28歳で上場。今泉社長が目指す「ゲームをより楽しめる世界」とは?【後編】

  • 上場企業の社長に聞く! 夢とお金の本質・GameWith 今泉卓也社長 / 今泉 卓也

日本最大級のゲーム攻略・情報サイトを運営する「GameWith」。28歳の若きリーダー・今泉卓也社長のもと、創業わずか4年目で東証マザーズ上場を果たした、話題のスタートアップ企業だ。今泉社長はいま、どんな夢を見ているのか。起業の経緯と、これからのGameWithについて聞いた。
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市場の変化に乗って、「金鉱」を見つけた

僕が起業した2013年は、ゲーム業界が一変した年でもありました。インストール不要で手軽に遊べる「ブラウザゲーム」から、スマートフォンでアプリをダウンロードして遊ぶ「ネイティブゲーム」へと、市場が大きく転換したのです。

前回お話しした「失敗」の後、僕とインキュベイトファンド代表パートナーの村田祐介さんの2人で、次に向けた会議を始めました。週に1回会っては、起業のアイデアをばーっと出し合う。その中には、ゲーム関連の事業も含まれていました。

ネイティブゲームの普及は、ゲーム市場をより魅力的にしていました。というのも、ネイティブゲームではブラウザゲームでは難しかったリッチな表現が可能となり、クオリティがゲーム機でできるものに近づいていきました。また、ゲーム機やソフトを買わなくても、スマホさえあれば簡単に無料で始められる。

これからは手軽に、かつ面白いゲームができる時代になるーー。2013年時点で、ゲーム人口が増えていく要素はそろっていました。

僕自身、ゲームが好きだし、起業するならもう一度ゲームの市場で勝負したかった。ただ、ネイティブゲームのヒットを狙う開発会社はすでにたくさんあって、競争が厳しいことはわかりきっていました。

じゃあニーズに対して、供給が追いついてないところはどこか?

当時はネイティブゲームが広がる一方、その周辺サービスは圧倒的に足りていませんでした。攻略情報もその1つです。村田さんとの2回目の会議で出し合ったたくさんのアイデアの中に、「スマホ向けのゲーム攻略」がありました。これなら、今後のゲーム市場の成長と相性がいい。ピンと来たので、このアイデアを深掘りし、市場調査や事業の骨格づくりを進めることにしました。

2013年6月、GameWith創業。最初の事業に失敗し、会社の清算が決まってから約3ヵ月後のことです。そして、創業から3ヵ月後の9月にゲーム攻略情報サイト「GameWith」をリリース。リリースから4ヵ月後の2014年1月、「GameWith」は月間1千万PVを達成しました。さらにリリースから約1年後の2014年9月には月間1億PVを超え、加速度的に成長していきます。

GameWithの起業で、僕は最初の事業失敗の教訓を活かしました。「市場を見誤らない」「スピーディな意思決定を行う」という2つのことを、徹底したのです。おかげで、スマホゲームの攻略情報という、まだ誰も手を出していなかった金鉱に気づき、掘り当てることができました。

社員と共同生活を始めた理由

もう1つ、最初の失敗で僕が痛感したことがありました。それは、一緒に働く人との関係性の大切さです。

毎日オフィスで顔を合わせて、過酷な開発の仕事を乗り切っても、人として心を開くのは別。そういうドライな関係に加えて、僕自身、自分のことに必死で部下のモチベーションを意識できなかったことも、強い後悔として残っていました。

だからGameWithでは、もうちょっとウェットな関係を作りたかった。事業のアイデアが固まった時点で仲間を集めたのですが、そのときに呼びかけたのは「一緒に住みましょう」。衣食住を共にしながら、同じ夢を目指そうと呼びかけたのです。

プライベートを共にすれば、コミュニケーションの回数が増え、想いを共有できるんじゃないか。「ここまでが仕事」と割り切るんじゃなく、仕事が生活の一部になって、チームで一体感をもってプロダクトを作れるんじゃないか。極端と思われるかもしれませんが、理想を突き詰めた結果が、「仕事と生活の境界線をなくす」ことでした。

幸い、共感してくれる仲間が見つかりました。マンションの1室を借りて、デザイナーとエンジニアと僕、3人の共同生活が始まりました。職場はリビング。朝起きたらリビングに集まって、仕事が始まる。開発に没頭しているうちに夜になり、部屋に戻って寝る。

好きなことと仕事が一緒になって、境目がないこと。
とにかく皆で同じ方向を向いて、プロダクト作りに熱中できるチームと環境を作りたかった。

いまは組織が大きくなって、社員は管理部門を含め160人くらいいます。人が増えるたびにオフィスを引越し、もう衣食住を共にすることは不可能です(笑)。でも、起業当時の仲間と住み込みでプロダクトに熱中した経験は、その後のGameWithの企業文化を作るうえで、重要だったと思います。

