ピーター・リンチ編① 「身近にある10倍株」の探し方

「アマチュアの強み」を活かせ!

ピーター・リンチは1977年当時0.2億ドルの規模しかなかった弱小「マゼラン・ファンド」を13年間で約100億ドルと世界最大規模のファンドに育て、アメリカでの投資信託の人気を高めたスターです。 リンチは個人投資家に多くの助言をしていますが、特に有名なのは「アマチュア投資家の強みを活かせ」という言葉です。リンチのいう「アマチュアの強み」というのは、

・小型株を買える
・マイペースで投資できる
・日常生活の情報や感覚を活かせる

の3点です。

小型株こそアマチュア投資家が強みを発揮できる投資先だ

小型株とは時価総額(発行済み株数を全て合計した金額)が小さい株のことです。リンチの言う小型株は500億円以下の時価総額の株と考えていいと思います。
小さな会社が事業を成長させれば株価が何倍、何十倍になる可能性がありますし、実際に大化け株の多くは小型株から出現しています。

しかし、プロの投資家は業務上の制約で小型株に投資できないケースが多いです。小型株は株の流通量が少ないために資金量が多いプロにとっては十分な資金を投じづらいですし、実際に投資すると株価に大きな影響を与えてしまうからです。アマチュア投資家はそうしたことを気にせず、良い小型株を見つけたら気軽に買うことができます。

しかも、アマチュア投資家は有望株が見つからなければ何も投資せずに休んでいることができます。「これだ!」と思う株が見つかった時だけ投資すればいいのです。このように何の制約も受けずにマイペースで投資できるというのがアマチュア投資家の2つ目の強みです。

日常生活の中から10倍株を探せ!

アマチュア投資家の3つ目の強みは「日常生活の情報を活かせる」ことです。リンチは「日常生活の中からテンバガーを探せ」と個人投資家に言っています。テンバガーとは10倍株という意味ですが、リンチが大化け株のことを象徴的に表現するために使っている言葉です。実際には5倍でも50倍でもいいのですが、そういう「大化け株」のことを指します。

リンチは著書の中で、日常生活の中で見いだせた大化け株の事例として、ダンキン・ドーナツ(25倍)、ウォルマート(1000倍)、マクドナルド(400倍)、ホームセンターのホーム・デポ(260倍)、アロマオイル専門店のザ・ボディショップ(70倍)など様々な事例を挙げています。

リンチがこうした大化け株を探す最大の情報源は奥さんと3人の娘さんでした。リンチは家族との会話や外出などの時間を大切にして、奥さんや娘さんが気に入っているお店やサービスから大化け株のヒントを得ていました。

最終的に投資判断を決めるための「5つのチェック項目」

しかし、日常生活の中から気に入った小売店や飲食店やヒット商品を探すのはあくまでも候補株選びであり、最終的に投資するかどうかについてリンチは主に5つのポイントで検討していました。それは、

①成長余地
②ヒット商品の業績へのインパクト
③競争上の強み
④業績
⑤PER

です。

成長余地についてですが、たとえば、小売店や飲食店の場合には、どのくらい出店する余地があるでしょうか。もう全国中に店があって誰もがよく知っているようでは、国内では出店余地は少なくなっているかもしれません。逆に、ごく一部の地域に少しだけの店舗しかなくて、それが今後全国展開していける可能性があるのなら、成長余地は莫大だといえます。海外にまで展開できるなら、その成長余地はさらに大きなものとなります。
あとどのくらいの成長余地があるのか。2倍か、10倍か、100倍か……。ザックリでいいので考えてみて、できるだけ成長余地が大きな会社を探してみましょう。

次に、注目した店や商品が今後拡大するとして、それがその会社の業績にどのくらいのインパクトをもたらすのかを考えます。たとえば、売上高1兆円の企業で100億円のヒット商品が生まれても売上高へのインパクトは1%しかありません。一方、10億円の売上高の会社が売上高100億円になるなら、これはかなりのインパクトです。

「競争上の強み」とは、ライバルが真似できないような強みのことです。その会社の商品や店舗の人気の秘密は何か、その強みは真似されずに持続できるものなのか、そうした点について考えましょう。いくら今好調でも、ライバルにすぐ真似されたり、新規参入されたりしてしまうようでは、競争が激しくなり儲からないビジネスになってしまいます。

そして、その会社の人気は実際にきちんと業績で確認できるでしょうか。売上高や経常利益などの推移が順調に拡大しているかどうかをチェックしましょう。

最後に、PER(株価収益率)で株価の割安さをチェックしましょう。PERの標準的な水準は15倍くらいと言われていますが、今後1株益の増加が期待できるならPERの判断基準も高くなります。たとえば、数年後に1株益が2倍になりそうなら、その株の妥当なPERは15倍の2倍の30倍くらいと考えていいと思われますし、もしその時の株価水準がPER20倍以下なら割安と判断できるでしょう。1株益が今後2倍どころか5倍、10倍と伸びる可能性があるなら、PER30倍くらいでも割安といえるでしょう。

このように、PERはその会社の成長性との兼ね合いで見る必要があります。利益が何倍にも化ける可能性のある株を見つけたらPER30倍でも割安といえるでしょう。

リスク管理しながら大化け株を狙う

以上の5項目を検討して有望だと判断したら、実際に投資することを考えてみましょう。ただし、どんなに考えて投資をしても失敗する可能性は常にあります。そこで、リンチは1銘柄への投資を投資資金の20%以下に抑えるようにと言っています。そのくらいに投資額を抑えていれば、1つの銘柄で失敗しても損失金額を少なく抑えることが可能です。

このように「きちんとリスク管理をしながら大化け株を狙う」というのがリンチ流の投資法です。
では、リンチのノウハウで日本株を選んだらどんな銘柄になるでしょうか。次回は具体的な銘柄を挙げながら考えてみたいと思います。

■ピーター・リンチ
1944年生まれ。80年代に活躍した伝説的なファンドマネージャー。大手投資信託会社フィデリティ社に入社し、その後同社で規模の小さかった「マゼラン・ファンド」の運用を担当し、それを世界最大のファンドに育てたことで有名。著書『ピーター・リンチの株で勝つ』は個人投資家のバイブルとして読み継がれている。