派手な宣伝なしで「ダントツの成婚率」 IBJの婚活ビジネスが成功しているワケ【前編】

  • 上場企業の社長に聞く! 夢とお金の本質・IBJ 石坂茂社長 / 石坂 茂

婚活業界において、ダントツの成婚率を誇る会社がある。その名も、IBJ。質の高いカウンセラーをそろえ、地域の「仲人さん」たちをネットワーク化し、最強の布陣で婚活をサポート。口コミで利用者を増やし、業界唯一の東証一部上場、2016年度には10期連続の増収増益を果たしている。「最強の婚活ビジネス」を成功させた起業家・石坂茂社長に、その肝を聞いた。

半数以上が結婚して退会する

日本で1年間に何組のカップルが結婚するか、知っていますか?
その数、 62万1000組(※)です。

※平成28年人口動態統計の年間推計より

私たちは日々、結婚を目指すカップルをさまざまな形で支援しています。価値観の合うお相手をインターネットで検索できるサービスや、リアルな場での出会いを提供するパーティーや合コンのセッティング、カウンセラーが寄り添ってサポートする婚活ラウンジなど、あらゆる場面で「結婚したいけど相手がいない」皆さまの支援をし、2017年は、年間で約4500組のカップルをご結婚に導ける見込みです。

足下の目標は、日本の成婚者の1%に当たる、年間約6200組のご成婚を当社で実現すること。結婚するカップルのうち、100組に1組はIBJのサービス利用者、という状態にもっていきたい。そして次の中期経営計画では、3%に当たる年間1万8600組のご成婚を目標に掲げます。ここまでいけば、社会的にもインパクトがあるでしょう。

実際、お客さまは右肩上がりに増えています。2016年12月期には、イベント、婚活支援など全事業が2ケタ成長となり、10期連続の増収増益を達成。こうした成長を支えているのは、「成婚率55.4%」という、業界でダントツに高い数字です(※)。

※「成婚率」の定義は会社ごとに違いがあるが、IBJは退会者のうち、お互いに結婚すると決めて(婚約して)退会する人の割合を成婚率としている

婚活を始める方々のゴールは、お相手を見つけることではありません。そのお相手と、結婚に至ること。そのゴールまできちんとサポートして退会していただくという、実績。ここが当社の強みですが、同時に、非常に苦労したポイントでもあります。

というのも、結婚に至るには、お2人の「意思決定」が必要です。人生の大切な選択ですから、その意思決定はとても重要なもの。ビジネスライクなサポートセンターや、オンラインのチャット、いま流行りのAIにも、意思決定の“背中を押す”ことはできません。唯一できるのは、人――それも、信頼関係をしっかりと結んだ人です。

ここに気がつき、実行できたことが、当社のターニングポイントでした。

ネットでの成功、そして限界

私が起業したのは、2000年。新卒で勤めた日本興業銀行が他行と合併することになり、それならば会社を離れ、当時大きく伸びていたITを使ったビジネスで起業しようと考えました。ITの特徴を活かすため、最初から「在庫を持たず、情報に課金できるサービスにする」と決めていました。

リアルな事業をインターネットに置き換えて、低価格で情報を提供することで、優位性を保とうと考えたのです。

マーケットが未成熟で、国内に需要があること。景気に左右されにくい業種であること。そういった条件を当てはめていった結果、「結婚相手を探す」というサービスに行きつきました。当時、転職や不動産の分野ではすでにネット上の情報サイトがありましたが、結婚相手探しはいわゆる「出会い系」だけ。ネットでのきちんとしたサービスがなく、婚活をするにはリアルな結婚相談所に行くしかありませんでした。

そこで私は、インターネット専用の結婚情報サービス「ブライダルネット」を開設。参加者の本人確認を徹底して、メールや電話でのきめ細かいサポートも行い、日本で初めて、信頼性の高い「結婚相手のマッチングサイト」をネット上で作りました。

潜在的なニーズがあったのでしょう。事業は1年で黒字化し、2003年に「Yahoo! Japan」からお誘いを受け、100%子会社になりました。日本一の媒体で自分のサービスが展開できるなんて、素晴らしいことです。媒体の集客力に加えて、独自にもトラフィックを工夫し、3年間で会員数をかなり増やすことができました。売り上げと利益も伸びて、ビジネスとしては成功でした。

しかし私には、どうしても満足できないことがありました。成婚率が低いのです。登録してくれる方が増えても、実際に結婚して退会される方は、10%程度。会社がもうかっても、本来のお客さまのニーズは、満たせていない。結婚相手を探すために入会していただいた方を、結婚というゴールまで、導けていなかったのです。

伝統的な仲人業の「すごさ」を知る

どうすればいいのかと悩む中で、ヒントを求めて、全国各地に昔からいらっしゃる仲人業の方々に会いに行きました。地域を基盤に、顔が見える範囲の規模でお世話をしている、結婚相談所の経営者です。子育てが終わった50代、60代の女性が親から引き継いだり、定年後にご夫婦で起業されたりというケースが多く、ビジネスというよりは、ライフワークとしてやっておられます。

家族的な温かい雰囲気で、お話するととても楽しいのですが、正直言って最初は「自分のビジネスとは、別のものだ」と感じました。

まず、ITが入る余地がないように感じました。写真やプロフィールはすべて手渡しで、パソコンを使ったことがある方もほとんどいない。「この仕事にパソコンなんて必要ない」と、はっきり言われることもありました。

また、情報管理への意識も全然違います。2003年に個人情報保護法が成立し、私たちもビジネスのうえで神経をとがらせていました。そんな中、仲人さんたちはいたって大らかな、昔ながらのやり方で、写真や個人名をやり取りしている。

お世話が生きがいの方々なので、会員と一緒に過ごす時間が長く、公私を分ける感覚もありません。これはちょっと、ムリかな……。そう思っていたとき、ある仲人さんに成婚率を聞くと、驚くべき答えが返ってきました。

「うちは、入会者の8割は結婚しますよ」

耳を疑いました。しかし詳しく聞くと、たしかに成婚率が高いのです。他の仲人さんに聞いても、80%まではいかないにせよ、みなさんしっかりとした結果を出している。

私がIT大手の傘下でどんなにがんばっても、成婚率は10%。この違いは、なんだろう。

仲人さんがやっていて、ネットではできないこと。その神髄が何かをあらためて考えて、見えてきたのが「対個人としての信頼関係」でした。

婚活の過程では、個人的な情報もナーバスな感情も、すべて隠さずに伝えなくてはいけません。そのためには仲立ちしてくれる第三者にも、安心して本音が言えなくてはいけない。そういう信頼関係の醸成が、婚活事業には必要だったのです。

婚活事業の本質は、リアルの中にある。

そう気がついた私は、2006年、経営陣とともにMBOで株を買い戻し、Yahoo! Japan から独立しました。そして、ネット事業で培ったノウハウに、リアルなサポートを結びつける方向に舵を切ったのです。