに、考える時間を割かない

税理士さんには、経理関係のことでは余計な選択肢を出さないでほしいと言っています。なぜかというと、聞いてもよくわからないからです。たまに気を遣ってくれて「AプランとBプラン、どっちにしますか?」と複数のプランを持ってきてくれた場合は「どっちがいいと思いますか?」と逆に質問をお返ししています。
そして、税理士さんがよりいいと思うほうを無理やり選んでもらって「じゃ、それでお願いします」とだけ言います。節税のために生命保険に入ったほうがいいと言われたので入りましたが、正直それでどれほど得しているかよくわかりません。とりあえず、請求書が来たら私はただ払うだけです。騙されているとしても、騙されていることにすら気づかない幸せなカモです。何か悪いことに巻きこまれたら、それはそれで本やブログのネタにできそうだから、まあいっかとあきらめています。

税金の額も「もっと節税できたのでは?」などと調べ始めて自分で一から計算し始めたら、税理士さんを雇っている意味がないので、大雑把な理解のみで、請求された額をとりあえず支払うというスタイルです。税金は全国民の中で私だけが不当に払わされているというわけでもなくて、みんな同じように支払っているのだから、日本に住む人間の義務だと思ってあまり悪あがきはしない方針です。節税についても詳しくないので、どこをどうがんばればいいのかわからず、でも、好きなことでもっと稼ぐ方法のほうが考えていて楽しいので、節約よりも稼ぐことをがんばろうと思っています。

確定拠出年金と中小企業共済も、税理士さんに申し込んだほうがいいと言われたので、面倒だったけれど入りました。それでいくら得しているのかは正直よくわかりません。多少損をしたとしても、やってしまったことに対しては後悔しかできないのだから「あー損した……」とクヨクヨしないために、手を出してしまったことに関してはあまり考えないようにしています。
逆に得をしていたとしても、一時の得がその後損に変わることもあるだろうし、結果って未来になってみないと、もっというと人生が終わるまで、わからないのですよね。だから考えてもしょうがないことに、時間を割きたくないのです。その他の自分の得意なことに自分のパワーを注いだほうが私は気持ちよい毎日を送れるので、外注できるものは外注する、というのが性に合っています(確定拠出年金と中小企業共済に関しては「入ったほうがいいよ」と周りの人がみんな賛成派なので、特に心配はしていませんが)。

また、私は、運転免許を持っていません。これも苦手なことを徹底的に避けた結果です。一度は自動車教習所に通ったのですが、試験走行してみて「これは自分には合わない」と本能で悟ったので、授業料をすべて支払った状態で逃走しました。もったいないといえばもったいないのですが、嫌々通うよりは、あきらめるほうが、人生の有効利用だと思ったのです。そしてひそかに「タクシーで暮らせる生活を目指そう……」と決断しました。教習所に払った受講料は、その決断のためのお金だったと思うことにしています。とにかく、できないことは人生からどんどん追い出したいと思っています。

嫌なことから逃げるのは意気地がないようで嫌いですが、試したうえで逃げたくなったことは、単純に自分に合わないことだと思うのです。都合よく聞こえるかもしれませんが、食べ物の好き嫌いと同じだと考えています。牡蛎が好きな人は多いと思いますが、私は昔から苦手だったので一切食べられません。嫌いだと言っているのに無理やり食べさせようとしてくる人のことは、全員心の底から恨んでいます。体にいいといわれる豆乳も私はアレルギーなので、飲めません。「体質的にダメ」は食べ物以外にだってあるはずなのです。私の場合は、数字の処理と車の運転が体質的に無理です。人間的に致命的な欠陥ではなくて、ただの体質です。

