100回目のゲームと勉強会〜アイルさんインタビュー【前編】

  • リアル投資家列伝・重視銘柄は株主総会に参加して決める / アイル

雑誌記事などで見かける、有名な個人投資家がてきぱきとイスを運んだり、受付に立って参加者を出迎えたり、自らのノウハウを惜しげもなく公開してくれる――。そんな光景が目前で繰り広げられるのは、アイルさんが主催するボードゲーム&勉強会。遠方の有名個人投資家が交通費を自腹で負担してまで参加してくれるのは、アイルさんの実直な人柄のおかげなのです。そんなアイルさん、じつは自身も小型成長株への投資を得意とする億超え投資家です。

参加困難なボードゲーム会の主催者

「毎月開催しているボードゲーム会は会場の都合で50人程度しか参加できないので、すぐ定員が埋まってしまうんです。毎回100人以上はお断りしています。以前、50人しか入らない会場に無理やり90人で集まって、会場の人に怒られてしまいました……」

スゴ腕の個人投資家から直々に株を学び、ボードゲームで遊びながら投資仲間を作ることもできる――そんな場を提供しているのが、名古屋在住の個人投資家アイルさんだ。

「株って、どうしても孤独になりがちです。株式投資を楽しむ人が増えてほしいし、もっと気軽に勉強できる場があったらいいなと――そんな気持ちで始めました」

アイルさんが主催するのは、「人生ゲームとモノポリーをかけ合わせたイメージ」のボードゲームをみんなで遊ぶ会。遊んだあとには、辣腕個人投資家による勉強会も行なわれる。

この手のボードゲーム会をネットワークビジネスやマルチ商法への勧誘目的で開催する組織もあるため注意が必要だが、アイルさんが主催する会は2018年1月で100回目を数える老舗。2017年12月の勉強会では、当連載に登場してくれたDUKE。さん今亀庵さんも講師として登壇するなど、個人投資家からの信頼を築いている。そんな会を主催するアイルさん、一体、どんな人なのだろう。

「株ってカンタンに儲かるんだな」

「株を始めたのは不動産バブルの全盛期でした。当時、ニュースや新聞では毎日のように『日経平均株価が最高値を更新』と話題になっていました。株ってすごい儲かりそうだな、やってみたい、と思ったのがきっかけです。何もわからず、怪しげな株雑誌に掲載されていたからと50万円くらいで買った株が60万円くらいで売れた。株ってカンタンなんだなと」

当時のアイルさんは就職を控えた大学生。社会人となり、しばらく休んでいた株を再開したのは、仕事に余裕が出てきたころだった。

「入社2、3年目のころです。仕事にも慣れ、ふと立ち止まってみると、貯金がたまっていた。株で儲けた記憶があったので、また投資してみようか、と」

アイルさんは「ラッキーパンチでも最初に儲けていたことがよかった」と振り返る。

「もし最初に損をしていたら、悪いイメージだけが残って、もうやらなかったと思う。最初に儲かったから、株って儲かるんだというイメージがありました。成功体験から始められたのはよかったなと思います。儲かったのは地合いのおかげでしたが(笑)」

成功体験といっても、相場が全体的に上がっていたおかげだし、社会人になってからも投資を本格的に勉強したわけではなかった。

週末ごとに見る「行列」から得た気づき

「再開したのは不動産バブルが崩壊し、地合いが悪化した時期でした。会社でもまだまだ覚えないといけない仕事がたくさんありましたし、株の勉強もしていません。会社四季報の後ろに載っている株主優待の一覧から『あのお店、優待がもらえるなら買ってみよう』と、そんな程度。貯金しておくくらいなら、株主優待をもらったほうがいいだろうという単純な発想でした」

のんびりしたスタンスで投資していたアイルさんの目の色を変えさせたのは、ある店舗の光景だった。

「当時住んでいたのは北九州市でしたが、週末になるといつも行列ができている衣料品店がありました。駐車場にクルマを入れられないほどです。『このお店はなんだ?』と調べてみると広島証券取引所(2000年に廃止)に上場する企業でした。当時はまだ、中国地方や九州に展開するだけのローカル企業でしたが、この会社は伸びそうだと。そのお店がユニクロ(ファーストリテイリング)でした」

ユニクロのフリースが爆発的なブームとなったのは1998年。この年、ユニクロは原宿に旗艦店をオープンし、山口県に本社を置くローカル企業から全国区の企業へと飛躍していった。アイルさんがユニクロの行列に目を留めたのは、その2年前のことだ。

広島証券取引から東証、「テンバガー」へ

「買ったのは300株、100万円ちょっとだったと思います。買った直後は農業へ進出したり、スポーツ衣料へ手を出したりと新規事業が上手くいかず、1000円以上も株価が落ちていました。でも、インターネットがまださほど普及していない時代。株価は新聞を読まないとわからないですから持ちこたえられました。今のようにリアルタイムで株価が見られる時代だったら怖くなって手放していたかもしれませんね」

やがてフリースブームに火がつき、ユニクロは全国展開を本格化、ファーストリテイリングは東証2部、そして1部へと駆け上がっていく。

「当時は『東証1部への昇格=好材料』という程度の知識もありませんでした。でも、フリースはニュースにも取り上げられるほどのブームになりましたから、『当然、ユニクロの株価も上がっているんだろうな』と」

おっとりと構えるアイルさんとは対照的にファーストリテイリングの株価は熱狂的に上がっていく。アイルさんの買値である4000円を回復したのは、フリースブーム真っ只中の1999年3月。8ヵ月後には10倍の4万円に達した。

「素人目にも、さすがに株価の上昇が急すぎると感じました。株式分割で保有株数も増えていたのでパラパラパラと何度かに分けて売っていきました」

当初の元手は10倍に。いわゆる「テンバガー」(10倍株)の達成だ。

「振り返ってみると、自分の目で見て『いいな』と思った会社を買ったことがよかったんだと思います。衣料品店という身近な会社なので自分で理解して、伸びそうかを判断できるからです。今も自分の目で判断できるサービス業や小売業の株は好きですね。個人投資家には向いているなぁと」