100回目のゲームと勉強会〜アイルさんインタビュー【後編】

  • リアル投資家列伝・重視銘柄は株主総会に参加して決める / アイル

早期退職制度に応募し、会社を退職したアイルさん。公的資金を注入される銀行が登場するなど日本経済は低迷していましたが、徐々に光が差し込み始めます。低迷していた日経平均株価も盛り返し、投資にも熱が入るかと思われたのですが、アイルさんが選んだのは予想外の選択でした。
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充電期間を利用して学んだ簿記とFP

会社を退職したアイルさんが充電期間中、多くの時間を費やしたのは、やはり株だ。

「1日中株価が見られるのが嬉しかったですね。ただ、見ていると売買したくなる。デイトレまではいかないですが、短期的な売買も行ないました。結果的には変に売買するよりも長期的に持ちっぱなしでいたほうがよかったですが(笑)」

この期間を利用して投資の知識も蓄えた。

「雇用保険の制度でファイナンシャルプランナー(FP)や簿記を学ぶコースがあったので、受講しました。投資していると財務諸表に接する機会が多いので簿記が役に立ちますし、ファイナンシャルプランナーの講座ではお金について幅広く学べました」

充電期間に学んだFPの知識はこのあと、思わぬところで役に立つことになる。そのきっかけを作ったのは、ある新聞広告だった。

「世界一周? 行けるのは今だけだ」

「ふと見た新聞に世界一周旅行の広告が掲載されていました。それまで興味があったわけではないですが、世界一周なんて会社員にはムリな話ですよね。でも、今ならお金もある、時間もある。再就職したら次に行ける機会がいつになるか、わからない。行くなら今しかない、と」

世界一周の船へと飛び乗ったアイルさん。保有する株は中長期的な値上がりを期待していたので、そのままにしておいた。

「日本の新聞が読めるのは停泊した港に新聞が届けられたときだけ。1週間に1回ほどでした。携帯電話の電波も入らないので日本の情報はほとんど入ってきません。株のことは忘れていました。船旅だったこともあり時間の流れがおだやかでした」

次の港へ着くまでの長い時間、船の中では旅行者同士が知識を教え合う講座も行なわれていた。「私も学んだばかりのFPの講座を開き、仕事や株を離れた友だちができました」という。この世界一周旅行の経験がアイルさんの人生を大きく変えた。

「世界を一周して帰国したときにはもう、再就職する気持ちがなくなっていました。このまま働かずに生活すればいいかな、と。そうすれば株主総会にも行きまくれますし」

アイルさんは6月の株主総会シーズンになると10日ほど東京へ滞在し、30社以上の総会をハシゴする。宿泊費を抑えるため、ホテルで利用できる株主優待も取得したほどの熱の入れようだが、それもこれも経営陣の様子を自分の目でチェックするためだ。

「皆さんもぜひ一度、株主総会に参加してほしいですね。それもできれば同じ会社に毎年、継続して行くとおもしろい。経営者の話しぶりや表情は変化があります。毎年参加していると『去年よりも自信がありそうだ』とか、『今年は自分の言葉で話しているな』と変化に気がつけるんです」

ボードゲーム会に上場企業の社長を招く

行列から関心を抱いて買ったファーストリテイリング、株主総会をきっかけに買い増したゲオホールディングス――成長株を割安なうちに発掘するスタイルをアイルさんは固めていく。

「そのころ、ある自動車ディーラーでクルマを買いました。全国的な知名度は低いですが、東海地方を中心に展開するVTホールディングス系列のお店です。自分で利用してみて、いいなと思いましたし、ゲオと共通する部分を感じました。自動車ディーラーは成熟産業ですが、ゲオ同様、M&Aを積極的に仕掛けて伸びていたからです」

2007年に購入したVTホールディングスは8年後、名古屋証券取引所から東京証券取引所へとステップアップ、株価は買値から10倍へ。テンバガーの達成だが、別な意味でもアイルさんにとって印象的な会社だ。

「VTホールディングスは個人投資家向けの説明会を積極的に開催していました。それもあって、ボードゲーム会で個人投資家向けに説明会を行なってくれるようにお願いしたんです」

アイルさんが主催するボードゲーム&勉強会には毎回、約100名の個人投資家が参加する。株への関心が高い人たちだから企業にとっても自社の魅力を説明する格好の場だ。

「今まで参加してくれたのは5、6社でしょうか。VTホールディングスは社長が直々に来てくれました」

どんな会社でもウェルカム、ではない。

「IR説明会などでおもしろそうだなと思った会社があったら、私から『こんなイベントがあるので会社説明会を開催してくれませんか?』とお願いするんです。だいたいは断られるのですが、たまに来てくれる会社がある。おもしろい会社なのに充分に知られていない会社が来てくれると、私としてもうれしいですね」

ボードゲーム会がつなげる人の輪

来てくれた会社には、今、アイルさんのポートフォリオの主力となっている銘柄もある。

「ジーフットがそうです。2回ほど参加してくれました。最初はIR担当取締役が、2回目は店舗の視察がてら社長が直々に来てくれました」

ボードゲーム&勉強会は個人投資家同士をつなぐだけでなく、企業と個人投資家をつなぐ役割も果たすようになってきている。

「社会貢献的な部分もあると思っています。自分が株のことを勉強しようと思ったとき、いい場所が見つからなかったし、投資仲間を探すのも大変でした。なかなか投資に踏み出せない人も多いと思いますが、ボードゲーム会をきっかけに投資を気軽に楽しむ人が増えてくれたらうれしいですね」