苦手なことに時間と労力を使いたくないのと同様、無駄な打ち合わせも避けるようにしています。たとえば、税理士さんとのやりとりは、なるべくオンラインで終わらせるようにしています。私があまりにも数字に興味のないことを心配した税理士さんが、以前は1ヵ月に一度、対面での打ち合わせに来てくれましたが、聞いても意味がよくわかっていないことがバレバレで、お互いに不毛だということがわかってもらえたので、今は打ち合わせも決算期など大事な時期のみにしてもらっています。日々の請求書類は、Dropboxで税理士さんに提出して、領収書は1ヵ月分まとめて郵送します。あとは、あんまりお金のことを意識せずに生活しています。

ただし、お金のことで困るのも嫌なので「これくらいあれば、理想の生活が送れる」という目標金額をフリーランスになるときに計算してみて、その額を下回らないように仕事量を調整しています。この目標金額は自分への取材をしたうえで、何にいくらかかるかを計算して割り出しました。いくらお金が苦手だからといっても、身の丈を知らずにお金を使うと身を滅ぼすことになりますし、周囲にも迷惑をかけてしまいます。また、目標がないままに「とにかくたくさん稼ごう」と思うと、仕事をお金ベースで選ぶようになってしまって苦しくなります。

会社員時代は、税金のことなどお金のことを考える機会が少なかった代わりに、自分の仕事の価値を考えることもなく、いつもなんとなく「今よりちょっといい暮らし」に憧れていました。ただ、つねに「今よりちょっといい暮らし」を求めていても、満たされない気持ちを抱えるだけだということが徐々にわかってきました。やみくもに上を目指すのではなく自分にとっての満足ラインを決めたうえで、足りない部分を見つけて、そこに向けて努力する。そうすると気持ちも自由になって、仕事のパフォーマンスもあがりますし、漠然とした焦りもなくなります。

自分にとっての満足ラインは、自分に必要なものを知ることから始まります。そのためにも、「私はどれくらいの広さの部屋に住むと幸せを感じられるのだろう?」「どんな生活をしたいのだろう?」など、「自分への取材」は必要不可欠です。

すべての結果は、人生の先の方でわかる

そのうえで、自分の手に余ることは、人にどんどん任せればいいと思います。私の人生のルールは「苦手なことはそれが得意な人に全面的に任せる」です。数学の偏差値35・英語&国語偏差値70超えという偏った成績の私に、塾の先生は「数学の35の偏差値を45にあげるほうが、英語と国語の偏差値を80に上げるよりは楽なんだぞ」と何度も言いましたが、とにかく数字に触れるとウツになるので、きっぱりと数学は捨てました。
結果、高校受験では志望校に落ちました。けれど、10年以上たった今は国語と英語の能力が高いほうが有利になれる職業についています。数学の偏差値を上げることは受験を突破するうえでの正解だったのかもしれませんが、長い人生においては、国語と英語を伸ばしたほうが、正解だったかもしれません。すべての結果は、人生の先の方でわかるのだと思います。

私のやり方には賛否両論があると思いますが、やりたいことに集中したい人には、向いている考え方かと思います。考えてもしょうがないことやわからないことは、はじめから考えないことにしています。たとえば、自分の顔が嫌いだからといっても、なぜ嫌いか考えたり、両親のどの遺伝子がどう作用したのかについて考えても現状は変わりません。それよりはメイクの工夫や表情を豊かにすることを考えるほうが生産的だといえます。そういうときも、やっぱりプロのメイクさんや、プロの方の書いた本を頼りにします。

外注したり、人の手を借りることは悩みを手放すことだとも思っています。お金を払う代わりに、私の悩みを誰かが代わりに考えて処理してくれる。その間、私は自由を手に入れられて人生の中の幸せな時間を増やすことができる。向こうは向こうで、私の代わりに考えることにより仕事が発生してお金が儲かるのだから、ウィンウィンです。今後も、わからないことはすべて専門家任せにして、必要以上に自分の脳みそを消耗させないようにしようと思っています。

さて、次回は限られた時間を無駄にせずに、有効利用するための方法をお伝えしていきます。

<今回のまとめ>
●わからないことや苦手なことは、専門家に任せる
●考えても仕方がないことは、はじめから考えない
●その他の自分の得意なことに自分のパワーを注ぐ