上場前に考えた、「会社の伸びしろ」

2017年6月。創業からちょうど4年で、GameWithは東証マザーズに上場しました。社内で上場の準備を始めたのは、2015年のこと。そのころは、攻略情報サイトとして月間6億PVという高い数字で安定でき、一般的な認知度も上がっていました。

僕たちはGameWithを、攻略情報サイトだけで終わらせる気はありません。最終的にはもっと機能を拡大して、「ゲーム業界のインフラになる」ことを目指しています。

2015年からはゲームという領域の中で攻略情報以外にもコンテンツの幅を広げていきました。例えば、あるゲームに飽きたユーザーが、次のゲームを探すためのレビューコンテンツ。ゲーム好きな人たちが集まって記事を投稿し合うコミュニティ、他人のプレイを実況付きで見れる動画などです。

サイトにたくさんのユーザーが集まり、回遊するようになったことで、広告収入も順調に伸びました。攻略情報で実績を積んだことで、その先の事業の「広がり」が見えてきたのが、2015年でした。そこで、ライターが中心だった組織を整備し、さらなる成長に向けて、きちんとした管理部門を持つことにしました。

そのタイミングで、上場の準備も始めました。時期は全然考えてなくて、「いまだ」と思ったときに動けるようにしておこう。選択肢は多い方がいいよね、というくらいの気持ちで、とりあえず準備を始めたという感じです。

その2年後、実際に上場を決めるときには、迷いもありました。上場するというのは、会社が永続的に繁栄していくことを責任として負うことだと考えています。GameWithは本当に、社会的責任を果たせる会社だろうか。ひたすらそれを考証しました。

突き詰めていった結果、まず短期的には、広告の出し方や効率の改善によって、利益をしっかりと上げられることが検証できました。ここは、株主にコミットできるだろう。

そして長期的には、「ゲーム業界のインフラになる」という壮大な計画に対して、より具体的なプランを描けるようになりました。

「ゲーム業界のインフラ」としてGameWithが目指すのは、ゲームをより楽しめる世界を創ること。具体的には、「ゲームに熱中できる」「ゲームでつながれる」「ゲームが仕事になる」という3つの側面から、業界を支援するプラットフォームになることです。

例えば「ゲームに熱中できる」世界には何が必要か。1つは、熱中できるゲームのタイトルですよね。そのハードルになっているのが、膨大な開発費用です。ガラケーの時代からスマホになって、複雑で面白いゲームができるようになった分、開発に必要なコストは上がり続けています。昔は1000万円でゲームを作れたのが、いまや何十倍になっていて、海外との競争も厳しい。それに対して僕たちは、資金を集める仕組みやコストを下げる仕組みを提供していきたいと考えています。

「ゲームでつながれる」という点では、GameWithはコミュニティサイトとして成長してきているので、十分に素地があります。SNSに力を入れ、もっと伸ばしていきたいですね。「ゲームが仕事になる」というのも、これから国内で普及が期待できるeスポーツをはじめ、あらゆる機会を増やすお手伝いをしていきたい。

短期・長期両方のプランを見据え、GameWithは上場しました。これからは「ゲームをより楽しめる世界」を目指して、GameWithの中にどんどん新しい事業が垂直に立ち上がっていく。このイメージをビジョンとして語って、「自分で事業を立ち上げたい!」「一緒にそのビジョンを実現したい!」という熱い思いを共有できる人を、いかに集めるか。僕はいま、ビジョンを語り、起業家精神のある人を集めることに、かなりの力を費やしています。

人生の「成功」とは何か

なんとなく社長に憧れた子供のころ、僕は「成功」って、人との競争に勝つことだと思っていました。実際に夢を形にしようと、プロダクトを作ってTwitterで発信していた大学生のころは、もうちょっと進んで、社会に影響を及ぼすとか、人から喜んでもらう。そんな承認欲求を満たせるのが「成功」だと感じていました。

そして、いま僕にとっての「成功」とは何か。
それは、幸福を感じる時間を増やしていくこと。
じゃあ幸福を感じる時間って何かというと、好きなことに没頭している時間です。

夢を叶えるために仕事をしている時間、大好きなゲームに夢中になっている時間、大切な人と一緒にいる時間。そうやって自分の心が満たされる時間で人生を埋め尽くしていけば、それが自分にとっての「成功」なのかなと思います。

好きなゲームですか? 最近は『モンスターハンター:ワールド』にはまっていて、リリースから2週間で100時間くらいやりました(笑)。

最初にマンションの1室で起業したとき、特にきれいな部屋でもなく、お金もありませんでしたが、でも僕は新しいビジネスに向かって仲間と一緒に熱中していて、毎日がすごく満たされていた。他人にどう思われるか、社会的にどう見られるかなんて、関係ありませんでした。

自己の中から湧き上がる思いに従い、熱中すること。僕自身、そしてGameWithに集まるみんなの時間が、熱中で満たされていくーー。そんな会社の社長でありたいですね。